【試乗記】ホンダ・ステップワゴンe:HEVスパーダ 8人乗り/ステップワゴン エアー 7人乗り
-
ホンダ・ステップワゴンe:HEVスパーダ 8人乗り(FF/CVT)/ステップワゴン エアー 7人乗り(4WD/CVT)
意識変革へのチャレンジ
骨格はシンプル&クリーン
ステップワゴンと“ノアヴォク”は、ガチンコのライバルである。このジャンルを開拓したのはステップワゴンだが、後発のノアヴォクがずっと王座に君臨していた。「日産セレナ」にも先行され、万年4位という残念な位置に甘んじていたのだ。現状を打開するためには、抜本的な改革が必要になる。ステップワゴンが先代とはガラリと変わったエクステリアデザインを採用したのは当然なのだ。
「エアー」と「スパーダ」という2種類のデザインが用意されるが、シンプル&クリーンな骨格は同じである。水平な直線で構成されたフォルムは潔いほど飾り気がなく、「きれいな箱をつくりたかった」という開発者の言葉がしっくりくる。「フィット」「ヴェゼル」「ホンダe」と共通する新しいデザイン言語が適用されていて、ホンダというブランドの統一感が明確に打ち出されているのだ。
ミドルサイズミニバンは“5ナンバーミニバン”と呼ばれることもあり、一部のグレードを除けば全幅を1700mmまでに抑えることが前提だった。新型ステップワゴンは全幅を55mm拡大して1750mmとし、全車が3ナンバーサイズである。全長も110mm延びて4800mm(スパーダは4830mm)になった。フォルムを変えたことも影響し、先代よりもひと回り大きくなった印象である。
-
2022年5月27日に発売された、6代目「ホンダ・ステップワゴン」。グレード展開はベーシックな「エアー」(写真左)と、専用グリルや空力パーツを装着する「スパーダ」(同左)に大別される。
-
シンプルな水平基調が強調されたサイドビューは、初代「ステップワゴン」をほうふつとさせる。写真は「ステップワゴン スパーダ」のもの。
-
「スパーダ」の装備をさらに充実させた7人乗りのグレード「スパーダ プレミアムライン」。写真の専用ホイールや「アダプティブドライビングビーム」などが装着される。
-
合成皮革とスエード調表皮で仕立てられた、上級グレード「スパーダ プレミアムライン」のシート。同車は、初期受注において新型「ステップワゴン」全体の約3割を占める人気グレードとなっている。
5.4mの最小回転半径を死守
発売前に栃木プルービンググラウンドで試乗していたが、公道で乗るのはこれが初めて。運転席におさまると、あらためて視界のよさに感心する。前方も側面も水平基調が徹底されていて、ふくらみや曲面がないから車両感覚をつかみやすい。試乗の基地となっていたコインパーキングのゲートがトリッキーなつくりで、入場する際に鋭角に曲がって発券機に向かわなければならなかった。戸惑ったけれどスムーズにパーキングチケットを取ることができ、小回りが利くことを証明する結果となった。
パワーユニットは、1.5リッターターボエンジンと、2リッター自然吸気エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッドシステム「e:HEV」の2種類。まずハイブリッド車に乗る。前回はクローズドサーキットで40km/hの速度制限があり、ほぼモーター走行だった。公道試乗ではもう少し速度レンジが上がったが、やはりエンジンの存在感は薄い。急加速を行うのでなければ、バッテリーの電気でモーターを駆動し、なめらかに走っていく。
速度を上げていくとエンジンが始動して発電を開始するが、意識していなければ気づかないかもしれない。エンジンが脇役に回ってモーター駆動を前面に出すのが、最近のハイブリッド車のトレンドである。今回は高速道路を走れなかったが、クルーズ時にはエンジンが直接タイヤを駆動して効率のいい走りを実現する仕組みだ。
-
凹凸のないダッシュボードが印象的な、コックピットからの眺め。Aピラーのデザインと相まって、良好な視界が確保されている。
-
前席については、先代比で座面のウレタンを23mm厚くし、密度も27%アップ。骨盤を包むように支える構造を採用し快適性を向上させた。
-
2モーター方式のハイブリッドシステム。2リッター直4エンジンは、巡行時などを除き、モーターを駆動するための発電主体で使われる。
-
3人が横一列に座れるベンチタイプの2列目シート(写真)は、オプションとして用意される。
-
市街地の一般道を行くハイブリッドの「ステップワゴン スパーダ」。道程の多くをモーター駆動で走るなど、「エンジンは脇役」の感が強かった。
軽快なガソリンエンジン車
発進しようとして、大きな違いに気づく。センターコンソールに、立派なシフトセレクターが鎮座しているのだ。ハイブリッド車はボタン式で、フラットな操作パネルになっていた。最初は面食らったものの慣れると使いやすく、ごく普通のシフトセレクターがガサツに感じられてしまったから不思議である。スタートボタンを押すとエンジンが始動するのも、今となってはむしろ珍しくなった。
1.5リッターターボエンジンは、最高出力150PS。ハイブリッド車に比べるとパワーでは見劣りするが、レスポンスは良好で力不足は感じない。ナチュラルな加速を目指したというのはどちらのパワーユニットでも同様で、アクセル操作に対してリニアな反応を見せる。ファミリーカーなのだから、敏感すぎる操作性は歓迎されない。軽快感という面では、ガソリンエンジン車に分があるようだ。しっとりとした上質さをとるならばハイブリッド車で、カジュアルなスポーツ性を優先するならガソリンエンジン車を選べばいい。
開発者が気にしていたのは、車内の静粛性である。先代モデルでは、運転席と3列目の乗員の間で会話ができなかったというのだ。ガソリンエンジン車は静かさの点では不利になるので、実際に試してみた。運転を代わってもらい、3列目シートに座る。大丈夫、ちゃんと会話が成立した。後方に向かって座面が高くなる設計になっており、一番うしろでも閉塞(へいそく)感を覚えないのもうれしい。
3列目シートのアドバンテージ
子どもの世話をするための配置もでき、車中泊用に2列目と3列目をフラットにつなげるモードもある。実際にはすべてのアレンジを使い切ることはほとんどないだろうが、可能性を担保しておくことが重要らしい。ライバルにある機能が欠けていると、販売店で説明するのに苦労するのだ。過剰なほどのおもてなしをすることが求められるのが、日本的ミニバンの宿命である。
新型ステップワゴンのコンセプトは「#素敵な暮らし」。クルマではなく乗る人が主役だという意味だそうだ。空気のような存在になることを意識して、ベースモデルをエアーという名にしたという。ファブリックを使った内装は、リビングルームのテイストを狙ったものだ。エクステリアデザインも合わせ、このジャンルに新たな価値観を生み出そうとする意欲が感じられる。
ミニバンのデザインは、立派そうに見えることを競ってきた歴史がある。ユーザーの好みに合わせてきたわけだが、3割ほどは異なる嗜好(しこう)を持っているというのがホンダの読みだ。エアーはそこに狙いを定めた。残念ながら、想定どおりにはなっていないようで、初期受注ではエアーは3割に届いていないという。意識を変革するには、少し時間が必要なのだろう。新たな価値観を浸透させるのは簡単ではないかもしれないが、ホンダらしいチャレンジに拍手を送りたい。
-
「特等席を目指した」とうたわれる3列目シート。側面にソフトパッドをあしらうなど、快適性の向上に配慮されている。
-
リアエンドのラゲッジスペースは、3列目シートの折り畳み収納を前提に、フロアボードのない深底デザインとなっている。
-
3列目シートを格納し2列目シートを前方にスライドさせた、7人乗り仕様車の荷室。シートの床下収納は、車体の低重心化と後方視界の確保という点でメリットがあるとされる。
-
シートアレンジは多彩。写真のように2列目と3列目をフラットにすれば、楽に車中泊もできるようになる。
-
2022年5月末までの初期受注では、「スパーダ」グレードが全体の84%を占め、「エアー」グレードはわずかに16%にとどまる。なお、ガソリンエンジン車とハイブリッド車のオーダー比率は、35:65とのこと。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4830×1750×1840mm
ホイールベース:2890mm
車重:1830kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6200rpm
エンジン最大トルク:175N・m(17.8kgf・m)/3500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-6000rpm
モーター最大トルク:315N・m(31.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H/(後)205/60R16 96H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:19.6km/リッター(WLTCモード)
価格:364万1000円/テスト車=377万5200円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-224SD>(3万3000円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ/e:HEV車用/ベンチシート車用>(6万2700円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1186km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・ステップワゴン エアー 7人乗り
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4800×1750×1855mm
ホイールベース:2890mm
車重:1790kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150PS(110kW)/5500rpm
最大トルク:203N・m(20.7kgf・m)/1600-5000rpm
タイヤ:(前)205/60R16 96H/(後)205/60R16 96H(ブリヂストン・トランザER33)
燃費:13.3km/リッター(WLTCモード)
価格:324万0600円/テスト車=337万4800円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイト・パール>(3万8500円) ※以下、販売店オプション ドライブレコーダー<DRH-224SD>(3万3000円)/フロアカーペットマット<プレミアムタイプ/ガソリン車用/キャプテンシート車用>(6万2700円)
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:1138km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
-
ホンダ・ステップワゴンe:HEVスパーダ 8人乗り
-
スイッチ式のシフトセレクターが採用された、ハイブリッド車のセンターコンソール。見た目にもスッキリとまとめられている。
-
先進の運転支援システム「ホンダセンシング」は全車標準。操作スイッチは、写真のように右側ステアリングスポークに配置されている。
-
6代目「ステップワゴン」には、同シリーズとして初めて、ウィンドウウオッシャー内蔵のワイパーが採用された。
-
ホンダ・ステップワゴン エアー 7人乗り
-
1600rpmという低回転域から最大トルク203N・mを発生する、1.5リッター直4ターボエンジン。WLTCモードの燃費値は13.3km/リッターと公表される。
-
コンビニフック付きのシートバックテーブルは全車標準装備だが、後席用のUSBケーブルは「エアー」のファブリックシート(写真)には備わらない。
-
「エアー」グレード専用デザインの16インチアルミホイール。写真のボディーカラーもエアー専用で「フィヨルドミスト・パール」と呼ばれる。
あわせて読みたい!
試乗記トップ
最新ニュース
-
-
ATF交換で性能向上!? 過距離走行車にも対応する最適なメンテナンス法~カスタムHOW TO~
2024.07.16
-
-
フィアット『グランデパンダ』初公開、世界市場に投入へ…EVは航続320km以上
2024.07.16
-
-
初代ホンダ『プレリュード』は、ロングノーズ&ショートデッキの小気味良いスポーティさが印象的だった【懐かしのカーカタログ】
2024.07.16
-
-
[夏のメンテナンス]気温35度でも安心! 夏のエンジンオイル管理法を徹底解説
2024.07.16
-
-
KINTOがプラグインハイブリッド車の取扱いを開始 8月から
2024.07.15
-
-
日産『GT-R』最後の北米限定車「T-spec 匠エディション」&「スカイライン・エディション」がエモすぎる[詳細画像]
2024.07.15
-
-
『ドラゴンボール』悟空とベジータがドリフトパフォーマンス、フュージョン!?
2024.07.15
最新ニュース
-
-
ATF交換で性能向上!? 過距離走行車にも対応する最適なメンテナンス法~カスタムHOW TO~
2024.07.16
-
-
フィアット『グランデパンダ』初公開、世界市場に投入へ…EVは航続320km以上
2024.07.16
-
-
初代ホンダ『プレリュード』は、ロングノーズ&ショートデッキの小気味良いスポーティさが印象的だった【懐かしのカーカタログ】
2024.07.16
-
-
[夏のメンテナンス]気温35度でも安心! 夏のエンジンオイル管理法を徹底解説
2024.07.16
-
-
KINTOがプラグインハイブリッド車の取扱いを開始 8月から
2024.07.15
-
-
日産『GT-R』最後の北米限定車「T-spec 匠エディション」&「スカイライン・エディション」がエモすぎる[詳細画像]
2024.07.15