【試乗記】スバル・レガシィ アウトバック リミテッドEX(4WD/CVT)
待ったかいがあった
まるで高級車の仕立て
ご存じのようにレガシィにアウトドア風味を加えたレガシィ アウトバックは、乗用車とSUVを融合したクロスオーバーというスタイル。従来型レガシィ アウトバックの乗用車:SUVの比率が50:50だったとすると、新型は乗用車が40に対してSUVが60ぐらいに感じられる。
新型レガシィ アウトバックは、ラグジュアリーな内装が選べる「リミテッドEX」と、よりラギッドな雰囲気の「X-BREAK EX」の2グレードで展開されるが、今回試乗したのは前者。滑らかな手触りと品のいいつやが印象的なナッパレザーのインテリアがオプション装備されていて、運転席に座ると「高級車じゃん」というひとりごとが口をついた。
実際、お値段もなかなかのもので、harman/kardonサウンドシステムやサンルーフといったオプション込みの車両本体価格は、税込みで470万円を超える。クルマが高くなったのか、日本人の(というか、筆者の)収入が上がらないのか。
搭載するエンジンは、現行「レヴォーグ」にも積まれる1.8リッター水平対向4気筒直噴ターボ。北米仕様には2.5リッター自然吸気エンジンと2.4リッターターボエンジンが存在するけれど、日本仕様はいまのところ、1.8リッター一本勝負だ。
ボディーサイズの拡大に伴い、車重も130kgほど重くなっている。果たして1.8リッターで大丈夫なのか。結論から書けば、水平対向エンジンとして世界で初めてオフセットシリンダーを採用するなど、こだわり抜いて開発されたボクサーエンジンは、大柄なボディーを苦もなく動かした。
進化したパワートレイン
スペックを見ると、1600rpmから最大トルクの300N・mを発生していて、確かに低回転域から十分なトルクがあると納得する。このエンジンは、効率化(省燃費)と小型化・軽量化を主眼に置いて開発されたと聞いているけれど、低回転域からトルクの“ツキ”がいいので、気持ちよく運転ができる。
市街地でのドライバビリティーに好感を持った理由は、エンジンのトルク特性のほかに、リニアトロニックが洗練されたことにもある。30〜50km/hといった速度域で、アクセルペダルを強く踏んだり、弱めたり、そんなパーシャルスロットルを繰り返して速度をコントロールする際に、ドライバーの意思がきちんと伝わる。
リニアトロニック自体が進化したのか、エンジンとのマッチングが進んだのか、おそらく両方だと思われるけれど、気持ちよく加速する。ちなみにエンジンだけでなくリニアトロニックも基本的にはレヴォーグに使われるものと同じである。ただ、レガシィ アウトバックのほうが100kg以上重いことから、ファイナルのギア比を低めることで加速力を担保している。
磨きがかけられた運転支援デバイス
アイサイトの機能はおなじみだろうけれど、最新世代には緊急時に作動する自動ブレーキはもちろんのこと、自動ブレーキだけでは衝突が避けられないと判断した時にハンドル操作をアシストする緊急時プリクラッシュステアリングや、隣接車線後方の接近車両に気づかず車線変更を行おうとした場合などにハンドル操作をアシストし、車線からの逸脱を抑制する制御などが備わる。
さらにアイサイトXになると、GPSや準天頂衛星「みちびき」からの位置情報と、3D高精度地図の組み合わせによって自車の位置が正確に把握できるようになる。これで何ができるようになるかといえば、一定の条件を満たせば高速道路でハンドルから手を放すハンズオフ走行が可能になる。
残念ながら、と書くべきか、試乗時は高速道路がガラ空きだったので、「自動車専用道路を走行中の渋滞時」という条件を満たすことができず、ハンズオフ走行を試すことはかなわなかった。けれども、車線変更をおまかせするアクティブレーンチェンジアシストは体験することができた。
ウインカーを操作して、システムが車線変更可能だと判断するとハンドル操作をアシスト。この際、メーターパネルには、いまこの瞬間に自車と周囲の交通状況がどうなっているかが表示されるから、安心だ。このハンドル操作が想像以上に巧みで自然。確かにこれならハンズオフ走行もやってのけるだろうと思えた。
また、いまやあたりまえになった高速道路での追従走行でも加減速は実にスムーズで、こうしたあたり、やはりスバルはこの分野のパイオニアだと感心した。
とにかく基礎が優秀
新型レガシィ アウトバックは、現行レヴォーグと同じく「スバルグローバルプラットフォーム+フルインナーフレーム構造」を採用している。乗り心地の快適さや静かさなどから、基本骨格が優秀であることが、ひしひしと伝わってくる。
ゴツい見かけとは裏腹にコーナリングは繊細で、かすかなステアリング操作にも敏感に反応して、正確に向きを変えてくれる。おそらく曲がりやすいように4輪に適切にトルクを配分する、アクティブトルクベクタリングも貢献しているはずだ。同時に、重心の低い水平対向エンジンは足を固めなくてもよく曲がるという、基本的なパワートレインレイアウトも大きく貢献していると感じた。
気持ちのよいエンジンと、信頼に値する安全装備、それに懐の深い乗り心地と素直なハンドリング。荷室と後席の広さも十分だし、一点の曇りもない……と思ったら、筆者の乗り方にも問題があったのか、今回の燃費は満タン法で11.7km/リッターとあまり伸びなかった。どうしても機能やパフォーマンスを試す乗り方になってしまう、という言い訳は言い訳として、もし機会があれば、もう少しノーマルな運転スタイルで燃費を確認したい。
(文=サトータケシ/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1875×1675mm
ホイールベース:2745mm
車重:1700kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター水平対向4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:177PS(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/1600-3600rpm
タイヤ:(前)225/60R18 100V/(後)225/60R18 100V(ブリヂストン・アレンザH/L33)
燃費:13.0km/リッター(WLTCモード)/15.8km/リッター(JC08モード)
価格:429万円/テスト車=470万8000円
オプション装備:本革シート<ナッパレザー>+harman/kardonサウンドシステム+サンルーフ(41万8000円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1057km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:254.0km
使用燃料:27.7リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:11.7km/リッター(満タン法)/12.6km/リッター(車載燃費計計測値)
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