【試乗記】日産アリアB6(FWD)
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日産アリアB6(FWD)
長い経験はダテじゃない
国産BEVのビッグネームが勢ぞろい
さらに、アリアである。アリアは「リーフ」に次ぐ日産のBEV第2弾で、現在の世界BEV最激戦区となるDセグメントクロスオーバー市場に投入される。アリアといえばずいぶん以前に……と思う向きも多いだろう。その姿が公開されたのは今から2年近く前の2020年7月で、2021年6月には先行限定車「リミテッド」の受注を開始した。
しかし、その後はスケジュールが遅延。結局のところ「B6リミテッド」の第1号車が納車されたのは先ごろの2022年3月9日で、カタログモデルの「B6」が同年5月12日の発売と正式発表された。結果的に、今後の主役になりそうな国産BEVのビッグネームが、2022年にいっせいに走りだすことになったわけだ。
アリアのカタログモデルには電池容量(66kWhと91kWh)と駆動方式(FWDと4WD)がそれぞれ2種類ずつ……の計4グレードがあるが、今回試乗したのは、他グレードに先駆けて発売された66kWh+FWDのB6である。これが最廉価なアリアで本体価格は539万円。一充電走行距離は470km(WLTCモード、以下同じ)をうたう。
アリア最大のライバルは、当然ながらbZ4Xとその双子車の「スバル・ソルテラ」だろう。bZ4X/ソルテラとアリアは同じセグメントに属するといっていい。ただ、車体サイズはbZ4X/ソルテラのほうが少し大きく、71.4kWhという大きめの電池容量もあって、一充電航続距離もアリアより100kmほど長い567kmとなっている。いっぽうで、たとえばソルテラのFWD車の本体価格は594万円、bZ4XのFWD車のそれは600万円(日本のbZ4Xはリース販売専用なので参考価格)と、アリアB6より55万〜61万円高い。BEV性能と価格を純粋に比較したときのコスパはひとまず引き分け……といったところか。
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2019年の東京モーターショーでコンセプトモデルがお披露目された「日産アリア」。2020年7月の市販モデルの公開を経て、2022年にいよいよ本格的な販売が始まる。
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ボディーのスリーサイズは全長×全幅×全高=4595×1850×1665mm。既存の日産車だと「エクストレイル」よりもわずかにコンパクトというサイズ感だ。
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試乗車は2022年5月12日に発売予定の「アリアB6」のFWD車。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は66kWhで、一充電走行距離は470km(WLTCモード)。
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グリルのようなブラックのパネルには日本の伝統的な組子パターンを採用。日産独自の「Vモーショングリル」は白く発光するようになっている。
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真一文字のリアコンビランプでワイド感を強調。2本セットのシャークフィンアンテナは「プロパイロット2.0」などとセットのオプション。
質感ではトヨタ&スバルを圧倒
……といった事前知識を頭に入れつつアリアの実車を前にすると、bZ4X/ソルテラの価格が適切とするなら、アリアをはっきり「安い!」と思ったのはウソではない。内外装そのもののデザインと、そこにちりばめられた凝った装備による質感・イイモノ感の表現は、bZ4X/ソルテラを圧倒している。
ダッシュボード上面はレザー張りで、そこに12.3インチのカラー液晶2枚を一体化した大型パネルが屹立する。新開発の2スポークステアリングも高級感のある仕立てだ。日産デザインの新たなキーとなる日本伝統の「組子」モチーフもあちこちで繰り返される。その組子模様がまるで障子戸のように、前席フットスペースを間接的に照らす演出も素直に新鮮だ。
超リアルなウッド調パネルに、振動フィードバック付きのタッチ式空調コントロールが光る光景などは、まるで高級家電。シフトセレクター周辺のドライブモードや「eペダル」切り替えも同じくタッチ風だが、こちらは誤操作防止のためにあえてプッシュボタンとなっているのも良心的だ。さらに、そんなシフトセレクターを擁するセンターコンソールはなんと電動で前後スライドする。といって前後ウオークスルーができるわけでもなく「電動の意味ある?」と思わなくもない。しかし、アリアのディテールの数々からは「日産が今やれることを全部やりました!」的な、つくり手の気概がヒシヒシと伝わってくる。
長いBEVの経験が生きている
そうはいっても、フロアが高くアシを前に投げ出した姿勢になりがちなのは、アリアも例外ではない。全高は1665mmあるのに、室内高はセダンの「フーガ」や「スカイライン」とほぼ同じ1170〜1210mmにとどまるのは床下に電池を抱えるBEVの宿命である。これはアリアにかぎったことではなく、世界のBEVが背の高いSUVルックを好む理由はそこにある。
今回は東京・羽田周辺の一般道と首都高速の短時間試乗にとどまったが、静粛性の高さと滑らかなパワーデリバリーは、お世辞ぬきでトップクラスと思った。走行中の静かさは1000万円級の高級輸入BEVと比較しても遜色ない印象だし、のけぞるように加速するスポーツモードでも、パワートレインが揺れたり、あるいは前輪がかきむしったりするようなそぶりすら見せないのは素直にたいしたものだ。こうした部分は、日産ならではの長いBEV経験のタマモノでもあるだろう。
ただ、乗り心地はパーフェクトとはいえない。新しくフラットな路面の一般道では印象的に滑らかなのに、首都高レベルの速度になると、ちょっとした路面のうねりでも前後に揺すられてしまうのは気になった。まあ、このクセは開発陣もすでに認識していたし、グレードちがい=電池や駆動方式によっては改善するかもしれない。このあたりは別の機会にじっくりと試してみたいものだ。
(文=佐野弘宗/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1850×1665mm
ホイールベース:2775mm
車重:1960kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:218PS(160kW)/5950-1万3000rpm
最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-4392rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101V/(後)235/55R19 101V(ブリヂストン・アレンザ001)
一充電走行距離:470km(WLTCモード)
交流電力量消費率:166Wh/km(WLTCモード)
価格:539万円/テスト車=634万9732円
オプション装備:BOSEプレミアムサウンドシステム&10スピーカー(13万2000円)/特別塗装色<暁 -アカツキ-:サンライズカッパー×ミッドナイトブラック>(8万8000円)/プロパイロットリモートパーキング+ステアリングスイッチ<アドバンストドライブ設定、オーディオ、ハンズフリーフォン、プロパイロット2.0>+ヘッドアップディスプレイ<プロパイロット2.0情報表示機能、カラー表示>+アドバンストアンビエントライティング+ダブルシャークフィンアンテナ+パノラミックガラスルーフ<電動チルト&スライド、電動格納シェード、リモート機能>+プロパイロット2.0(57万5300円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水 12カ月<フロント+フロントドアガラス>(1万1935円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(7万7697円)/フロアカーペット<石庭調>(7万4800円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1328km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
参考電力消費率:--km/kWh
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