レクサスのプレミアムスポーツな走りを象徴する「F」の称号・・・グレード名で語る名車たち

  • レクサス・RC F

クルマは装備や機能の違いでいくつかのグレードが用意されます。中にはハイパフォーマンスなパワートレインを搭載した特別なグレードが用意されるモデルも存在します。そのグレード名やサブネームはモデル名とともに、クルマ好きの記憶に刻まれています。中にはグレード名やサブネームが後に車名になったものもありました。

多くの人の記憶に残るモデルをグレードから振り返る本コラム、今回はレクサスが誇るレース直系のDNAを宿す「F」についてお届けします。

プレミアムなスポーツブランド「F」

  • レクサスの「F」のエンブレム

自動車メーカーにとってスポーツモデルはそのメーカーやブランドを象徴する存在です。そのため、各社はスポーツモデルに最新技術を投入するとともに、じっくりとテストを重ねて走りに磨きをかけて世に送り出します。

また、スポーツを象徴するブランドを育て、そのブランドの名を冠したモデルやグレードなどを用意しているメーカーもあります。代表的なものとして

■トヨタ:GR
■ホンダ:Modulo
■日産:NISMO
■スバル:STI
■三菱:RALLIART
■メルセデス・ベンツ:メルセデス AMG
■BMW:M
■アウディ:RS
■ジャガー・ランドローバー:SVR
■ルノー:ルノー・スポール(現在はアルピーヌと統合)
■フィアット:アバルト
などがあります。

生い立ちや立ち位置はブランドごとに異なりますが、どのブランドも大切に育てられ、「このブランドのモデルが欲しい」というファンも多くいます。

トヨタのプレミアムブランドであるレクサスにおけるスポーツブランド。それが「F」です。

「F」は富士スピードウェイをはじめ、世界のサーキットで鍛えられた証

  • レクサス・IS F

    レクサス IS F

「F」は、さまざまなトップカテゴリーのレースが開催される富士スピードウェイ(Fuji Speedway)に由来します。世界有数のサーキットトラックで鍛え上げられたモデルだけに与えられる特別な符号が「F」なのです。

「F」が初めて使われたのは2007年10月。FRスポーツセダンのISをベースに開発されたIS Fでした。

IS Fは最高出力423ps、最大トルク505N・mを発揮する5L V8エンジンを搭載。このビッグパワーを受け止めるトランスミッションは、F専用に開発された世界最速レベルの変速レスポンスを実現した8速スポーツダイレクトシフト、サスペンションやブレーキもF専用のものが装備されました。タイヤはフロントが225/40R19、リアが255/35R19という前後異径タイヤが装着されました。

IS Fの登場には度肝を抜かれたのを覚えています。ミドルサイズのセダンにここまで大きなエンジンをぶち込んだこと。スポーツ性を極めたモデルなのに、レクサスならではのプレミアム性を損なうことなく仕上げられていること。ドイツ御三家ではこのようなモデルはありますが、まさか日本の自動車メーカーがこのようなモデルを造るとは。

でもレクサスがプレミアムブランドとして世界に認められるためには、「F」というブランドは絶対に必要なものだったのだと思います。「F」の立ち位置のブランドが他の日本メーカーから登場していないのも、レクサスが特別なブランドであることの現れでしょう。

スポーツブランドの名を「F」というアルファベット1文字で表したのも清々しさを感じると同時に、「F」をさまざまな形で展開できる。イメージ戦略としてもすごいなと感じました。

LEXUSのエモーショナルな走りを象徴するRC F

  • レクサス・RC F

    レクサス RC F

「F」を冠したモデルの第2弾は2014年1月にワールドプレミアされたRC F。コーナリング時に後輪の駆動力を最適に制御し、理想的な車両挙動を実現する「TVD」をFR車として世界初採用。エンジンはIS Fに搭載された5L V8エンジンをベースにチタンバルブ、鍛造コンロッド、シリンダーヘッドなどを新設計。排気系にも手が加えられ、最高出力330kW(450ps)以上、最大トルク520N・m以上としてデビューしました。

トランスミッションは8速スポーツダイレクトシフト、ドライブモードでスポーツ+を選ぶと、Dレンジでもサーキット走行を楽しむことができると謳われました。

  • レクサス・IS Fの左サイド

さらにRC Fにはエンジンフードやルーフ、リアウイングなどにカーボンパーツを使用した「カーボンパッケージ」を設定し、約10kgの軽量化を実現するなど、プレミアムスポーツにふさわしい性能を与えました。

ラグジュアリーセダンのGSにも「F」を設定

  • レクサス・GS F

    レクサス GS F

2015年11月には「F」をGSにも展開。GS Fが販売されました。レクサスが掲げる『「日常からサーキットまで、誰もがシームレスに走りを楽しめる」という“F”のフィロソフィー』を体現するべく、LSの次に位置する4ドアセダンにも設定されました。

5L V8エンジンや8速スポーツダイレクトシフト、TVDといった「F」に欠かせない性能が盛り込まれ、サーキット走行も楽しめる圧倒的な走行性能が与えられました。
そしてGSならではのラグジュアリーさも大切にされ、オーナメントパネルには木材に独特の削り跡を残す日本古来の伝統工芸である「名栗」の切削加工技術を再現した本アルミが採用されました。

究極の「F」。レクサス LFA

  • レクサス・LFA

    レクサス LFA

IS F、RC F、GS Fのスポーツ性とラグジュアリー性は特筆すべきものがありますが、「F」のピラミッドでは上から2つ目に位置するモデル。レクサスは「F」のピラミッドの頂点に位置するスーパースポーツを世に送り出しました。2010年12月に登場したLFAです。

カーボンモノコックのシャシーに、最高出力560ps、最大トルク470N・mを発揮する4.8L V10エンジンを搭載。このエンジンはトヨタとヤマハで共同開発されたものでした。ラジエーターは後輪後方の左右に配置されています。
トランスミッションは6速の2ペダルMTで、ブレーキはカーボンセラミック製のディスクブレーキを採用。

世界限定500台(日本への割当は165台)というプレミアム性に加え、3750万円という価格も大きな話題になりました。LFAは2009年10月に購入希望受付を開始し、正式発売前に完売。「F」のスポーツ性を究極の形で体現したスーパーカーは今なお頂点に君臨しています。わずかに流通している中古車はすべて「価格応談」。いったいどのくらいの相場で取引されているのでしょう。

多くのレクサス車に展開される「Fスポーツ」

  • レクサス・ES300h F SPORT

    ES300h F SPORT

究極のスポーツモデルであるLFAは雲の上の存在。IS FやRC Fも気軽に手が出せるモデルではありません。レクサスのスポーティなモデルをもっと肩の力を抜いて楽しみたい。そんな人達のために用意されているのが「F SPORT」です。

F SPORTは初代ISがマイナーチェンジした2010年8月に初設定されました。トータルチューニングされたサスペンションやリニアな操舵感の電動パワーステアリングを備え、アルミホイールも専用の18インチを採用。専用フロントグリルやスポイラーなどで特別な雰囲気が演出されました。
インテリアも専用のスポーツシートやロゴ入り本革ステアリングで、F SPORTが特別なモデルであることを主張します。

F SPORTは2012年1月に登場した2代目GS、同年4月にマイナーチェンジしスピンドルグリルが採用された初代RXなどに展開されていきます。現在ではレクサスのフラッグシップセダンであるLSやES、クロスオーバーSUVのRXやNXなど多くのモデルに設定されています。そしてISとRXにはパワートレーンにも手が加えられたパフォーマンスモデルも用意され、幅広いニーズに応えています。

  • レクサス・NX350h F SPORT

    NX350h F SPORT

NXに乗る筆者の知人は、購入時は迷った末にFスポーツ以外のグレードを選びましたが、やはり「F」の雰囲気を楽しみたいと、Fスポーツパーツを装着しました。こういう楽しみ方ができるのも「F」の裾野の広さだと感じます。

(文:高橋満<BRIDGE MAN> 写真:トヨタ自動車、レクサス、古宮こうき)

グレード名で語る名車たち

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