クルマで行くプチ鉄道旅…安東弘樹連載コラム
私は、クルママニアですので鉄道には強い興味はありません。何故なら自分で運転、操縦が出来ないからです(笑)。ですが、乗り物自体が好きなので、ちょっと気になる存在ではあります。様々な新幹線車両のデザインには感服していますし、(特に500系は世界一美しい鉄道車両だと思っています)そのスピードにも敬意を持っています。
しかし、自分が移動する際は、仕事でも旅行でもドアtoドアで移動出来て、快適に楽しく楽に移動出来るクルマを選んでしまいます。(多くの人が鉄道の方が楽、と言いますが)
そんな私が実は、先日、“乗り鉄”デビューしました!
乗ったのは、これまでずっと気になっていた「小湊鉄道線」です。
この鉄道は千葉県市原市にある五井駅を起点に同県大多喜町にある上総中野駅まで39.1kmを1時間強で結ぶ所謂ローカル線です。予て様々なメディアで目にする度に、そのレトロな佇まいや沿線の牧歌的な景色に憧憬を抱いていました。クルマでは何度も訪れている場所なのですが、ドライブ中に時々、2両で走るディーゼル車両を見かけては、密かに「いつか乗ろう」と企んでいたのですが、ついに実現させたのです。
決行当日は残念ながら雨だったのですが、それもまた情緒があると自分に言い聞かせ、まずクルマで終点駅の上総中野駅まで行き、何と無料!の駐車場にクルマを停めてワクワクしながら切符を買おうと思ったら、何と駅は無人で券売機もありません。
どうすれば良いのか分からずドキドキしながら待っていると、レトロなキハ200形の車両が、ゆっくりと駅に滑り込んできました。出発まで15分程ありましたが、車掌さんに声を掛けたら、乗って待っていて良いとの事。そして切符などは、どうしたら良いのか尋ねたら、少し驚いて笑いながら、列車が出発した後に車内で購入する旨を、教えて下さいました。完全に“お上りさん”(正確にはお下りさん?)に見えた事でしょう(笑)。
さあ、いよいよ出発!私は進行方向、一番前(縦座席型)に陣取り身体を横にして車両前方の窓から景色を楽しみ、キハ200のレトロ車両の雰囲気も存分に堪能しました。大半の駅が無人駅で、見事に日常を忘れさせてくれます。
でも、運営、経営している小湊鉄道株式会社としては、出来るだけ沢山のお客さんに乗ってもらわなければならないので、沿線の観光地や名物等も、車両内や駅で盛んにアピールしています。その宣伝用のポスター等も見ていて楽しく、改めて自分が住んでいる千葉県の知られざる?魅力に気付かされたり、様々な刺激に満ちていました。
特に面白かったのは、沿線の飯給(いたぶ)駅にある、「世界一広いトイレ」(未確認・笑)
です。残念ながら?女性専用ですので私は利用出来ないのですが、インターネット上に載っている写真を見ると、平原?の中に全面ガラス張りのトイレボックスがポツンと立っており、四方10メートル以上離れた所に黒く高い柵が立っていて外から中を覗き見る事は完全に不可能です。
そして、中にあるボックスには一応カーテンは付いているのですが、推奨使用方法は「カーテンを全て開けて解放感を味わいながら用を足す。」だそうです(笑)。こんな所に未確認とはいえ、世界一のものがあるとは同県民ですら、知りませんでした!ぜひ男性用も作って頂きたいものです。
初心者で素人の私は途中の上総牛久駅までの往復切符を買ってしまい、気ままに、気になる駅で乗り降りする事が出来なかったのですが、もし皆さんが興味を持たれて小湊鉄道に乗る時は「一日フリー乗車券」を購入する事を、お勧めします。唯、営業本数が1時間に1本位が目安になりますので、次の列車が来る時間は、常に念頭に置いておかないと、痛い目に遭う可能性もありますので御注意下さい。
それにしても、その、ゆったりとしたスピードのお陰で、ゆっくり沿線の田園風景を、思う存分楽しみながら、頭を真っ白にするも良し、考え事をするも良し、写真を撮るも良し。
ローカル線の魅力を、満喫しました。
私の鉄道のイメージと言えば、大勢の人が足早に行き交う慌ただしい雰囲気の駅のホームから混雑する列車に乗り込み、足早に乗り換え、最寄りの駅に着いても、そこから目的地まで、他の交通手段や徒歩で、移動しなければならないという「クルマに比べ非効率的な移動手段」というものでしたが、こんな楽しい鉄道移動もあるのだなと、実感しました。
勿論、平日の雨の日、という事もあり、乗客数が少なく、この日、私に時間的な制約が無かったという条件があっての事ですが、今後、ちょっとハマりそうです(笑)。晩夏の沿線の景色は、まだ青々とした色彩に満ちていて、少し雨粒が付いた車窓からの緑色は、それは鮮やかでした。
起点駅の五井まで乗ろうとは思ったのですが、往復の時間も考え、上総中野駅から45分で到着する上総牛久駅で降りて、30分程の乗り継ぎ時間で逆方向、上総中野駅に戻る列車に乗りました。
往路で途中の駅で降りた、大きなカメラを持った、いかにも“撮り鉄”といった男性が、また乗車してきたので、思わず笑顔で会釈をしてしまいました。先方も会釈し返して下さり、ちょっと嬉しかったりすると、こういう所が鉄道旅の良い所かな、と納得しました。残念ながら、もう一度同じ事があったので同様に会釈したら、見事に目を逸らされてしまいましたが(笑)。
さて、存分にプチ鉄道旅を満喫していた私ですが、クルマを停めている上総中野駅が近づくにしたがって、もう身体がムズムズしてきました。そう、運転がしたくてたまらなくなってきたのです。そうなると、「早く着かないかな」と、先程まで嬉しかった筈の、ゆったりしたペースが恨めしくなってくるから不思議です。
そして到着!一目散に自分のクルマの所に行き、その姿を見た時、何とも言えない安堵感に包まれました。「ただいま!」と叫びたい位の感情です。何か少し浮気をしてしまった(実生活で浮気をした事は勿論ありませんが!)様な気分とでも言えば良いのでしょうか(笑)。
やはり私は、好きな時間に好きな所へ、「運転」という快楽を享受しながら移動出来るクルマが好きな様です。
そして、同じ列車で同じ駅に着いた若いカップルが「えーと、この後は、何に乗って、どう乗り継いで帰ろうか」とスマホで調べているのを横目で見ながら、「やっぱり、クルマは有り難いなー」と呟きながら帰路についたのでした。
でも、ここで白状します。その数日後、今回、クルマを停めた上総中野駅が終着駅になっている「いすみ鉄道」にも、乗りました。その時は起点、いすみ市にある大原駅にクルマを停めて、55分間の全区間を完走、往復しました、やはり2時間半のプチ旅行です。何故か、その日も雨だったのですが、やはり、ワクワクする旅になりました。クルマの良さを実感した上で、やはり、ちょっと、プチローカル鉄道旅、ハマっている様です。
皆さんも、それぞれの地域の近くのローカル線で楽しんでみませんか?それが地域の活性化に結び付けば、こんなに良い事はありません。
安東 弘樹
千葉県・小湊鉄道周辺の「ドライブスポット・ルート」
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