FUJITSUBOがいち早く創りあげた『車検対応マフラー』へのこだわりと匠の技・・・カスタマイズパーツ誕生秘話①
愛車を自分好みにカスタマイズしようと考えた時に、どのメーカーやブランドのアイテムを選ぶか考えるのも楽しみのひとつ。ここでは、そんな「ものづくり日本」が生み出したメーカーやブランドの生い立ちやコンセプトについてまとめてみました。カスタムパーツ選びの際に知っておくとチョット参考になるかもしれないので、ぜひ読んでみてください!
愛車を自分好みにカスタマイズしようと考えた時に、どのメーカーやブランドのアイテムを選ぶか考えるのも楽しみのひとつ。ここでは、そんな「ものづくり日本」が生み出したメーカーやブランドの誕生秘話や、当時から現在に至るまでのパーツ開発に込めた想いを紐解いていこう。
第1回目は、自動車用マフラーを中心としたアイテムを製造・販売するアフターパーツメーカーとして、国内最大級の規模を誇る「藤壺技研工業(FUJITSUBO)」だ。
マフラーメーカー『FUJITSUBO』とは
FUJITSUBOのラインアップされる製品はすべて『保安基準適合』であることから、安心してカスタムを楽しめるうえ、ハイクオリティということも相まってクルマ好きの間では『車検対応マフラーのパイオニア』として一目置かれる存在だ。
そんなFUJITSUBOの起源は、1931年に福岡県で開業した『藤壺モータース』。1945年になると自社でオートバイ用のエンジンを設計製作するようになり、1949年には『タイヤ以外はエンジンも含めてすべて自社製』という驚きの技術力で、日本初のフット式ギヤチェンジを可能としたオートバイ『イーグル号』を世に送り出した。
1955年には神奈川県横浜市に進出し『藤壺技研工業』設立と同時に、レースチューニングの専門ショップも開業。1970年には『藤壺技研工業株式会社』を設立し、当初はカムシャフトなどさまざまなパーツを作っていたそうだが、当時はまだ交換すること自体が一般的ではなかったマフラーの製造・販売へと注力していくこととなったという。
当時から高い技術力を持っていた同社のマフラーは『交換するだけで心地良いサウンドとモアパワーが手に入る』と人気やシェアが順調に高まっていき、1980年代半ばから巻き起こったスポーツカーブームとともに飛ぶ鳥を落とす勢いの快進撃が続いていく。
完全合法での高性能を提唱する『JASMA』の設立
ブームによるカスタム人口の拡大とともに、創業以来、合法カスタムにこだわり、健全なマーケットを構築し続けていたFUJITSUBOは、保安基準を守ってカスタムを楽しめる『車検対応マフラー』というジャンルを確立するために奔走。
1988年に『近接排気騒音規制』が施行されることが決定すると、この音量以下の製品を作ってユーザーのハートを掴むことを命題として掲げ、製品開発に取り組んだ。
そして同時に、こうしたテーマに賛同してくれた同業者と共に『日本自動車スポーツマフラー協会(JASMA)』を設立。以前から法令遵守を唱えていた藤壺勇雄氏はJASMA初代会長に就任し陣頭指揮を執った。これが1989年、平成元年のことである。
JASMAでは道路運送車両法で定められた保安基準よりもさらに厳しい独自の基準を設けて認証検査を実施。さらに、保安基準に適合している証となる“証明書”や“プレートの貼り付け”などを徹底するなど、認定マフラーならばユーザーが難なく車検をクリアできるようにと万全の体制を整え、アフターマフラー業界を堅持したのである。
まさに『車検対応マフラー』というジャンルをイチから作り上げたといっても過言ではないだろう。
今でこそマフラー交換は『カスタマイズの初めの一歩』として気軽にアプローチできるものとなっている。しかし、こういった激動の時代を振り返るってみると、もしこの時、JASMAという組織が設立されていなかったら、現在のカスタマイズ業界がどうなっていたことだろうか。そう思えるくらい大きな分岐点となった時事であったことは間違いない。
さらに1995年には規制緩和(『自動車部品を装着した場合の構造等変更検査時等における取扱いについて(依命通達)』)が実施され、愛車のカスタマイズはよりいっそう身近なものになっていくのであった。
スポーツマフラーに革新! 『レガリスシリーズ』の誕生
そんなJASMAの誕生と共に、1989年に誕生したFUJITSUBOの大黒柱ともいえるアイテムが『レガリス』シリーズである。
レガリスシリーズの初期段階のモデルでは、主に耐久性を考慮した『アルスター材』が選択されていたが、のちにリヤビューからの見栄えもするリヤサイレンサー部にステンレス材を使った『セミステン仕様』が登場。
そして究極の耐久性を実現する『オールステンレス(SUS304)仕様』や、最先端となる高級素材を積極的に取り入れた『チタン&セミチタン仕様』など、マーケットからのニーズに応えながら商品ラインアップを拡充させていった。
ちなみに、レガリスシリーズ誕生の裏では、当時1000アイテム以上が存在したという製品が保安基準に適合するかどうかというチェックや改良、さらに検査登録までを短い期間で行わなければならず、その苦労は相当なものだったとか。
また、アルスター材からステンレス材への転換についても、加工機械の設定変更や再調整にはじまり、内部に使用するマテリアルの変更、音色や響きの調整、さらに軽量化のために中実の鉄棒から中空ステンレスパイプに材質変更するなど、細かい努力の積み重ねによって製品クオリティを高めていったという。
規制強化に対し「何事にも他より早く取り組む」社長方針で対応
その後もどんどん厳しくなっていく音量規制。そうなると、膨大なラインナップ数を誇る同社が、ひとつの試作品が完成する毎に専門の試験機関へと持ち込んでいては効率が悪い。そこでFUJITSUBOは、2004年に静岡の裾野総合工場(1997年開設)の敷地内に『騒音試験センター・走行試験路』を新設。効率的な製品開発を可能としている。
ちなみにこれは先代社長の「何事も他よりも早く取り組む」という方針によるもので、2010年4月以降に生産された車両に『加速騒音』の規制が追加されるという決定にいち早く対応したものだったそうだ。
こうして2010年4月以降に生産された車両に適合した『オーソライズ』シリーズは、2010年3月以前に生産された車両向けの『レガリス』シリーズ以上に厳しい基準をクリアして作り上げられている。
『車検対応マフラー』というジャンルを築きあげた経験値は役立ったものの、加速騒音の規制に対応するために内部構造の変更を余儀なくされるなど「レガリスのときよりも大変だった」という現場の声も聞こえてくる。
『パワーとサウンド』だけじゃない付加価値を求めて
こうして『マフラー交換を安心して楽しめる』文化を育ててきたFUJITSUBOは、その後も、街乗りではバルブを閉じて静かに、サーキットではバルブを開放して思う存分クルマの性能を楽しめる『排気バルブシステム』など、時代に合わせた製品を次々と生み出し続けている。
かつてはマフラー交換に求める性能といえば“パワー”と“音”だったが、現在はルックスや製品クオリティ、その他の付加価値まで含めて、ユーザーのニーズに応えているのだ。
さらに、ステンレス加工技術を活かした『SMITH SUSono』というアウトドア用品ブランド展開や、積雪時の一酸化炭素中毒という悲惨なニュースを見て開発したという排気補助部品『SNOW KEL』など、ジャンルの垣根を超えたアイテムにもチャレンジしている。
「純正でもスポーツマフラーを採用するクルマが増え、電気自動車も増えてきた昨今ですが、現存するクルマから旧型車までまだまだ需要は豊富ですし、純正部品には規制やコストなどさまざまな制約があることは変わりません。また、ステンレス加工の技術や設備を活かしてほかのことにもどんどんチャレンジしていきたいですね」と研究開発課の長谷川さん。
2024年の東京オートサロンではAW11、AE86、SA22Cといった絶版車向けのアイテムを新たに参考出品するなど、時代のニーズに合わせた製品開発を続けるFUJITSUBO。今後もどんなアイテムを生み出していくのか楽しみである。
取材協力:藤壺技研工業
[GAZOO編集部]
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