日本人で最もF1に近い男…安東弘樹連載コラム

みなさんは角田裕毅選手をご存知でしょうか?
今、間違いなくF1パイロットに最も近い所にいる20歳の日本人青年です。

2000年5月11日、20世紀最後の年に生まれた神奈川県出身のレーシングドライバーは今、F1への登竜門と言えるFIA F2選手権でシリーズを戦っており、この原稿を書いている11月10日現在、10戦20レースを戦ってランキング3位に付けています。

残り2戦、4レースでランキング4位以上を保てば、F1に乗るためのライセンスポイントを獲得できることになります。

そうなると、かなり高い確率で小林可夢偉さん以来、7年ぶりの日本人F1パイロットが誕生するのです。

というのもレッドブルレーシングのアドバイザーで人事権を持つ、ヘルムート・マルコ氏がF1のライセンスさえ取れれば、角田裕毅はレッドブル傘下のチームであるアルファ・タウリのドライバーになるだろうと明言しているからです。

もちろん、正式な発表ではないのですが、嘘をついているとも思えません。

ちなみにアルファ・タウリは、以前コラムで書きましたが、今年、F1で初優勝を果たしたフランス人ドライバー、ピエールガスリー選手が所属しているチームで、現在のパートナーであるロシア人ドライバー、ダニール・クビアト選手がシートを失い、そこに角田選手が入る、ということになります。クビアト選手は前戦、エミリア・ロマーニャGPで4位入賞とチームに貢献しただけに、少し気の毒な気もしますが、やはり日本人としては、角田選手をF1で観たいというのも本音です。

では、その角田選手のプロフィールを紹介させて頂きましょう。
前述しましたが2000年5月11日生まれで現在は20歳。

2005年、4歳でカートを始め、次々と目覚ましい活躍をして頭角をあらわし2016年にはFIA F4日本選手権にスポット参戦し、何と、いきなり2位になり、史上最年少で表彰台に上りました。

翌2017年には、同F4日本選手権にフル参戦し第2戦岡山ラウンドで史上最年少優勝を果たしシリーズ3位に。そして2018年、同シリーズ7回優勝し、見事、チャンピオンに輝きます。

2019年、レッドブルジュニアチーム所属ドライバーになりFIA F3選手権に参戦。優勝1回、表彰台3回と活躍。

そして今年はFIA F2選手権に参戦し現状ランキング3位で、F1へのステップアップを目指しています。

角田選手のすごい所は、カテゴリーが上がると、すぐに結果を出し、ステップアップが早いことです。これは今、F1で活躍している、ルイス・ハミルトン選手や、セバスチャン・ベッテル選手、マックス・フェルスタッペン選手などにも共通していますので、その辺りも期待できるポイントと言えるでしょう。

マシンの性能はステップアップする毎に上がってくる訳ですから、適用力が求められます。そこで力を、すぐに発揮できるかどうかが「認められるドライバーか否か」を決める要素になっているという訳です。

大変、楽しみではあるのですが、不安と言えば、来年いっぱいでHONDAがF1を撤退することが決まっている、ということでしょう。

小林可夢偉選手が、F1で、これから活躍する!という時にTOYOTAがF1から撤退してしまい、その後、所属するチームが定まらず、結果小林選手もF1から去らなければならなかった、という記憶がどうしても蘇ってきてしまいます。

ただ、TOYOTAはチームそのものが撤退したのに対し、HONDAはパワーユニット(エンジン)の供給を止める、という違いはあるのでまったく同じ状況ではないのですが、私の嫌な予感が外れることを自ら祈っています。

しかも角田選手は、メンタルの強さを、いつも発揮してくれています。カテゴリーで、すぐに活躍できるのがその証拠ですし、最近のインタビューでは、「ライセンスを取れるか?また、そこに対してのプレッシャーはあるか?」という質問に対し、「いつもと同じことをやるだけ」と気負わず応えていました。

ここ最近、新型コロナウィルスの感染者数が三たび、増えてきている等、あまりよいニュースがありませんが、私にとって、角田選手のF1ステップアップは本当に楽しみなトピックスです。

来年は東京オリンピックも控えていますが、開催は、まだ確実とは言えない状況と言ってよいでしょう。

そんな中、暫定ではありますが来年のF1カレンダーも発表されました。現状、史上最多の23戦が予定されています。

これも全ての開催予定国で確実に行われるかどうかは、まだ分かりませんが、もし、角田選手のF1参戦が決まり、実際に23戦が全て行われたとしたら、23回も角田選手のF1での走りを観ることができる訳です!

こんな楽しみなことがあるでしょうか?!

2014年以来、我々は母国のドライバーがいない状況でF1を観ています。勿論、それでも充分、楽しめているのですが、やはり自分の国のドライバーを応援しているGPをテレビで観ると羨ましいと思うのも確かです。

来年で7年になりますが、それだけ時が経つと私自身、その少し前に参戦していた中嶋一貴選手や小林可夢偉選手を応援していたのがはるか昔の様な気がしますし、私の息子は今、14歳ですが、まだ2014年当時は本当に子どもで、あまり記憶もはっきりしておらず、正直、リアルタイムで小林可夢偉選手を応援した感覚がないそうです。

それだけに、角田選手には期待をしてしまうのでしょう。

まだまだ新型コロナウィルスは収束がみえませんので実際に鈴鹿サーキットでF1サーカスを迎えられるか、誰も断言はできない状況です。

でも無観客でよいので、テレビにかじりついて角田選手が母国グランプリを走る姿を応援したいものです。

日本GPは2021年、10月10日に予定されています。くしくも1964年の東京オリンピックの開会式が10月10日でしたので、何か不思議な縁を感じますが、来年は7月から8月にかけてオリンピックで世界のアスリートの競演を楽しみつつ日本選手を応援し、10月にF1日本GPで世界のトップドライバーのスキルや世界最高のマシンの走りを堪能しつつ角田選手を応援する。そんなスポーツの醍醐味を存分に味わえる年になることを願ってやみません。

いや皆さんで祈りましょう。東京オリンピックの開催。F1日本GPの開催。

角田裕毅選手のF1参戦を。

そして、それらを思いっきり楽しむために、

新型コロナウィルスの収束を。

がんばれ!角田裕毅選手!

安東 弘樹

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