ランドクルーザー70(30周年記念モデル)開発責任者に聞く(4/4) ― キングオブ4WD ―

ランクル70を日本で復活させる意義

ランクルと共に歩んだエンジニア人生を振り返りる小鑓(こやり)チーフエンジニア。その一貫した、“ブレない”姿勢はランクルの歴史のようでもありました。

私は大学院を含めた学生時代の6年間、自動車部に在籍し、山間ラリー競技に夢中になっていました。時間を見つけては、毎日のようにガレージに足を運び、車体やエンジンを分解しては組み直し、休日は兵庫県下の山奥までいっては林道を走っていました。トヨタに入社したのも、そんなクルマの開発がやりたいと思ったからですし、最初の配属先にシャシー設計部を希望したのも、やっぱりクルマで重要なのはサスペンションという考えがあったからです。ただ、担当になったのは自分が好きなスポーツ系のセダンではなく、ランクル、ハイラックスという商用車でした。
しかし、いま振り返ってみると、それはとても幸運なことでした。なぜなら、ちょうど四駆ブームが到来する少し前に入社し、そこから見る見るランクルやハイラックスに対する世の中の見方が大きく変化していく様を直接、自分の目で看ることができ、体感できたからです。
そして一貫してずっと、それに近い場所で仕事ができ、2001年からはランクルの開発に携わることができました。いわば、私のここまでのエンジニア人生はランクルとともに歩んできました。当然ながら、私のランクルLOVEはどんなマニアの人にも負けない自負があります。
そしてランクルシリーズ全体のチーフエンジニアとして、このクルマを任されるようになった後、以前から「国内販売が終了してちょうど10年。そしてデビューして30周年のこのタイミングしかない」と狙いを定め、水面下で地道に準備してきたのが、今回のランクル70の日本復活です。
販売終了から10年が経ち、国内でのランクルはややもするとラグジュアリーな高級SUVというイメージが強くなっているのではないかと感じています。しかし、本来、ランクルが目指してきたのは世界で認められる本物の本格的4WD(キングオブ4WD)であり、そのために長年にわたり一貫した開発思想「信頼性」「耐久性」「悪路走破性」を犠牲にすることなく、時代時代のお客様のニーズに応えながら、オン&オフロードでの快適性や乗用車では考えられない性能を実現し続けてきたクルマです。
もちろんこうしたランクルの本質を十分理解いただき、長年に渡ってご愛用いただいているたくさんのファンの方がいらっしゃいます。今回の復活の背景にはこうした往年のファンのみなさんから熱烈なラブコールをいただいていたことも大きな要因です。
そして、もう一方では、ランクルの原点ともいえるヘビーデューティの系譜を受け継ぐ70系、世界で鍛えられ、世界をリードする、最も信頼される本物の本格派4WDを、30周年を記念しての約1年限りの販売ではありますが、日本のお客様にご紹介できることをたいへん幸せに思っています。こんなクルマをトヨタは作っているんだ。世界が評価しているランクルの本質、開発思想、世界観を日本のお客様にもぜひお伝えしたい。
ランクル70は所有することで移動の自由という人類の夢を共有でき、また、大切な家族をしっかりと守ることのできるパートナーとなるはずです。ぜひ、実車をご覧いただき、自分の目で見て、そして体感ください。

取材・撮影:宮崎秀敏(株式会社ネクスト・ワン)

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