緊急事態宣言下の高速道路で思うこと…安東弘樹連載コラム

新型コロナウィルスの感染拡大を防ぐために緊急事態宣言が発令されてから1か月以上が経ち、現状、解除はされていません。

不要不急の外出は原則として避けるように明言されており、飲食店などの時短営業も要請されています。

そんな中、私は仕事で地方に行くことが定期的にありますので、その度に感染させるリスクも感染するリスクも低いクルマで移動しているのですが、当然、高速道路を利用する機会が多々、あります。

コロナ以前から、私は基本的に時間の制約がなければ少なくとも近畿地方や東北地方、北陸地方までであれば自分のクルマを自分で運転して出張仕事に赴いていたので、その点についてはこれまで通りなのですが、やはり道路の状況は大きく変わっています。

まず当然ですが全体的に交通量が減っており、言葉は適切ではないかもしれませんが、スムーズに走れる、というのが正直な感想と言えるでしょう。

特に東名高速、新東名高速道路は、以前の「半渋滞」とも言えるような状況ではなく、120km/h制限の箇所は、きちっと120km/hで走れるのが新鮮でした。

しかも、コロナ禍で劇的に増えている流通を担うトラックの割合が高くなっており、外出自粛の影響で乗用車が少ないのも現在の特徴です。

また、制限速度未満で追い越し車線を「巡行」するクルマが減っているのも感じました。

これは平常時の高速道路で頻繁に見かける光景で、通行の妨げになるので、それが減っているのもスムーズさに繋がっていると推測できます。

それから静岡県辺りで東名高速や新東名高速から富士山の姿が、明らかにコロナ以前と比べてはっきり見えるのですが、これは交通量の減少により、排気ガスが減って大気が綺麗になっているからではないかと私は勝手に推測しています。

ちなみに緊急事態宣言発令直前に新潟県長岡市へ関越自動車道を使ってクルマ移動した時にも交通量は少なくなっており、やはり山々の景色が近く、はっきり見えたので、因果関係はあるのではないでしょうか。人の往来が減ると自然への負荷が減る、というのを複雑な思いで実感することになりました。

私は500km位の距離でしたら、余程トイレに行きたくならない限りは休憩は必要ないので、滋賀県に向かった時はスムーズに走れたことで、何と都心から510kmの距離を見事に平均速度100km/h弱の5時間半で走破してしまいました。

その日は宿泊しただけで、翌日、無事に仕事を終わらせ18時頃に帰路についたのですが、そこで「緊急事態宣言下」を痛感することになります。

夕食時になったので高速道路の途中でサービスエリアに寄って食事をすることにしました。

19時15分位に空腹に負け、某サービスエリアに入り、食事を取ろうとレストランに入ります。注文を終え、しばらくすると、お店の方が「ラストオーダーになりますが追加の注文は、ございますか」ときいてきました。え?!と驚きましたが、そう、緊急事態宣言によって飲食店の営業は20時までの時短営業要請があるので、それに従ってサービスエリアのレストランも20時で閉まるとのことです。

私はギリギリ間に合ったのでした。

その後に、明らかにトラックドライバーといった方が、いらっしゃって、「え?!もう閉まるの?」と呟き、そして悲しそうな顔をして、去って行かれたのを申し訳ない気持ちで見送るしかありませんでした。

そして大きな疑問が湧いてきました。「何故、サービスエリアの店まで20時で閉めなければならないのか」

当然ですがお土産店はともかく、サービスエリアのレストランなどでは酒類の販売はありません。しかもほとんどの方が一人で黙々と食事をして、短い時間で去っていきます。

しかもテーブルには、パーテーションもあります。感染リスクは決して高いとは言えないでしょう。そして何と言っても、この状況で世の中の流通物は大幅に増えていて、それを担っているのがトラックドライバーの皆さんです。まさに過酷な状況で仕事をされているのです。

その間の束の間の休息で、温かい食事をするというのが、どれだけ活力になるか。またサービスエリア毎の名物の料理などを楽しみにしているドライバーの方もたくさん、いらっしゃいます。しかも皆さんの食事の時間は不規則で夜間になることも多いのです。

ちまたでは、たとえ20時に営業は終了しても、ギリギリまでお酒を出すお店もあり、残念ながらお酒を飲んでいるお客は、ほとんどの場合、マスクも外したまま大声で話しているのが現実です。

それを考えたら、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアで夜間に食事を提供したところでリスクが高まるとは私には考えられません。
この不条理はすぐに是正されるべきだと私は考えます。

それから、高速道路を走りながら大きな矛盾を感じることがありました。

このような状況下ですのでさまざまな情報を得たいと思い、最近はクルマに乗っているとき、自分の好きな音楽を聴くよりもラジオを聴くようにしています。

長距離を移動していると、聴取可能なラジオ局が場所によって変わるため、走行している地域のラジオ局の放送を聴くことになります。

ある地域の局ではスキー場やレジャー施設のCMが流れていて、たまたま聴いていた番組では、スキー場の広報の方が出演して、「ぜひ○○スキー場へお越しください。お待ちしています!」と宣伝されているのが放送されていました。

その番組を聴きながら、ふと顔を高速道路上の電光掲示板に向けると「不要不急の外出は自粛を!」と書かれています。そのスキー場のある自治体には緊急事態宣言は出されていないのですが、その宣伝を放送している局は完全に緊急事態宣言が出されている地域にあります。

何とも言えない複雑な心境になりました。

自粛警察になるつもりはありませんし、スキー場やレジャー施設にとっても、営業するかしないかは文字通り、死活問題であるのは間違いありません。しかし片や流通を担っているドライバーの皆さんが夜に食事もできない状況で、街では、時間に制限があるとは言え、外食や飲酒もできて、外出を促すCMがラジオから流れている…どうしても心がざわついてしまいます。
でも誰が悪い、というわけではありません。

コロナウィルスの収束を願うばかりではあるのですが、それまで、こういった矛盾と向き合わなければならない現実を突きつけられたような気持ちになりました。

私はお酒も飲みませんし、仕事でもクルマを運転できれば幸せです。外食は減りましたが基本的に家で食事をとるのが普段から好きなので、前回でも言及しましたが、そういう意味では影響は少ないと言えるでしょう。

でも緊急事態宣言下で長距離を高速道路を使って移動したことでさまざまなことが見えてきました。

やはり細かい状況まで国や自治体が、もっと把握して、きちっと緩急をつけ、それぞれに適切な要請をするべきで、何でも一律に、しかも判断を市民に丸投げするような施策は混乱や分断を生むだけだと痛感しました。

まずは高速道路や有料道路、道の駅などにある、酒類を提供しないお店に関しては時短営業要請を解除していただきたいと切に願います。

ここ数年、それでなくてもトラックドライバーの皆さんを中心に流通業界はギリギリの状況の中、何とか踏ん張ってくださっている状況です。

心からのお願いです。

最後に
全ての医療に従事している皆様、エッセンシャルワーカーの皆様、そして交通、流通関係の皆様に感謝を申し上げて今回の結びとさせていただきます。

安東 弘樹

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