【試乗記】ヒョンデ・コナ ラウンジ ツートン(FWD)
仕事きっちり
「BYDドルフィン」と競合
2代目となるコナはアーキテクチャーを一新し、現在のヒョンデの中核となる「K3」プラットフォームを採用。日本に導入されるのはBEVモデルのみだが、仕向け地によっては1.6〜2リッターのコンベンショナルな内燃機を搭載したモデルも共存する。全長×全幅×全高が4355×1825×1590mmとサイズ的にはB〜Cセグメント級に該当し、実は案外大きい「アイオニック5」に比べると全長で280mm、全幅で65mmも小さい。
と、B〜Cセグメント級のBEVといえば直近で思い浮かぶのはBYDの「ドルフィン」だろう。そのサイズは4290×1770×1550mmと、コナに比べるとちょっぴりコンパクトだ。一方でホイールベースは2700mmと、内燃機兼用プラットフォームのコナよりも40mm長い。ただしコナの荷室容量はVDA値で466リッターとドルフィンを圧倒している。貨客の配分も含めたパッケージの妙は、積んできたクルマづくりのキャリアが表れるところだ。
選べる4グレード
コナのグレード構成はトリムや搭載バッテリー容量、カラーリングに応じて4種類が用意される。うち、300万円台と最も安いのはモーターのアウトプットもバッテリー容量も小さい「カジュアル」だが、こちらは実質的に受注生産となっており、販売の主力は64.8kWhバッテリーを搭載した「ボヤージュ」、または「ラウンジ」「ラウンジ ツートン」(サンルーフ装備とツートンカラーの違い)となるだろう。
装備はカジュアルやボヤージュでも素晴らしく充実しているが、それでも実際に迷うことになるだろうボヤージュとラウンジの装備差は小さくはない。具体的には車線変更のアクティブアシストなどを含むADASやサンルーフ、前左右席パワーシートや後席シートヒーター、BOSE製オーディオにARナビゲーション、NFC認証キーなど、37万円余の価格差ぶんの増し盛りはなされているようにうかがえる。ケチな自分でも、本革シートよりむしろ合皮シートのボヤージュがいいんだけど……と引っかかりながらも選ぶとすればラウンジになるだろうか。試乗車はラウンジ ツートンだった。
個性的でありながら普遍的
12.3インチの液晶パネルが2面並ぶコックピットも、デザイン的な印象の割にはオーソドックスな環境で総じて扱いやすさに不満はない。コラムに据えられたロータリー式のシフトセレクターはDとRの選択に慣れを要するが、空調操作系を物理スイッチとして独立で配するなどの設計は大いに支持したくなる。ステアリングにはパドルが据えられるが、これは当然回生制動力をコントロールするもので、前車との車間を測りながら最適な回生効果を得るモードも含めて、ドライバーの任意で直感的な選択が可能だ。テスラのように車内環境が一画面で全完結する地味を装う派手さはないが、あらゆる人が惑わず扱えるコナのような普遍性もまた、しっかりと評価されるべきものだと思う。
街乗りでは至ってスムーズ
足まわりのセットアップはソフトめで、タウンスピードでの乗り味は至って穏やかだ。120km/h前後の高速巡航域になるとリアサスの路面追従性が粗くなり路面によってはややバタつきが表れるのはアーキテクチャーの異なるアイオニック5でも見られた動きだ。また、操舵フィールは全般に平板で、タイトなワインディングではトルクステア的なキックバックも表れる。いずれも高い負荷域での挙動ではあるが、他の完成度からみれば、コナの課題はシャシーセッティングということになりそうだ。
それにしても、だ。BYDにしてもヒョンデにしても、商品を通じて見る限り、本体の完成度もさることながらローカライズのきめ細かさにも感心させられる。個人的には日本におけるBEVの数的普及は地方のニーズ発掘が契機だと思っているが、両社の供するBEVはコストでも仕様でもそれに応えるものになっているのがお見事だ。BEVの世界的普及は現在逆風下にあり、逆にハイブリッド車が再びクローズアップされているような論調が世をにぎわせているが、日本のOEMにはこの隙にぜひうまいこと立ち回っていただきたく思う。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4355×1825×1590mm
ホイールベース:2660mm
車重:1770kg
駆動方式:FWD
モーター:交流同期電動機
最高出力:204PS(150kW)/5800-9000rpm
最大トルク:255N・m(26.0kgf・m)/0-5600rpm
タイヤ:(前)235/45R19 99V/(後)235/45R19 99V(クムホ・エクスタPS71)
一充電走行距離:541km(WLTCモード)
交流電力量消費率:137Wh/km(WLTCモード)
価格:489万5000円/テスト車=489万5000円
オプション装備:なし
テスト車の年式:2023年型
テスト開始時の走行距離:1236km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:--km/kWh
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