トヨタ エスクァイア 開発責任者に聞く(1/3)

コンパクトキャブワゴンの市場へ、トヨタが放つ第3の矢

​水澗英紀(みずま ひでき)
​水澗英紀(みずま ひでき)
1961年石川県生まれ。横浜国立大学 工学部を卒業後、1985年トヨタ自動車入社。主に実験部にて車両の機器、強度等の評価を担当し、車両実験部信頼性実験室長を経て製品企画本部へ異動。製品企画では2代目、3代目ヴォクシー、ノアの開発のほか、エスティマ、ウィッシュ等も手掛ける国内ミニバンの第一人者。
​エスクァイア HYBRID Gi。ボディカラーはスパークリングブラックパールシャイン(メーカーオプション)。

国内の新車保有台数(商用車、軽を除く)が長らく減少を続けている中、着実にその台数を伸ばしている市場がある。それがトヨタでいえばヴォクシー/ノアが属するコンパクトキャブワゴンの市場である。ヴォクシー/ノア(2001年11月発売)の本格的な販売が始まった2002年と昨年を比較すると新車保有台数の全体が約3200万台から約2800万台へと減少する中にあって、コンパクトキャブワゴンの市場は逆に175万台後半から約230万台へと大きく伸びている。

この着実に成長し、現在も月産2万台前後の堅調な市場において、初代ヴォクシー/ノアが登場したときには55-60%、2代目が発売された2007年当時でも約50%あったトヨタのシェアは2013年には約31%まで低下した。このシェアを奪回すべく、2014年1月に発売されたのが3代目ヴォクシー/ノアである。

徹底的なマーケット・インの発想でコンパクトキャブワゴンに求められる基本性能(広さ、乗降性、使い勝手)に磨きをかけ(第1の矢)、さらにはHVの投入などにより、これまで苦手としていた燃費や走りの部分を大きく向上させ(第2の矢)、市場を席巻し、大きくシェアを伸ばすことに成功した。

そして、満を持してトヨタが放つ第3の矢が、「新しい高級ミニバン」としてのクラスを超えた上質感を備えたEsquire(エスクァイア)である。その狙いはさらなるシェア拡大に留まらず、コンパクトキャブワゴンの市場全体を拡大することにある。同時に、長引く不況から抜け出し、再び走り出そうとしている日本を鼓舞するクルマでありたい。「日本も、私も、ここからだ。」このクルマとともに上を向いて、未来に向かって走り出そう。そんな高い志のもと、このクルマの新しい挑戦を仕掛けた水澗英紀チーフエンジニアを再び訪ねた。

なお、水澗チーフエンジニアには2014年1月の3代目ヴォクシー/ノア発売時にもインタビューしている。ぜひ、その記事も合わせてお読みいただきたい。

コンパクトキャブワゴン選びの新基軸

​細部に渡り上質さを追求したインテリア。

今年1月に発売した3代目のヴォクシー/ノアは進化したスタイリング、圧倒的な低床化の実現、燃費の改良、走りの質感のアップなどの実現により、おかげさまで「広くて、乗降性や使い勝手がよく、そして運転がしやすく、静かで走りも楽しめるバリュー・フォー・マネーの高いクルマ」として、お客様からたいへん好評をいただいています。

消費税導入後の4月以降8月までの販売台数ランキングでは、ヴォクシーが第4位、ノアが第9位にランクインしていて、2つを合わせるとアクアに継いで第2位の販売台数となっています。「お客様の目線に立って考え、お客様の求めていることを徹底的に良くしていこう」という私たちの取り組みと努力を評価していただき、たいへんありがたく思っています。

また、走りの評価については自動車評論家のみなさんから、操縦性・乗り心地・静粛性・動力性能についてたくさんのお褒めの言葉をいただき、これまた嬉しいかぎりです。

さて、エスクァイアです。ファミリーなノア、スポーティなヴォクシーに対し、これまでこのクラスにはなかった内外装の質感を高めたコンパクトキャブワゴン、それがエスクァイアです。

その開発は3代目のヴォクシー/ノアと同時にスタートしました。
新型ヴォクシー/ノアの広くて使いやすいパッケージや高い走行性能、燃費などクルマとしての商品力はそのままに、これまでのファミリーミニバンが王道としてきた「親しみやすさ」のイメージとはまた別の道を行く、「高級感」に満ちたデザインの採用がエスクァイアの最大の特徴です。

いわば、コンパクトキャブワゴン選びの新基軸として、これまでにはなかった「上質感」「高級感」を付与した新しい上級コンパクトキャブワゴンとして、新型ヴォクシー/ノアと同時並行で開発してきました。

​細部に渡り上質さを追求したインテリア。
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