2021年を総括…安東弘樹連載コラム
いよいよ2021年が終わります。
今年もコロナウィルスは猛威を振るい年末にかけて感染者数は減ったものの、新変異株「オミクロン」の出現によって、まだもやもやした状態が続いています。
一時7人にまで減った東京の新規感染者数は今日(12月19日)現在、33人となっています。これが誤差の範囲なのか、再び増えてきたのか判断は出来ませんが、まだ予断を許さないと言えるのは確かでしょう。
そんな中、今年は世界的な半導体不足の影響で各メーカーが減産を余儀なくされるなど、クルマ業界全体にとって、決して楽観出来るような状況ではありませんでした。
そしてヨーロッパや中国を中心に「猛威を振るった」EV旋風。
その是非には様々な意見や主張はありますが、日本でもエネルギー構成が変われば、一気にEV化が進むかもしれません。
実際に先日トヨタの豊田社長によって発表された、レクサスにおける2035年までのグローバル完全BEV化宣言は、かなりのインパクトがありました。
唯、非レクサスのTOYOTAブランドや他メーカーまで含めたBEV化となると、日本全体の社会構造そのものも変えなければなりませんので、今後は日本社会が、どれだけの覚悟を持って変革に取り組むかが問われる事になるでしょう。
個人的には、エンジンとMTの組み合わせが無くなるのは、残念でなりませんが、地球の為、という事でしたら仕方がありません…幸か不幸か、私が存命の間は、まだ猶予はありそうですが…。
しかし、家族用のクルマに関しては、正直、次のクルマはBEVが完全に視野に入っているのも確かです。温室効果ガスだけでなく、有害な物質を排出するのは内燃機関(エンジン)のクルマの宿命ですが、いくら新しいエンジン車の排ガスがクリーンになってきているとはいえ、小さなお子さんが、アイドリングしているクルマの後ろで、荷物を出し入れしている親の隣で立っている瞬間などを駐車場で見かけたりすると、正直、心配になったりします。
咳き込んでいる、お子さんを見た事もありますので、そういう時は、内燃機関のクルマというのはエンジンが動いている限り、有害な排ガスが、ずっと出ている、という事を実感するのです。
それにBEVに乗ると、特に制止時や低速走行時には、その静かさと振動が無い事にも感動します。
環境負荷はさておき、純粋に心地良いのです。
価格的に、まだまだ高価な物が多いのは確かですが、未経験の方は、まずは試乗してみる事をお勧めします。
暫くは様々な種類のパワーユニットが混在しますので、試してみて、やはり内燃機関の方が自分に合うというのであれば、今はEVシフトしなくても良いと思います。
実際に、まだ、どちらの方が環境負荷は少ないのか、少なくとも日本では結論が出るまでには時間が掛かりそうですので。
そんな状況での日本カーオブザイヤー2021―2022は、シリーズ式ハイブリッド車である、日産ノートシリーズが獲りました。
シリーズ式、というのはエンジンは駆動には使われず、バッテリーに電気を供給する発電機として使われます。ですのでアクセルを踏んだ時にエンジンの音と加速にラグが生じ、私個人的には、どうしても違和感を拭えなかった事で二番目の配点となりましたが、前回のコラムでも書いた通り、納得出来ない結果ではありませんでした。
私は三菱アウトランダーPHEVをイヤーカーに選びましたが、個人的には初めて、PHEVを選択した事になります。
今年は初めて他の海外メーカー製PHEVで三日間に及ぶ長距離のテストをしてみて、想定より良い実質燃費に驚きましたし、一回の走行距離が長い私にとって、エンジンでも走れるというのは、まだ安心材料になります。そういった観点からもPHEVが、暫くの間、現実的な選択になるだろうと思っていました。
しかし、BEVの方も正に日進月歩。気付くと日本市場でも航続距離が500キロや600キロを超えるようなEVが買えるようになっています。
例えば、BMWのiXというBEVは650キロの航続距離をカタログに載せていますし、御存知テスラも、それに近いモデルが、すでに存在しています。
これはWLTCモードでの計測による数値で、実質燃費とは、まだまだ乖離が有るのが現実ですが、この位になってくると完全にガソリンエンジンのクルマと肩を並べます。
現実の航続距離が1000キロを超える事が多いディーゼルエンジンには敵いませんが、少なくとも多くの日本のドライバーの使い方で困る場合は殆ど無いのではないでしょうか。
もっとも、このクラスのEVは殆ど1000万円前後の価格になってしまうのも現実ではあります…。
そういう意味では日本で最も売れている軽自動車クラスのBEVの普及が前述のエネルギー構成の変化と共に、どの程度進んでいくのかが大きなキーとなってくるでしょう。
そんな様々な変革が起きている中、2021年は日本メーカーのクルマが存在感を示してくれた、というのが1年間を通じての感想です。
カーオブザイヤー2021―2022においても、多くの選考委員が最後の最後までイヤーカーの選考に悩んでいました。しかも日本メーカーのクルマの中で悩んでいたのが特徴で、私自身も、その一人です。私はいつも、日本メーカー、海外メーカーを意識することは無いのですが、これまでは自分の中での最終候補(例年、2.3車種)には、必ず海外メーカーのクルマが残っていました。
前回はその中でプジョー208をイヤーカーに選んだのですが、今回は全て日本メーカーのクルマだったのです。
この事は、後で気付いたのですが、それだけ今回は日本メーカーが頑張って下さったのだと思います。
現在の日本市場に於いて(充電インフラなども考慮して)クルマを選ぶ時、海外メーカーのBEVが10ベストに残らなかったのは必然で、その影響もあったのかもしれませんが、それを差し引いても魅力的なクルマが多かったのは確かです。
正直、500キロ以上の距離を高速道路を使ってノンストップで走るような状況では欧州車に分はありますが、細かい配慮など、普段の足として街中で使うという状況では日本の特に軽自動車の利便性や、「おもてなし」装備に脱帽する事があります。
今回のノミネート車ではありませんが、最新の某メーカーの軽自動車を自分の車の点検時の代車として暫く乗った時には、感心ばかりしていました。
まずエンジンをかけた瞬間、モニターに車の周囲をVRで車をスケルトンにした状態の映像を投影させ、それが360度回転し周りに小さな子どもや小柄な高齢者などが存在するかどうかを確認できる様になっていたのです。
エンジンをかける度に360度、グルッと一周する映像を確認できるのは、非常に優秀だと思いました。
レンジローバー系のSUVでは激しいオフロードを走る為に前輪の車軸前辺りの映像をヴァーチャルでモニターに表示し、障害物を避けながら走れるという優れた機能が付いていますが、日本では、アクセル、ブレーキの踏み間違いや、出発時に小さな子どもに気付かずに、傷つけてしまう事例(時には死亡事故も)が多発している事から、それを無くそうというメーカーの意志を感じます。しかもその表示が見やすく、これなら、かなり有効に危険を回避出来るのでは無いかと確信しました。
そのクルマのトランスミッションはCVTでしたがラバーバンドフィールも許容範囲に抑えられており、あれ、このクルマ、普段使いで良いかも、と思いました。
唯、不思議なのが同じメーカーの、同じエンジン、同じトランスミッションのはずの、他の車種を運転した時にはCVTの特徴が色濃く出ており、正直、「このクルマには、もう乗りたくない」という感覚だったのです。
両車の違いは、かたやヒンジドアの、ちょっとSUV風のクルマで、かたやスライドドアの完全ファミリー向けの穏やかなクルマでしたので、もしかしたら味付けを変えているのかもしれません。販売店に訊いたところ、「メーカーからは特に、違いについては聞いていません。」との返答だったのですが、間違いなく違う味付けのクルマでした。
だとすると相当、きめ細かい制御を施している事になります。
将来的には、こういう作り込みがされた軽規格のBEVに乗れる日が来るのでしょう。
さあ、そろそろ、まとめますと、良くも悪くも、「様々な議論を生んだ2021年」だったかもしれません。
来年、2022年はクルマにとって、どんな年になるのでしょう。
2021年に続いて、議論は、まだまだ続きそうですが、是非、建設的な議論になる事を願ってやみません。
「内燃機関は、もう終わりだ!」とか逆に「BEVはエコじゃない!」と言ったネガティブ探しではなく、内燃機関の可能性、や、エネルギーマネジメントをしっかりとした上でのBEVの運用について考える等、お互いの利点をしっかりと考えた上での議論をしていきたいものです。
クルマの未来は明るい!と私は思っています。
皆さんは、どう思われますか?
それでは良いお年を!
安東 弘樹
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