【試乗記】ホンダ・フリードe:HEVエアーEX プロトタイプ/フリード クロスター プロトタイプ
こだわりが詰まっている
ホンダの屋台骨を支えるコンパクトミニバン「フリード」がフルモデルチェンジ。洗練されたデザインが目を引く「エアー」と、アクティブなイメージを前面に押し出した「クロスター」のプロトタイプに、クローズドコースで試乗した。その第一印象を報告する。
※この記事は2024年6月上旬に取材した内容を記したものです。
思い切った振り幅
新型フリードには、上質で洗練されたデザインのエアーと、力強く遊び心にあふれるクロスターの2モデルがラインナップされる。クロスターはそのルックスからもわかるように、最近流行しているオフロードテイストを盛り込んだいわばアクティブ仕様。ホイールアーチに専用の樹脂クラッディングが追加され、グリルやバンパーにはシルバー加飾が組み込まれている。デザインでも明確にSUVっぽさを狙う。
これら両モデルに基本となる3列シートの6人乗り仕様があり、さらにエアーには3列シートの7人乗りが、クロスターには2列シートの5人乗り仕様が設定される。エアーはコンパクトミニバンとして乗員数を重視し、クロスターは遊びのシーンでいかに便利に使うかがテーマ。そんなふうに両モデルはキッチリとすみ分けられている印象だ。グリルやルーフレール、前後バンパーといったコスメ系の差異化にとどまっていた従来モデルに対して、新型のクロスターは思い切った振り幅を感じさせる。
イメージカラーが「フィヨルドミスト・パール」と呼ばれる薄いブルーの外板色のせいか、実際に野外で見るエアーは、ミニ「ステップワゴン」ともいえそうな印象である。いっぽうのイメージカラーである「デザートベージュ・パール」の外板色をまとったクロスターはいかにも道具っぽく、存在感も十分だ。3代目フリードの開発責任者を務めた本田技研工業の安積 悟さんは、「エアーはゼネラルでシンプルにして多くの人に受け入れられやすいデザインを目指し、そのぶんクロスターをとがらせて個性を表現しました」と言う。
思わず口元が緩む
プラットフォームは、従来モデルの進化・熟成型。シャシーは基本的な骨組みを流用しながら、新開発のフロアパネルを組み合わせることで剛性をアップし、重量バランスにも配慮しているという。さらにフリード初となるe:HEVの搭載に対応すべくサブフレームやエンジンマウントを強化し、ブッシュ類の低フリクション化も実現。ガソリンタンクの容量拡大や電動パワステモーターのスペックアップ、電子制御パーキングブレーキの適用などでアップデートされている。
リニアシフトコントロールが組み込まれたe:HEVの加速シーンは、「胸のすくような」と言っては少し褒めすぎのようにも思うが、ドライバーのイメージする加速感と実際のスピードにずれがなく、気持ちよくクルマが前進する。発進こそモーターが担当するのでほぼ無音だが、いったんアクセルペダルを踏み込めば、まるで有段ATのようなエンジンサウンドを伴ってぐいぐい加速する。正直フリードの加速シーンで気持ちよさを覚えるとは思わなかった。
ガソリンエンジン車のCVTにも全開加速ステップアップシフト制御が採用されており、加速感とエンジンサウンドの演出はなかなかのもの。こちらはe:HEVほどパワフルではないが、CVT車のネガとして取り上げられることの多いラバーバンドフィールを覚えることはない。このガソリン車でなるほどと感心したのはシフトダウンの制御。コーナーの手前でブレーキをかけて減速すると、有段ATで行うシフトダウンのようにエンジン回転が少し上がる。クリッピングポイントでアクセルペダルに力を込めると、ドライバーの意図をくんだかのようにレスポンス良く加速に移る。運転が好きな人なら、思わず口元が緩むシーンだろう。
走りも視界もノイズレス
高速道路のランプから本線への合流をイメージしつつ加速し、高速周回路へとアプローチ。モーターからエンジンへの切り替えは、とてもスムーズだ。ワンタッチターンシグナルの点滅が終わるころ本線(と見立てたレーン)に無事合流すると、ヨーを残したり、ふらついたりすることなくスルッとノーズが直進方向に定まる。
120km/hの制限速度を想定し、アダプティブクルーズコントロールをセット。e:HEV車はエンジン直結モードで穏やかに巡行する。お目付け役として助手席に座るホンダの開発メンバーに「静かですよね。しかも(視界がよく)クルマの周囲がきちんと見えるので、高速道路に苦手意識を持つ人でも安心して流れに乗れそうです」と言うと、「ロードノイズの削減もそうですが、視界にはかなりこだわりました」との回答があった。
「見通しのいいグラスエリアに加え、Aピラーは車幅をつかみやすい位置と角度を追求しました。水平基調のダッシュボードとサイドのベルトラインも採用も運転のしやすさにつながっています。運転席からあまり見えないワイパーの位置決めも、余計な視覚情報を極力抑える“ノイズレス”にこだわった結果です」とのこと。これらのファクターは主に街なかの走行や駐車時にメリットを実感できそうだ。ただし見えすぎてもだめで、「見えすぎると今度は落ち着かなくなるので、そのいいバランスを試行錯誤しました」とのこと。ちなみに3列目横のウィンドウも三角形から四角形に形状を変更し、閉塞(へいそく)感のない明るいキャビンの実現に貢献している。
使いやすさや実用性を追求
2列目シートは6人乗り仕様の場合、従来型と同じく左右が独立したキャプテンシートとなる。3列目シートは、前方が抜けて見えるように着座位置が設定されている。1列目シートのシートバック横の形状を変更し、車内における1列目から2列目へ、またはその逆の移動がしやすく工夫されているのも新型フリードのセリングポイントだ。ウオークスルーのしやすさは、2列目にチャイルドシートを固定して使う子育て世代の声を反映したという。
触感のいい素材を用いたエアーのインテリアは温かみのあるリビングライクなもので、ブラックとカーキの2トーンカラーでコーディネートされたクロスターのそれは、道具感も少々。コックピットはモダンに進化しているものの、スイッチはスイッチとして残され、使いやすさや実用性が吟味されている。小物を置けるトレイの配置や大きさ、グローブボックス形状や使い勝手には、知ればつい誰かに語りたくなるこだわりが詰まっている。
クローズドコースでの試乗に限定されたためか、いずれのパワーユニットも性格(ハイブリッドと自然吸気の純エンジン)の違いが浮き彫りになっただけで、おおむね好印象に終始した。ガソリンエンジン車はe:HEV車に比べれば確かにうるさく少し非力だが、従来型とは比べるまでもなく静かにしつけられている。洗練された乗り心地も印象深い。果たして公道ではどんな発見があるのか。いつもの道を新型フリードで走るのが楽しみである。
テスト車のデータ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4310×1695×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:106PS(78kW)/6000-6400rpm
エンジン最大トルク:127N・m(13.0kgf・m)/4500-5000rpm
モーター最高出力:122PS(90kW)/3500-8000rpm
モーター最大トルク:253N・m(25.8kgf・m)/0-3000rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)
燃費:--km/リッター
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
ホンダ・フリード クロスター プロトタイプ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4310×1720×1755mm
ホイールベース:2740mm
車重:--kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:118PS(87kW)/6600rpm
最大トルク:142N・m(14.5kgf・m)/4300rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S/(後)185/65R15 88S(グッドイヤー・エフィシェントグリップ パフォーマンス2)
燃費:--km/リッター
価格:--円
オプション装備:--
テスト車の年式:--年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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