【試乗記】スバル・クロストレック ツーリング(4WD)/クロストレック リミテッド(4WD)
ワイルド・バット・マイルド
日本ではハイブリッドのみの設定
新型クロストレックも車体やパワートレインを「インプレッサ」と共有するのは今までどおりで、事実上の同時開発であることもこれまでと同様である。ただし、先代のXVまでは国内ではインプレッサの発売が先行していたのに対して、新型ではついにクロストレックのほうが早く市場投入された。
グローバル販売台数はもともとXV/クロストレックのほうが多かったのだが、その差は年を追うごとに拡大。先代では、XV/クロストレックの台数がインプレッサの約5倍にまでなっていたというから、クロストレック優先となるのは、いたしかたないだろう。
既報のとおり、新型クロストレックのパワートレインは「e-BOXER」。2リッター水平対向4気筒直噴ガソリンエンジンとCVTに、最高出力13.6PS、最大トルク65N・mのモーターを組み込んだハイブリッドだ。北米などには2リッターや2.5リッターの純エンジンモデルもあるが、2030年度に向けて動き出した新燃費基準のからみもあるのか、日本ではハイブリッドのみとなる。
今回の試乗メニューは、千葉の袖ヶ浦フォレストレースウェイを拠点に、市街地と高速と山坂道をおりまぜた片道45kmほどのコースを、折り返し地点でクルマを乗りかえて往復するというもの。クロストレックには「ツーリング」と「リミテッド」の2グレードがあり、それぞれに4WDとFFが用意されるが、今回試乗できたのは4WDのみ。ただし、ホイールが17インチとなるツーリングと、18インチのリミテッドを試すことができた。
先代とは別物のインパクト
さて、その200mmという最低地上高は従来と変わりないが、これはクロスオーバーというより本格SUVというべきレベル。よってクロストレックもこれ単独に乗っても、視線があからさまに高いことにすぐ気づく。
11.6インチの縦型センターディスプレイは安価なツーリングでもオプション装着が可能で、今回の試乗車にも装着されていた。これだけの大画面がセンターに鎮座すると、さすがにインテリアのながめは先代とは別物のインパクトがある。しかし、意地悪に観察すると、以前は凝ったレザー張り風だったダッシュボードは普通の樹脂シボとなり、ソフトパッドの面積もかなり小さくなった。さらに各部のメッキ加飾部品も減少している。
斜め配置のカップホルダーなどは対応容器の豊富さと左右の間違えにくさを両立したなかなかのアイデアだとは思うが、全体的にインテリアに配分するコストの多くが11.6インチディスプレイに使われてしまった……と感じなくもない。
パワートレインはCVTながらもリニアな味わいに調律のうまさを感じさせる。微妙な加減速でブレーキペダルに頼る頻度も低い。ただ、パワー感、燃費ともども、舗装路での試乗では良くも悪くもフツーの印象だった。
頭を揺らさないシート
よって、カクンという急激な挙動が出にくく、少しばかり運転が粗くなっても上品で穏やかな身のこなしがくずれない。また、SGP車としては初めて天井部分に弾性接着剤の「高減衰マスチック」を使って静粛性を引き上げているそうだ。実際、走行中のキャビン内は印象的なほど静かになっている。
もうひとつクロストレックでのスバル初の新機軸が、“仙骨を支える”ことに着目した新設計のフロントシートバックと、微小な横ゆれを防ぐために車体に直接マウントしたシートレールだ。どちらも快適で疲れにくい乗り心地のキモは“頭の揺れを抑えることにあり”と定義して、そのために採用された技術という。スバルは2020年から群馬大学と共同で「次世代自動車技術研究講座」を設置して基礎研究に取り組んでおり、今回のフロントシートは最初の具体的成果でもあるという。
実際に乗ってみても、“頭を揺らさない”という能書きにそれなりの説得力が感じられたのは事実。どんなところでもフラット感があり、なにがどうとはいいづらいが、どこでも目線のブレが最小限なのは体感できた。
仙骨とは骨盤中心にある小さな骨で、ここを安定させるだけで、シートをことさら固くしたり、全身を拘束したりしなくても、乗員の頭の揺れが抑制されるという。スバルの調べに、同じく仙骨を意識したシート設計を取り入れているメーカーにはアウディなどがあるというが、少なくとも国内メーカーではスバルが初らしい。
「たこやき。でんちゅう。ひやけどめ」で目的地に
凹凸に蹴り上げられると背高グルマらしい柔らかな上下動は起こるものの、ほぼ一発でピタリと収束して、基本的にフラットな姿勢を保つ。固定減衰ダンパー車としては、このあたりの調律ぶりにも感心するほかない。
少なくとも今回の試乗では、見た目以上にSUVらしい重厚感とゆったり感のあるダイナミクス性能には、17インチのほうがバランスしているように思えた。17インチを履くツーリングでも、大半の先進・快適装備はオプションでトッピング可能。個人的にクロストレックを買うなら、ツーリングにセンターディスプレイや電動シート、アイサイト拡張機能あたりを追加して乗りたいところだ。
また、クロストレックの純正ナビには英国で開発された「what3words(ワットスリーワーズ)」による目的地検索を、日本車として初めて搭載した。これは地球の表面(海上も含む)を3m四方に分割して、その約57兆個のマス目すべてに、ランダムな3つの単語を割り当てたものだ。現在は50カ国語以上に対応しており、日本語でも世界中の場所をすべて3つの単語とその順番で表現できる。
ひとつのマスが3m四方なので、サーキットやスポーツ競技場、遊園地などの広い場所でも、入り口や目印付近などより細かい指定が可能だという。たとえば「たこやき。でんちゅう。ひやけどめ」という3単語は、とある富士山の絶景が見える場所のことだ。また、ロンドンの大英博物館の正面階段のど真ん中は「とりひき。はこんだ。すごす」である。
スマホの地図と専用アプリを組み合わせれば、自分の現在地も即座に正確に伝えられるので、緊急通報などにも便利。英国や米国の一部地域ではすでに導入されているという。実際に普及するかどうかは分からないが、ちょっと可能性を感じさせるサービスではある。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1600kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2 kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6 kgf・m)
タイヤ:(前)225/60R17 99H M+S/(後)225/60R17 99H M+S(ヨコハマ・ジオランダーG91)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:288万2000円/テスト車=347万0500円
オプション装備:ボディーカラー<オフショアブルーメタリック>(3万3000円)/ルーフレール<ブラック塗装>(5万5000円)/11.6インチセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテインメントシステム<本革巻きシフトレバー、ピアノブラック調シフトパネル、シフトブーツ、シャークフィンアンテナ、ガラスアンテナ、インパネセンターリング加飾、ドライバーモニタリングシステム、コネクティッドサービス[スバルスターリンク]、リアビューカメラ>(17万6000円)/アイサイトセイフティプラス 視界拡張テクノロジー<デジタルマルチビューモニター、前側方警戒アシスト>(6万6000円)/フルLEDハイ&ロービームランプ+ステアリング連動ヘッドランプ+アダプティブドライビングビーム+コーナリングランプ、運転席10ウェイ&助手席8ウェイパワーシート+運転席シートポジションメモリー機能+運転席自動後退機能+リバース連動ドアミラー+ドアミラーメモリー&オート格納機能(12万1000円)/ステアリングヒーター(1万6500円)/フロントシートヒーター(3万3000円)/ナビゲーション機能(8万8000円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1408km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバル・クロストレック リミテッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4480×1800×1580mm
ホイールベース:2670mm
車重:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター水平対向4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:145PS(107kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:188N・m(19.2 kgf・m)/4000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)
モーター最大トルク:65N・m(6.6 kgf・m)
タイヤ:(前)225/55R18 98V M+S/(後)225/55R18 98V M+S(ファルケン・ジークスZE001A A/S)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:328万9000円/テスト車=371万2500円
オプション装備:ボディーカラー<オフショアブルーメタリック>(3万3000円)/ルーフレール<ダークグレー塗装>(5万5000円)/ステアリングヒーター(1万6500円)/フロントシートヒーター(3万3000円)/ナビゲーション機能(8万8000円)/サンルーフ<電動チルト&スライド>(8万8000円)/本革シート<ブラック/グレー>(11万円)
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1503km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
スバルの試乗記事
-
-
【スバル クロストレック 新型試乗】身のこなしの自然さは、日本車の中でも傑出している…島崎七生人
2024.04.14 クルマ情報
-
-
-
【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】「アウトバック」以来、30年にわたる挑戦の成果…諸星陽一
2024.03.29 クルマ情報
-
-
-
【スバル レヴォーグレイバック 新型試乗】スバルの戦略、吉と出るか凶と出るか…中村孝仁
2024.03.17 クルマ情報
-
-
-
【スバル アウトバック 新型試乗】守るべきスバルらしさと表裏一体の「弱点」…中村孝仁
2024.02.20 クルマ情報
-
-
-
【スバル・インプレッサST-H】ロングドライブもスポーティな走りも(まるも亜希子)
2023.11.25 クルマ情報
-
-
-
【スバル・インプレッサST-H】人を引きつけるそのスター性(まるも亜希子)
2023.11.18 クルマ情報
-
スバルに関する情報
-
-
「やっぱこいつやな」。限定車のインプレッサWRXがつなぐ父との絆
2024.04.29 愛車広場
-
-
-
スバル フォレスター Advance、アクティブにより使いやすく…利便性と安全性が向上[詳細画像]
2024.04.15 ニュース
-
-
-
スバル フォレスター X/XTエディションに新色「ガイザーブルー」登場
2024.04.12 ニュース
-
-
-
スバル フォレスター、特別仕様車「STIスポーツ ブラックセレクション」発表
2024.04.12 ニュース
-
-
-
スバルが「BRZ Cup Car Basic」発表…ワンメイクレース参戦用
2024.04.09 ニュース
-
-
-
このクルマはポルシェ以上!?スバル アウトバックで楽しむハイクオリティなアウトドアカーライフ
2024.04.08 愛車広場
-
-
-
憧れていたスバル レヴォーグでカーライフの愉しさを学ぶ
2024.04.08 愛車広場
-
-
-
スバル『フォレスター』新型、今春米国発売へ…2万9695ドルから
2024.04.07 ニュース
-
-
-
ビートの効いたサウンドがお気に入り レガシィツーリングワゴンで日本全国どこまでも
2024.04.05 愛車広場
-
連載コラム
最新ニュース
-
-
<新連載>[低予算サウンドアップ術公開]ツイーターを加えるだけで、音がガラリと別モノに!?
2024.05.03
-
-
-
こどもの日にキッズEVカートを無料体験…遠隔でスピード調整 トムス主催
2024.05.03
-
-
-
【ホンダ ヴェゼル 改良新型】CMFデザイナーが語る、新グレード「HuNT」にこめた「気軽さ」の表現とは
2024.05.02
-
-
-
季節の変わり目にエアコンが発する悪臭の正体とは? DIYで解決!~Weeklyメンテナンス~
2024.05.02
-
-
-
BMW 4シリーズ グランクーペ が新フェイスに、改良新型を発表…北京モーターショー2024
2024.05.01
-
-
-
トヨタがインドで新型SUV『アーバンクルーザー・タイザー』を発表…Aセグメント再参入
2024.05.01
-
-
-
メルセデスAMG『E53』新型、612馬力の電動セダンに…欧州受注開始
2024.04.30
-
最新ニュース
-
-
<新連載>[低予算サウンドアップ術公開]ツイーターを加えるだけで、音がガラリと別モノに!?
2024.05.03
-
-
-
こどもの日にキッズEVカートを無料体験…遠隔でスピード調整 トムス主催
2024.05.03
-
-
-
【ホンダ ヴェゼル 改良新型】CMFデザイナーが語る、新グレード「HuNT」にこめた「気軽さ」の表現とは
2024.05.02
-
-
-
季節の変わり目にエアコンが発する悪臭の正体とは? DIYで解決!~Weeklyメンテナンス~
2024.05.02
-
-
-
BMW 4シリーズ グランクーペ が新フェイスに、改良新型を発表…北京モーターショー2024
2024.05.01
-
-
-
トヨタがインドで新型SUV『アーバンクルーザー・タイザー』を発表…Aセグメント再参入
2024.05.01
-