立体駐車場とは?種類や特徴、停めるコツなどについて解説

立体駐車場にはいくつか種類があるのをご存知でしょうか?普段何気なく利用している方も多いかもしれませんが、実は種類によって特徴や車の収容方式が異なります。今回は、立体駐車場の種類と特徴についてご紹介。気をつけておきたい立体駐車場で起こりやすい事故や停め方のコツなども解説しますので、ぜひチェックしてみてください。

立体駐車場とは

立体駐車場とは、駐車場を多層化・立体化させて一度にたくさんの車を駐車できるようにした施設です。広いスペースを確保できない土地でも、たくさんの駐車台数を確保できます。

立体駐車場は、以下に挙げたような多くの車利用者が見込まれるところに建設されています。

立体駐車場がよく使われる場所
マンション/スーパー/ショッピングモール など

立体駐車場は大きく2種類

自走式 自分で運転して駐車スペースに車を収容する
機械式 パレットに駐車し、機械操作によって車を収容する

自走式立体駐車場は、自分で運転して駐車スペースまで移動するタイプの立体駐車場です。連結されたスロープを走行し、各階層を移動します。駐車スペースが十分に確保されているため、車からの乗り降りがしやすいことが特徴です。

一方、機械式立体駐車場は、台(パレット)に車を停めたあと、機械操作をして所定の駐車スペースへ移動させて収容します。自走式駐車場と比べると、狭い土地でも多くの台数を収容できることが特徴です。ただし、車の出し入れに多少時間がかかります。

なお、自走式・機械式ともにさらに細かい種類がありますので、詳しくは以下をご覧ください。

“自走式”立体駐車場の種類と特徴はこちら
“機械式”立体駐車場の種類と特徴はこちら

あわせて読みたい!
事前精算すると自動で開くのはなぜ?駐車場の仕組み

立体駐車場の高さ・幅などの制限

自走式と機械式それぞれで、高さや幅などにどのように制限があるのか見ていきましょう。

自走式
国土交通大臣から認定を受けた自走式立体駐車場の場合、天井の高さは厳密に決まっていません。高さ2.0〜2.5mほどであるところが多いですが、駐車場ごとに若干の差があります。ちなみに、一般的な車の高さは1.5m程度。高さのある車に乗る際は少し注意が必要です。

なお、自走式駐車場に駐車可能なのは、車両総重量は2.0トン又は2.5トンまでの車。構造や防災の観点から決まっています。

機械式
日本で採用されている主な機械式立体駐車場の全幅・全高の制限は、以下の通りです。

  • 全幅:1.85m
  • 全高:1.55m

機械装置を使用して車を収容する立体駐車場であるため、自走式に比べると駐車できる車の条件が厳しい場合が多いです。最近は車高が高い車種も多く、機械式に駐車できないこともあるため注意しましょう。
具体的には、ミニバン、SUVなどの車種では注意が必要です。

POINT
✓ 高さ制限には注意が必要。
✓ 車だけでなく、タイヤ幅にも注意

立体駐車場で起こりやすい事故

立体駐車場は、空間を縦に利用して駐車可能台数を増やす効率的な施設です。しかし、構造が特殊な分、しっかりと注意しないと大きな事故につながってしまう、という危険性も。実際にさまざまな事故が発生していますので、確認し注意していきましょう。

自走式立体駐車場

  • 後ろ向き駐車に失敗し、フェンスを突き破り地上に転落する

自走式立体駐車場では、上層階からの転落事故が起こりやすいといわれています。1階であってももちろん注意は必要ですが、2階、3階と階数が上がると、転落の危険性が高まります。入出庫時の後退やアクセル・ブレーキの操作ミスには細心の注意を払いましょう。

機械式立体駐車場

  • 装置内に人がいる状態で機械が作動
  • 人の転倒や落下
  • 作動中の装置に接触・巻き込まれる
  • 乗降室内への閉じ込め

機械式立体駐車場の場合、装置の操作が原因となり痛ましい事故が発生しています。駐車する際は、機会を操作する前に装置内や付近に人がいないか必ず確認をするようにしましょう。

事故が発生した場合は警察へ届出を
立体駐車場で事故が発生した場合は、警察への届出が必要です。立体駐車場は私有地に該当しますが、不特定多数の人が出入りできる施設であるため、事故が起きた場合は道路交通法が適用されます。

万が一事故を起こしてしまった・事故に遭ってしまった場合は、被害者の救護活動と二次被害を防ぐ行動をとったあと、必ず警察に届出を行いましょう。

【警察への主な届出内容】

  • 日時と場所
  • 双方の氏名・住所・連絡先・車両登録番号など
  • 事故の状況
  • 目撃者
  • 事故の対応 など

立体駐車場での事故を防ぐために

立体駐車場に車を停めるときのコツ

立体駐車場に駐車する際に知っておきたいコツを、自走式、機械式にわけてご紹介します。

自走式立体駐車場への停め方のコツ
自走式の場合は普通の駐車場と停め方は変わりません。
ここでは「右からバックして駐車する際」を例にあげて説明します。
Q.立体駐車場での事故を防ぐには?
自走式立体駐車場でバック駐車する際は、バックを始める位置決めが重要です。

  • 駐車スペースに対して車体を斜めにする
    (駐車スペースに向かって若干車体後方が傾いている状態)
  • 手前の車と近い位置
    (駐車スペースに対して右側の車との距離が近い)

上記の状態からバックを開始します。

バッグを始めたら、左右の車にぶつからないか確認しつつ、ゆっくり動かします。
自分の車の右の後輪が、手前側(右側)の車の左端を超えたら、基本的にはもう(手前側)右側の車にぶつかることはありません。そのあとは後側(左側)の車を意識して、ぶつからないようにバックします。

ぶつかりそうな時は、切り返しが必要です。駐車スペースに対し対し、右に車が傾きすぎている場合は、ハンドルを左に回して、車を慎重に前進させます。駐車スペースに対して車体がまっすぐになるよう調整しましょう。
車体と駐車スペース左右の白線が平行になったら、ゆっくりバック。これで駐車スペースにしっかりと車を入れることができるでしょう。

【停め方のコツ】

  • バックを始める「位置決め」をしっかりと行う
  • 後輪の位置と隣の車の距離を意識する
  • ぶつかりそうになったら切り返して、車体をまっすぐにする

機械式立体駐車場への停め方のコツ
機械式の場合は、台(パレット)に乗せる必要があります。

機械式立体駐車場に停める際は、まず同乗者を先におろし、荷物も車の外に出すところからスタート。場合によっては、そのあとサイドミラーやアンテナもたたみます。

機械式の場合は、自走式立体駐車場に停めるときのように、ハンドルを切りながらバックをするのはおすすめできません。直進または事前にハンドルを切って車体をまっすぐにしてからバックで入れましょう。

また、機械式のパレットにはストッパーが設置されています。パレットに乗せる際にストッパーを乗り越える必要がありますが、アクセルを踏み込みすぎないようにしましょう。

【停め方のコツ】

  • 直進(車体をまっすぐにしてからバック)で収容する
  • ストッパーを乗り越えるときもスピードを一定に保つ

あわせて読みたい!
駐車テクニックを上達させたい!

立体駐車場に関するよくあるQ&A

立体駐車場についてのよくあるQ&Aをまとめました。立体駐車場の設置に関わることも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。

Q:立体駐車場の設置・維持に関して方式による違いは?

A.方式よって、必要な土地の大きさや、維持費、耐久性などに違いがあります。

立体駐車場は通常の駐車場と比べて収容台数が多いですが、とくに機械式は小さな土地で多く車を収容できます。しかし、機械式では正確な位置に停めなければ機械を動かすことができない、自走式よりもメンテナンスが必要など一長一短です。

違いについては、以下の表を参考にしてください。

自走式 機械式
必要な土地 大きい 小さい
駐車のしやすさ 車室ライン内に駐車する 正確な位置に停める
維持費 安い 高い
耐久性 高い メンテナンスが必要
収容台数 増やすためには大きな敷地が必要 一定の敷地で多くの収容が可能
セキュリティ面 ゲートや管理人室を設置すると向上できる 高い

Q:“自走式”立体駐車場の種類と特徴は?

A.主に3種類あり、スロープなどに特徴があります。

自走式立体駐車場は、自分で運転して駐車スペースまで移動し駐車するタイプの駐車場です。種類は大きく3種類で、スロープの形式に違いがあります。

自走式立体駐車場の種類
連続傾床式 ・スロープが駐車スペースを兼ねている
・駐車スペースを多く確保できる
フラット式 ・各階層をスロープでつなぐ
・駐車と移動の動線がわけられる
スキップ式 ・駐車階を半階ずつずらす
・スロープが短い

自走式立体駐車場は、地上2階建て以上のタイプが多いです。車の出し入れが容易であり、屋上以外は屋根もあるため、悪天候でも乗り降りしやすいでしょう。

また、法律によって外壁の開口率が定められていて、開放性が高いことも特徴です。津波など災害時の避難所として活用されることもあります。

あわせて読みたい!
駐車違反にならないって本当?車椅子マークの意味

Q:“機械式”立体駐車場の種類と特徴は?

A.台(パレット)に乗せるタイプで、主に3つの種類があります。

出典:国土交通省「機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン」の手引き」
機械式立体駐車場は、台(パレット)に車を乗せて、機械を操作して車を停めるタイプです。大きく3種類にわけられます。

機械式立体駐車場の種類
ピット二段式 ・パレットを昇降して、車を上下2段に地上に停める
・下段は地下に収容する
タワー式 ・エレベーター式とも呼ばれる
・車を乗せたパレットをタワー内で移動させ、収容する
・セキュリティが高い
地上二段式 ・パレットを昇降して、車を上下2段に地上に停める
・個人宅や狭い土地でも設置可能

同じ機械式であっても、収容台数は上記に挙げた収容方式によって異なります。地上2階建て以上のものや地下を含むものなど、さまざまです。

機械式立体駐車場は、比較的小さな土地でも建設でき、多くの収容台数を確保できます。ただし、機械の操作によって駐車するため、平面駐車場や自走式立体駐車場と比べると、車の出し入れに時間がかかるでしょう。

Q:立体駐車場の建築時の制限は?

A.認定制度によって制限が異なります。

立体駐車場には、以下のような認定制度の基準があります。
自走式立体駐車場の制限

認定の種類
一般認定 ・国土交通省が定めた基準
・1階建て (1層2段)から6階建て(6層7段)までの駐車場が対象
個別認定 ・当該物件のみに個別に認定される
・一般認定よりも自由度が高い
・一般認定よりも取得期間が必要
型式適合認定 ・国土交通大臣が指定する機関により、設置条件を審査
・構造計算適合判定審査は免除される
防耐火認定 ・3階建て以上の駐車場が対象
・国土交通大臣により審査された防火材料を使用し建築する

認定の種類は上記の4つに区分でき、対象となる駐車場の種類や基準などがそれぞれ異なります。

自走式立体駐車場は建築物扱いになるため、建築基準法などの法規制を守って建設する必要が。建築する土地の区分ごとに、立体駐車場の規模が制限されます。

また、2018年より、認定を受けた駐車場は認定表示板を表示する制度ができました。

機械式立体駐車場の制限
機械式立体駐車場も建築物にあたるため、建築時は建築基準法などが適用されます。

2015年には、駐車場法施行規則が改正されました。これにより、今後新しく機械式の駐車装置を設置する場合は、ガイドラインの内容を踏まえた安全基準を満たすこと、国土交通大臣からの認定を受けることなどが義務に。

設置者は駐車場法に基づき、都道府県知事等に対する届出を行うことが義務づけられています。その駐車場に機械式駐車装置を設置する場合には、製造者が国土交通大臣の認定を受けている装置でなければ、設置は認められません。

Q.立体駐車場の建設にかかる値段は?

A.各立体駐車場の規模により異なりますが、機械式(タワー式)の方が割高です。

自走式立体駐車場は規模や階数にもよりますが、車両1台あたりの建設コストは比較的安価です。機械式であっても2段式など小さなタイプであれば比較的安価ですが、タワー式は割高な傾向にあります。

また、機械式は定期的なメンテナンスも必要なため、運用コストがかかる点にも注目しておきましょう。

Q.立体駐車場での事故を防ぐには?

A.自走式では運転操作に、機械式では運転操作と装置操作に注意しましょう。

自走式立体駐車場に駐車する際は、入出庫時の後退動作が不規則に発生します。駐車場に限ることではないですが、周囲の車や人などの動きに十分配慮したうえで、適切に運転操作を行いましょう。上層階に駐車する場合、運転操作ミスによる転落の危険性もあるため注意が必要です。

また、機械式立体駐車場においては、運転操作に加えて装置の操作にも細心の注意を払いましょう。装置付近に人がいないか等、確実に確認をしたうえで操作をします。さらに、定期的にメンテナンスを行い、経年劣化による事故を防ぎましょう。

Q:立体駐車場の需要動向は?

機械式駐車場の新設需要は、ここ十数年で大幅に減少。現在では、ランニングコストが安く、耐久性が高い自走式の人気が高まっています。

立体駐車場について知り、安全に利用しましょう

立体駐車場は大きく自走式と機械式の2種類があり、それぞれさらに細かなタイプにわけられます。車の収容方式や高さ・幅などの制限がそれぞれ異なるため、利用前に特徴を知っておくことがおすすめです。

あわせて、立体駐車場に停める際のコツも押さえておけば、安全かつスムーズに駐車できます。ご紹介した立体駐車場の種類や特徴を参考に、安全な利用を心がけましょう。

(GAZOO編集部)