安全は日常点検から。定期的に行って愛車の調子をキープしよう
クルマというものは、どんなに大切に扱っていても劣化や消耗は進んでいくもの。機械である以上、仕方がないのだが、それゆえ、日頃の点検やメンテナンスを行なうことで好調を維持することが可能だ。
言い方を変えれば、点検やメンテナンスを行なうこと前提にした乗り物と言っていい。
法律的には点検を実施するのはユーザーの義務で、道路運送車両法(第47条の2)で決められている。これによると、乗用車の場合は走行距離や運行状況などから判断して、適切な時期に行うとあって、明確な時期については指示はない。
目安として長距離走行や洗車・給油時、季節の変わり目などに実施するようにしたい。トラックなどの事業用については1日1回行なうように定められているが、たまに見かけるライトなどのタマ切れなどは日常点検を実施していない可能性があるということになる。
法定となる12カ月点検や24カ月点検も本来はユーザーの義務で自ら行えなくはないが、これらは項目も多く、分解が必要なものも多いため、ディーラーや整備工場に任せるのが一般的だ。
今回取り上げる日常点検もプロにお願いすればやってくれるだろうが、項目自体は15項目と少なく、見たりするだけと簡単なものばかり(12カ月点検は27項目)なのでぜひ自分で行いたいし、行うことで愛車が身近なものになったり、愛着も増すというものである。
では、実際になにを行なえばいいのだろうか。実際の項目は車載されているメンテナンスノートに記載されているので、それに沿って行なえばいい。
なんらかの事情でメンテナンスノートがない場合は国土交通省のサイトにチェックシートがあるので、ダウンロードして使用するといいだろう。
それでは順に点検項目と点検のポイントを紹介していこう。
【国土交通省 チェックシート】
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha/tenkenseibi/images/t_checklist.pdf
目次
エンジンルーム 5項目
項目1 ブレーキフルードの量
エンジンルーム内の運転席側にあるタンクにブレーキの作動に使用するフルードが入っている。タンクのサイドにはMAXとMIN、つまり上限と下限のラインがあってその間に入っているかを確認。軽く揺らしてみるとわかりやすいだろう。
ブレーキの摩耗に従って徐々に減ったり、漏れなどの不具合でも減るので安易に足すのではなく、下限を下回っている場合はプロに相談するようにしたい。
項目2 冷却水の量
冷却水はエンジン内部を循環しているが、タンクにも入っている。こちらにもMAXとMINという適正な量を示すラインがあるので、その間に入っているかを確認して、下限に近い場合は冷却水を補充しておく。
補充用の冷却水は売られているし、ディーラーなどにお願いすれば補充してくれる。また点検するたびに大きく減っている場合は、不具合発生の可能性もあるので注意したい。
項目3 エンジンオイルの量
エンジンにとってオイルは血液のようなもので、とても重要なもの。オイルの点検はレベルゲージで行い、そのフックは黄色いのでわかりやすいだろう。
抜いて先端をきれいな布などで拭き取ってからもう一度戻して、再度抜いて、ふたつあるラインの間にオイルが付いていれば問題ない。ちなみに色で劣化は判断できないので、交換については期間と走行距離で管理する。
項目4 バッテリー液の量
バッテリー内部には液体が入っていて、この量をサイドにあるラインで点検する。軽く揺らすとわかりやすいだろう。内部は6つの部屋に分かれているので、全体をすべて見るのがポイントになる。
最近ではメンテナンスフリーバッテリーが増えていて、こちらは液量の点検は不要。その代わり、充電状態を表すインジケーターが付いているので、覗いて色で確認しておく。不良の場合は充電して、それでもダメなら交換となる。
項目5 ウォッシャー液の量
日常的に使うのがウインドウウォッシャー液だけに、量の点検は重要だ。タンクのサイドのラインが付いている場合と、なにもなくて横から見て確認する場合。またエンジンオイルのようにフタにゲージが付いているクルマもある。
安いものなので、補充用を買っておくといいだろう。
クルマの外観 4項目
項目6 ランプ類の点灯
クルマにはランプが前後だけでなく、左右にも付いていてけっこうな数になる。それらのひとつでも点かないと危険なので、すべてを点検する。
ブレーキランプについては、誰かに頼んで踏んでもらうか、壁やガラスなどに写して行なうといいだろう。また点灯の確認ついでに割れや汚れがないかなど、レンズの状態も見ておく。
項目7 タイヤの状態
タイヤは命を預ける重要なものだけに点検もしっかりと行いたい。まずは表面を見て亀裂が発生していたり、損傷していないかを確認するだけでなく、釘などの異物が刺さっていないかも見ておく。もちろん4本とも行う。
項目8 タイヤの空気圧
ゴムの分子よりも空気の分子は小さいので、自然に抜けていくため、タイヤの点検で最重要かつ、定期的に行ないたいのが空気圧の点検と補充だ。
接地面のたわみ具合で異常を判断できなくはないが、給油ついでに空気充塡機を借りて自分で行なうか、スタッフにお願いするのがベストだ。
項目9 タイヤの溝
タイヤの溝はとくに雨の日のグリップに関係するだけに、残量の点検は大切だ。日常点検では、スリップサインを基準にして見ておく。
スリップサインとは溝の中にある1段高い部分で、溝の残量は1.6mm以下であることを示していて、これが表面に出たら車検にも通らなくなるのでもうそのタイヤは使用不可となる。
スリップサインの場所はサイドに△などで示してあるのでこれを目印にして探す。併せて、内側と外側で極端に減りに差がないかも見て、ひどい場合はサスペンションの不具合などが考えられるのでプロに相談してもらう。
運転席まわり 6項目
項目10 エンジンのかかり具合
エンジンのかかり具合というと難しい気もしてしまうが、スイッチを押したり、キーをひねるとすぐにエンジンがかかれば問題なし。なかなかかからなかったり、かかっても止まってしまうようならトラブルの可能性が大きい。
項目11 ウォッシャー液の噴射状態
量はすでに点検済み。実際にレバーを引いて噴射状態を点検する。ガラス全体に噴射されるかだけでなく、範囲外のところに飛んでいないかも見ておこう。調整は簡単なので、自分でも可能ではある。
項目12 ワイパーの拭き取り状態
スムーズに動くかだけでなく、拭きムラや漏れがないかを点検する。ワイパー自体は1年毎に交換が推奨(日本ワイパーブレード連合会)されているので、視界確保のためにも無理して使わないで早めに交換したい。
ワイパーだけ作動させるとキズの原因になるので、項目11のウォッシャーの点検と一緒に行なうといい。
項目13 ブレーキの踏み代と効き
こちらも難しいように思えるが、ペダルを踏んでみて感覚的に違和感がなければ正常と考えていい。不安になるほど奥まで入ってしまうようならトラブルを疑う。効きについては不安なく止まれれば問題なし。
項目14 サイドブレーキの引き代
電動ブレーキが普及しているが、今でも手動や足踏み式は現役。引き代や踏み代が長いものは調整してもらったほうがいい。あまりに長いとフィーリング上の違和感だけでなく、効いていないことも考えられる。
項目15 エンジンの低速や加速状態
まずはエンジンをかけてアイドリングがスムーズか。またアクセルを踏んできれいに吹け上がるかを点検。止まって行うのは環境的にも最小限にしつつ、走りながらも意識して確認する。
[付録] ボンネットの開け方
実際に聞くのが、ボンネットの開け方がわからないというもの。教習所で教えてもらっただけという方も多く、そうなるとわからないのも当然か。今回の日常点検時やなにかあったとき覚えておいたほうがいいので、改めて紹介しよう。
(文、写真:近藤暁史)
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