最強の直6ターボの証!4代目スープラの人気を象徴する「RZ」・・・グレード名で語る名車たち
クルマは装備や機能の違いでいくつかのグレードが用意されます。中にはハイパフォーマンスなパワートレインを搭載した特別なグレードが用意されるモデルも存在します。そのグレード名やサブネームはモデル名とともに、クルマ好きの記憶に刻まれています。中にはグレード名やサブネームが後に車名になったものもありました。
本コラムでは多くの人の記憶に残るモデルをグレードから振り返っていきます。
リトラクタブルヘッドライトが刺激的だった2代目セリカXX
2024年11月28日、現行モデルの生産終了がアナウンスされたトヨタ スープラ。スープラを振り返るうえで絶対に外すことができないのが、直列6気筒のエンジンでしょう。
1970年にデビューしたセリカは日本初のスペシャリティカーとして人気を博しました。一方で海外に目を向けると、日産がアメリカで発売した“Zカー”ことフェアレディZが大ヒット。トヨタはこの市場で対抗できるモデルの開発に迫られます。そして1978年4月にセリカXX(A40/A50型)を発売。北米ではスープラという名前で販売されました。
ラグジュアリーカーらしい流麗で伸びやかなシルエットのスープラに搭載されたエンジンは2Lと2.6Lの直列6気筒。北米でフェアレディZに挑むためには、6気筒エンジンが不可欠だったのです。グレードは2Lを搭載するLとSとG、2.6L搭載のSとGが用意されました。1980年に登場した後期型は、2.6Lから2.8Lに拡大されました。
1981年7月に登場した2代目(A60型)はイメージを一新。リフトバックスタイルは初代から継承しているものの、シルエットは直線基調になり、スポーティなイメージが強調されました。もちろん2代目XXで私たちに強烈な印象を残したのは、リトラクタブルヘッドライトでしょう。
スポーティ路線に舵を切ったXXですが、インテリアはラグジュアリーでプレミアムな路線を継承。デジタルメーター、オートドライブなどの先進的な装備も搭載されています。中でも地磁気センサーが方位角を検出し、車速センサーから算出した走行距離を用いて目的地方位や目的地到達度を表示する『ナビコン』は現在のカーナビゲーションシステムの前身とも言える画期的なものでした。
また、変わったところではエンジンルーム内に夜間作業時に使う整備灯がついていたり、シートの背もたれのサポートを空気で調整するポンプが備わっていました。
搭載エンジンは2Lと2.8Lの直列6気筒。グレードは2Lを搭載する2000Lと2000S、2.8Lを搭載する2800GTを用意。1982年2月には2L直6ターボを搭載するターボSとターボGが、同年8月には2L直6 DOHC搭載の2000GTが追加されました。
最強グレードに搭載された3L直6ターボ
セリカXXは1986年2月のフルモデルチェンジでセリカから独立し、名称が北米と同じスープラになります(A70型)。セリカXXのイメージを残しながらもボディラインに流麗さが与えられ、ラグジュアリーなスポーツモデルに生まれ変わりました。
搭載エンジンは最高出力230psを発揮する3L直列6気筒ターボを搭載した3.0GTターボ、以下2Lのレーザーα1Gツインカム24・ツインターボを搭載したGTツインターボ、レーザーα1Gツインカム24を搭載するGT、そしてGとSが用意されました。
1980年代は自動車メーカーが馬力競争を繰り広げた時代。1989年にはZ32型フェアレディZやR32型スカイラインGT-Rが300psを達成。この状況を見かねた当時の運輸省は行政指導を行い、Z32とR32は最高出力を280psに抑える形で世に送り出されました。そしてこの数値が各社の指針となります。スープラは1990年8月のマイナーチェンジ時に設定された2.5Lツインターボ搭載車が280psを達成しました。
A70型まではターボモデルの上級グレードに“GT”という名称が使用されました。これはグランドツーリングを意味する記号であり、トヨタ 2000GTを彷彿させるものでした。一方で“GT”という記号は高性能車でよく使われるものであり、“特別感”は希薄です。1990年代前半に販売されていた車種を見ても、トヨタ ソアラ、トヨタ セリカ、日産 スカイライン、スバル レガシィツーリングワゴンなど、多くのモデルで使用されていました。
1993年5月にフルモデルチェンジしたA80型ではグレード名で“GT”が使われなくなり、新たにSZ、RZ、GZという記号が使われました。
SZには3L直6 DOHC NAエンジンが、RZとGZには最高出力280psを発揮する3L直6 DOHC ツインターボエンジン『2JZ-GTE』が搭載されました。ターボモデルであるRZのトランスミッションはゲドラグ製の6速MTが搭載されました。ライバルモデルはみな5速だったので、6速というのはものすごいインパクトでした。
スープラ、日産 スカイラインGT-R、ホンダ NSXといった280psを達成したスポーツモデルの対決は、箱車の国内最高峰のレースである全日本GT選手権だけでなく、クルマ雑誌での企画、チューニング系のDVDなどでも繰り広げられます。
さらに2001年に公開された映画『ワイルド・スピード』で主人公の愛車としてスープラが抜擢されます。これによりスープラの知名度は世界的なものになりました。そして、3Lツインターボの『2JZ-GTE』エンジン+6速MTというパッケージを持つRZはA80型スープラの人気を象徴するグレードでした。
ただ、大排気量ターボを搭載したスポーツモデルは平成12年度自動車排出ガス規制への対応が難しく、2002年で生産終了を余儀なくされました。スープラも2002年7月に生産が終了。24年間の歴史に幕を下ろしました。
17年ぶりの復活で継承された「RZ」というグレード名
A80型が生産終了になってから、スープラの名称が使われることはありませんでした。しかし2018年3月に開催されたジュネーブモーターショー(スイス)で「GR Supra Racing Concept」を世界初公開。スープラの名前が16年ぶりに復活します。そして2019年1月のデトロイトモーターショー(アメリカ)においてスープラの市販モデルが世界初公開されました。
その姿はA80型の面影があり、ファンはスープラの復活を歓迎しました。このスープラはBMWとの共同開発で、スープラの伝統である「直列6気筒エンジン・FR駆動」が継承されました。一方でA80型まではリアシートが設置されていましたが、新型は2シーターモデルになっています。
そして2019年5月の日本仕様の発表で何より嬉しかったのは、用意されるグレードの名称がA80型から継承されたことでした。3L直6ツインスクロールターボを搭載するRZ、チューニングが異なる2L直4ツインスクロールターボを搭載するSZ-RとSZ。A80型のSZ系はNAエンジンだったので、その点は異なりますが、SZ-Rの軽快でキビキビとした走りは、A80型SZをイメージさせてくれます。
スープラの伝統を受け継いだRZは、高速道路などをクルージングする際はGTカーらしい優雅で余裕のある走りを味わえます。そして一度アクセルを踏み込めば、直6ターボが目覚めて獰猛な走りを楽しめる。スープラがBMWとの協業で生まれたのは、直6ターボ搭載が可能であったからと言われています。
生産終了のアナウンスと同時に、トヨタは2025年春以降にスープラの特別仕様車『A90ファイナルエディション』を発売することを発表しました。最高出力が320kW(435ps)、最大トルクが570N・mに高められ、それを受け止めるブレーキやサスペンションなどを強化。グローバルでわずか300台しか生産されない超が付くほどのスペシャルモデルです。
スープラの生産は終了しますが、トヨタは「今後もモータースポーツ活動を通じてスープラを鍛え続けていきます」としています。いつかまたスープラが我々の前に姿を見せてくれることを夢見ていたいですね。
(文:高橋満 写真:トヨタ自動車)
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