ただの水じゃない!大切なクーラントの役割

冷却がうまくできないとエンジンは壊れてしまう

現代のクルマはごく一部の車種を除いて「水冷エンジン」が搭載されている。読んで字のごとく、水で冷やすエンジンだ。

そもそも車のエンジンはシリンダー内で燃料を燃焼させることでピストンを上下させ、それを回転するエネルギーに変換して動力にしている。1分間に何千回という爆発が起きているので、エンジンは大きな熱を持ってしまうのだ。

昔のエンジンの多くは燃焼熱を空気で冷やす空冷エンジンだった。しかし、現在のほとんどのエンジンはシリンダーの周囲にウォータージャケットと呼ばれる水路が設けられており、この間を通る水をラジエーターで冷却循環させてエンジンを適正な温度に保っている。そのため、エンジンが冷却できなくなると発生した熱によりエンジンが故障してしまうこともある。これがオーバーヒートと呼ばれる現象だ。

エンジン内では燃焼による熱が絶え間なく発生するため、冷却装置がなければ連続して稼働することは困難だ。
エンジン内では燃焼による熱が絶え間なく発生するため、冷却装置がなければ連続して稼働することは困難だ。

オーバーヒートの症状とラジエーターの種類

冷却水を要因としたオーバーヒートは、ほとんどが冷却水不足によるものだ。国産車では主に開放型と呼ばれるラジエーターが採用されており、ラジエーター内ではラジエーターキャップにより冷却水が加圧されている。水温が100℃に上昇しても沸騰しないようにしてある。

ただ圧力が高くなり過ぎるとラジエーターやホース類などが破裂してしまうため、一定以上の圧力がかかると余分な冷却水をリザーバータンクへ送って圧力の上昇を抑えている。ラジエーターの温度が下がると、リザーバータンクから冷却水が戻される仕組みとなっている。

リザーバータンクは密閉されていないため、蒸発によって冷却水は少しずつ減少しているのだ。欧州車ではラジエーター側にキャップがなく、リザーバータンクにも圧力がかかっている密閉型を採用している車種が多い。冷却水の経路がすべて密閉されているため、冷却水が蒸発することがなく、劣化も少ない。ただ、サブタンクやホースに常に高圧、高温の負担がかかっているので、部品の劣化による水漏れのトラブルも少なくない。

オーバーヒートの原因としてもう一つあげられるのが冷却ファンのトラブルだ。ラジエーターはフィンがついた細かい経路の中を水が通り、そのフィンの隙間に風を通すことで冷却水を冷やしている。つまり、ラジエーターに空気が当たらなければ冷却水を冷やすことは出来ないので、車両が停止している間は水温が上昇してしまうのだ。

そこで、ラジエーターの後ろにはファンが装着され、このファンを回して冷却水を冷やしている。エンジンが縦置きの古い車ではエンジンの回転軸からベルトを回してファンを回転させていたので、ベルトの緩みや切れによりファンが回転せずにオーバーヒートに繋がることもあった。

現代のほとんどの車両では電動ファンが採用されており、温度の上昇によりファンが回転して最適な水温になるように管理されている。電気で動いているためファンが故障することもあり、ヒューズ切れによりファンが停止してオーバーヒートに至るトラブルも多い。

万が一オーバーヒートした場合、昔はベルトでファンを駆動していたクルマが多かったため、エンジンを止めずにアイドリングを続けることが良いとされていたが、現代の電動ファンを使用している車両ではすぐにエンジンを止めるのが正しい対処法だ。

オーバーヒートは突然起こることは少なく、ほとんど場合は予兆のようなものがある。冷却水はエンジンから室内を暖めるためのヒーターコア、ラジエーターへと長い距離を循環する。

この経路には金属のパイプやゴムのホースなどが使われていて、このジョイント部から漏れてしまうことが多いのだ。冷却水が極端に少なくなれば冷却水の温度が上昇するので、メーターパネル内の水温計がいつもより高い数値を示している場合は注意が必要だ。

また、冷却水に使われているクーラントは独特な甘い匂いがするので、いつもと違う匂いがするなら冷却水が漏れている可能性もある。

このように、とても大切な機構ということがわかってもらえただろうか。上記の症状がなくても、リザーバータンクの冷却水の量など、ラジエーター周りは日常的に点検をすべし。

一番わかりやすいのが水温系の針の位置。通常時よりも表示温度が高いようなら注意すべし。
一番わかりやすいのが水温系の針の位置。通常時よりも表示温度が高いようなら注意すべし。

冷却を司るのがクーラントの役割だ

エンジンを冷やすための「水」が、とても大事なことはお分かりいただけたかと思う。
ただ、この「水」は単なる水ではなく、「クーラント」と呼ばれる液体なのがポイント。

クーラントにはエチレングリコールやプロピレングリコールなどの成分が含まれており、配合された防錆剤が冷却経路に錆が発生することを防止するほか、厳寒期に冷却経路が凍ってしまうことを防止する働きもある。

なぜ凍結してはいけないのか? 水は凍ることで体積が約1割増加する性質がある。これにより冷却水の経路が詰まってしまうだけでなく、配管やエンジン内部にひび割れが発生してしまうからなのだ。もちろん錆による不具合も発生する可能性もある。

そのため、面倒だからといった軽い気持ちで、クーラントの代わりに真水を使用するのは絶対にやめた方がいい。また、シリンダーヘッド周辺など、特に温度が高くなる個所ではクーラントが沸騰する可能性もあるが、気泡が発生すると冷却効率が極端に悪化する。気泡をできるだけ早く消すために消泡剤と呼ばれる成分も配合されている。

左側は新しいクーラント。右側は使い古したクーラント。容器に入れて同じ時間振った後の写真だが、古いクーラントは泡立っている。消泡剤が劣化して機能していないことが分かる。
左側は新しいクーラント。右側は使い古したクーラント。容器に入れて同じ時間振った後の写真だが、古いクーラントは泡立っている。消泡剤が劣化して機能していないことが分かる。

ラジエーターキャップにも注目!

ここでもうひとつ注目してほしいのが、ラジエーター上部についているラジエーターキャップだ。主圧弁(加圧弁)と負圧弁を備えており、冷却系路の圧力を適正に保つ役割があるが、高圧にすることでクーラントの沸点を上昇させている。いわば圧力鍋のようになっているわけだ。そのため、エンジン停止直後に開けるのはとても危険! 熱水が噴出して大やけどをする可能性がある。

ラジエーターキャップにも注意書きがされているが、内部が十分に冷えないうちにキャップを開けるのは大変危険だ。
ラジエーターキャップにも注意書きがされているが、内部が十分に冷えないうちにキャップを開けるのは大変危険だ。

現在の主流はスーパーLLCだ

冷却水であるクーラントは、現在ではLLCと呼ばれることが多い。これはLong Life Coolant(ロングライフクーラント)の略だ。

LLCが誕生したのは今から数十年前のこと。それ以前のクーラントの寿命は数ヶ月だったので、ロングライフという名称ではあるものの寿命は約2年程度しかない。車検ごとの交換が必要とされている。緑や赤に色付けされているのが、このLLCと呼ばれるクーラントだ。

そして、最近ではさらに長寿命となったスーパーLLC、スーパーロングライフクーラントと呼ばれるクーラントが主流となっている。寿命は7〜8年、メーカーによっては10年間交換不要としている製品もある。ピンクや水色に色付けされているものがスーパーLLCだ。

欧州車を中心にメーカーによっては専用品の使用を義務付けていることも多く、指定のものを使用するようにしたい。また、従来のLLCや他メーカーのスーパーLLCを混ぜて使用するのは著しく性能を低下させるので避けるべき注意点。製品より配合されている成分が異なるので、性能が低下するだけでなく、凝固して経路が詰まってしまう危険性もあるからだ。

LLCとスーパーLLCの例。それぞれ色分けがされており、ラジエーターに注入した後でも判別できるように工夫されている。混ぜ合わせて使用するのは厳禁だ。

クーラントの量や漏れは日常的に確認を!

スーパーLLCの採用によって交換サイクルが飛躍的に長くなったとはいえ、メンテナンスが不要になったわけではない。クーラントはエンジン内部から室内を暖めるためのヒーターコア、ラジエーターへと長い距離を循環している。この経路には金属のパイプやゴムのホースなどが使われていて、このジョイント部から漏れてしまうこともある。冷却水が減ってしまえば冷却する効果は極端に低下してしまうので、日常的に点検することがとても大切だ。

また、オーバーヒートの症状のところでも触れたが、水温計や水温警告灯に注意することも大切。

クーラント交換については、エア抜きなど素人作業ではなかなか難しいところもある。お店など、プロに作業を任せよう。

ラジエーター周辺や冷却経路のホースのジョイント部、リザーバータンクなどを定期的にチェックするようにしたい。ホースのジョイント部からクーラントが漏れた跡やリザーバータンクからの噴き返しがあったことが分かる。

(文:橘 祐一)

[ガズー編集部]

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