改めて感じた「違い」…安東弘樹連載コラム
先日、昨年契約した日本メーカーの軽自動車が納車されました。
実は自分の所有車としては25年ぶりの「国産車」です。
何度も申し上げていますが、私はステータスシンボルとしてのクルマには興味がありませんが、自分のクルマの使い方に合うクルマを選ぶと、これまでは、どうしても輸入車になってしまっていました。
基本的に毎日、高速道路を使って100kmを移動し、時には1000km以上を自分で運転して仕事にも向かうとなると、やはり「合う」のは輸入車になります。
エンジンもガソリン車(ハイブリッドを含む)よりもディーゼルエンジンの方が効率がよいため、その選択肢も日本メーカーではMAZDAを除くとほとんどありません。
それから、長距離の運転となると、クルマのシートが重要になってくるのですが、このシートの形や作り方も、少なくとも私には輸入車の方が合っています。
補足で申し上げると、シートに関しては、以前、日本メーカーの開発担当から輸入車インポーターの幹部に職を変えた方に、興味深い話を聞いたことがあります。
転職してクルマに触れ驚いたのが「シートにかけるコストの差」だという話でした。
もちろん、全体的に、前職の日本メーカーと転職先のヨーロッパメーカーでクルマの作り方のコンセプトが違うのは知っていたが、特にシートに関しては想定を超えていた、ということです。
ただ、クルマが近距離で使われることがほとんどで、乗り降りする機会が多い、という日本の場合、立体的で身体をしっかりホールドするシートは「使いにくい」と感じられることが多く、長時間、座っていても疲れない、「コストをかけて作ったシート」が、アダになってしまうこともあるそうで、やはり、その国の事情を感じた、とも仰っていました。
またフランスメーカーとアライアンスを組んでいる日本メーカー社員のフランスブランド担当の広報の方も、同じクラスでプラットフォームも共通のクルマでのシートの作りの差には、かけてあるコストも含めて驚いたという話をされていました。
そう、長距離を走る私には輸入車のシートの方が合っているのです。
その他ガッチリした車体、細かい所で言うとドアヒンジの造りの違いなども含めて全体的に重い車体も、日本の一般道では燃費には悪影響を及ぼしますし、ストップ&ゴーが多い日本では運転していて、“もっさり”と感じることもあるでしょう。
ただ、高速道路の直進安定性などは今でも明確な差を感じるのは確かです。
そんな私が本当に久しぶりに日本のクルマを購入しました。
軽規格のオフロード車で5速MTモデル、と言えば車種はほとんどの方が分かると思いますが、結論から申し上げると、大変、気に入って満足しています。
最近、ほとんど見かけることがなくなったパートタイム4輪駆動で、レバーを使って2輪駆動から4輪駆動に切り替え、副変速機もついている、という、私が人生2台目に買った30年前の、当時で言う「クロカン4駆」と同じ機構なのも素晴らしい!
進歩がない、と言われればそれまでですが、オフロードを走るためには、信頼性などを考えても、この機構が安心です。海外メーカーの最新本格オフローダーは、これでもか、というほどの電子制御機構満載で、デフをロック状態にさせるかどうかもクルマが自動的にやってくれるものが主流ですが、やはり私は自分で判断して自分で操作してハードな地形を走破したい、というタイプですので、アナログの方が向いています。そして何より、日本の林道や未舗装の道は狭い所が多く、輸入車のオフローダーは総じて、大きくてさらに「高価である」ことが選択肢の障壁になりました。
今、書いたとおり、30年ほど前には私、林道やオフロードを走ることが好きで、時には積雪のある林道を一人で何時間もかけて走破することを趣味としている時期さえあったのですが、アナウンサーとしての仕事が忙しくなり「社会的責任」を強く感じることになるにつけ、それまでも十分、注意していたとは言え、積雪のある林道などを走る、という「冒険」をやめるようになっていきました。
しかし、フリーランスになって、「会社の名前を背負う」、という立場とは少し変わってきたことや自分の子ども達の成長、さらには自分の人生の終わりも見えてきたこともあってか、またオフロード熱が戻ってきたのです。
そこで、今回のクルマの購入に至ったのでした。
そして日本のクルマと海外メーカーのクルマの決定的、かつ明確な違いに自分から発せられた言葉で気付いたのです。
しかも私が購入したクルマは、MTのオフローダーという典型的な日本のクルマではないのですが、自分の新しいクルマに触れて思わず出てきた言葉が、くしくも取材で長時間乗った日本の典型的なミニバンに対して思わず出てきたものと同じだったことから、根底に流れるクルマ造りのコンセプトが同じなのだと実感することになりました。
前提として私の感性に合うクルマに、ある程度の時間触れた後に出てくる言葉が
日本メーカーのクルマ→「良くできたクルマだなー」
海外メーカーのクルマ→「良いクルマだなー」
本当に、後で思い出してみると、綺麗に別れているのです。
少し説明すると、とにかく日本のクルマは、(最近は量を減らすために有料になりましたが)レジ袋を引っかけられるフックが複数ついていたり、最近ではシートバックにスマホを入れるのにちょうどいいサイズのポケットがついていたり、微に入り細に入り、普段の生活でいかに便利に使えるか、というのが、特に軽自動車やミニバンでは最重視されていて、私のオフローダーでさえ、思わず感心してしまう装備に溢れています。
それから、輸入車であれば高級車にしかついていないようなオートハイビームやACCなど、言葉を選ばずに申し上げると、走りの根幹に関わること以外の装置、装備は価格を考えると目を見張るばかりです。
ちなみに、私は納車された翌日に仕事で滋賀県に行く機会があったので購入したばかりのクルマで往復1000kmを走り、納車2日後に1000km点検に持って行って驚かれたのですが、その際の燃費は17km/Lで、正直「良い意味」で驚きました。
以前、同じようなエンジンスペックの軽自動車を借りて高速道路を中心に長距離を走った時の燃費が、12km/L程度と、カタログ燃費との違いに「悪い意味」で驚いたことがあるので、これは嬉しい誤算でした。
この差は、恐らくトランスミッションの違いだと思います。借りたクルマはお決まりの「CVT」で少し加速するのにもエンジンが必要以上に回ってしまい、エンジンブレーキはほとんどかからないのでブレーキで減速し、またアクセルを踏みなおすと、またエンジンが速度に先行して回ってしまうという、いかにも高速道路には向いていない制御で、常にエンジンは4000回転以上、回っていました。
私のクルマは5速MTなのでエンジン回転は自分の思うままにコントロールできます。
100km/hで3850回転程度(もちろん5速で)、回ってしまうのは、やはり驚きましたが、(普段、私が乗っているディーゼルエンジンのクルマは120km/hで9速1300回転)まだ慣らし運転ですので、新東名高速の速度120km/h制限の区間でも4000回転未満、つまり100km/h前後を守り、往復の1000kmを走り切りました。
街中での効率はCVTの方がよいのかもしれませんが、やはり私はMT派です(笑)。
そしてシートですが、やはり輸入車との差は明確に感じました。以前レンタカーで借りた日本のコンパクトカーのように100kmで腰が痛くなるようなことはありませんでしたが、いかんせん形状が平面に近く、しっかりとホールドしてくれる、というものではありませんので、滋賀までは耐えられましたが、九州までだったら疲労感が大きかったであろうというのが正直な感想です。まあ、高速道路を長距離走る、という種類のクルマではないので、関東甲信越地方の林道を走りに行くには弊害はありません。
さらに前回借りた軽自動車に比べて遮音性が高く、100km/h走行時でもラジオの音をさほど、ボリュームを上げなくても問題なく聴けました。後でカタログを見直したら、遮音には、かなり力を入れてあるようです。
こうしてみると日本のクルマは「優秀な生活の道具」。ヨーロッパを中心としたメーカーのクルマは「優秀な長距離移動手段」という感じでしょうか。
言うまでもなく全てのクルマに当てはまるわけではありませんが、総じて、そのメッセージを感じるのです。
スポーツカーでさえ、日本メーカーのクルマはオーナーが買った後に、カスタマイズしてサーキットを走る、ダートを走る、とクルマを使って楽しむという前提で作られているのに対し、ヨーロッパのスポーツカーは既に完成されたクルマに乗って(その分、高価ですが)長距離を快適に移動する、というコンセプトを感じます。
ドイツのニュルブルクリンクはチケットを当日に買えば、誰でも気軽に走れるサーキットですが、走っているヨーロッパのクルマを見ると少なくとも新しいクルマを改造しているドライバーはほとんどいません。普通のバンやコンパクトカーも混ざって走行しています。長距離移動のついでにサーキットも楽しむという方が多いそうです。
対して日本のサーキット走行会ではほとんどの日本車が何らかのカスタムがされています。
つまりサーキットを走ることが目的で、クルマを仕上げているドライバーが多いのです。
それだけサーキットを走るということが一般ドライバーにはハードルが高くなってしまうのは残念ですが。
そんなことを再認識させてくれた新しいクルマ。
まだ本来の性能を発揮できるオフロードは走っていませんが、久しぶりの日本車は私の愛すべき、頼れる相棒になりそうです。
安東 弘樹
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