昭和の名車が勢揃い!Twitterで話題になった福岡「日本の名車歴史館」

ちょっと前にTwitterで、あるクルマの博物館が話題になったのを存知でしょうか?

その博物館とは、福岡県福岡市にある「日本の名車歴史館」。Twitterに投稿したユーザーによると、日曜日に訪れたにも関わらず人はまばらで、「大丈夫かなと心配してしまうほど」だったといいます。しかし、展示される国産旧車のラインナップはなかなかのもの。「これは気になる!」と福岡在住の筆者はさっそく取材を申し込みました。

その博物館は海の中道海浜公園「ワンダーワールド」の中にある

まず、その博物館がどこにあるのか。福岡市の中心部から北に進むと、志賀島(しかのしま)という地続きの島があり、その手前に「海の中道海浜公園」という国営公園が広がっています。広大な芝生広場や動物園、プールなど、週末には多くの親子連れで賑わう場所です。最近では、音楽フェスやB級グルメイベントなども開催されています。

では、例のクルマの博物館はどこにあるのでしょうか。いくつかのエリアに分かれている公園内の「ワンダーワールド」というヤシの木が並ぶところまで行ってみましょう。

すると、スカイブルーの建物が現れます。そう、ここが「日本の名車歴史館」です。早速、入ってみましょう。入り口ではおよそ60年前の初代クラウンがお出迎え。展示スペースは2階にあるようです。ちなみに1階はゴーカート場で、営業中でした。

昭和20年代~の名車が勢揃い! 充実の展示車両

階段を上り、「日本の名車歴史館」に入ってみます。すると、スタッフの久家さん(以下、敬称略)に出迎えていただきました。

――こんにちは! 本日はよろしくお願いいたします。ものすごい台数がありますね。

久家:ようこそ、おいでくださいました。ここに並ぶクルマは、オープン当時、ここの責任者が全国の知人などから情報をもらって収集し、レストアしたものです。館内では、当時の映像を放映していますよ。実動車両ばかりだったのですが、現在はパーツもなくなってきているので、現状を維持する方向ですね」

――維持するだけでも大変そうですね。

久家:そうですね、タイヤにヒビが入る音が聞こえるときもありますよ。タイヤの中にチューブを折り曲げて詰めて、高さを維持することもあります。通常のエアを充填するだけでは、ゴムの劣化に耐えられないこともありますしね」

――なるほど。床とクルマにホースがつながってるのはなぜでしょうか?

久家:開館当時はエンジンがかかる車両も多く、その排気ガスを1階のゴーカート場に排出するために取り付けたものです。館内には60台以上のクルマやバイクを展示しているので、どうぞじっくりご覧ください」

テーマ別にゾーンが設けられた展示スタイル

それでは魅惑の館内へと進んでいきましょう。まずは入口付近には、クルマではありませんが、昭和の雰囲気がよくわかる家電や家具が飾られた一角がありました。

いよいよ車のゾーンへと入っていきます。最初は昭和40年代の展示ゾーンです。

左上:日野・コンテッサ(昭和42年)、右上:三菱・コルトイレブン(昭和44年)左下:スズキ・フロンテ800(昭和41年)、右下:日野・コンテッサ900(昭和38年)
左上:日野・コンテッサ(昭和42年)、右上:三菱・コルトイレブン(昭和44年)
左下:スズキ・フロンテ800(昭和41年)、右下:日野・コンテッサ900(昭和38年)

日野・コンテッサや、スズキ・フロンテ800など、比較的小型のクルマが並びます。マツダ・ファミリアのセダンとクーペが隣同士で並んでいるのも見られました。さらにマツダのオート三輪「T2000」の姿も!

左からマツダ・ファミリア セダン(昭和39年)、ファミリア クーペ(昭和42年)、T2000(昭和47年)
左からマツダ・ファミリア セダン(昭和39年)、ファミリア クーペ(昭和42年)、T2000(昭和47年)

続いて、トヨタ・クラウン(当時はトヨペット)や、日産・セドリックの初代モデルといった、高級サルーンのゾーンへ。プリンス・グロリアや2代目クラウンもあります。昭和30年中盤から40年中盤にかけて発売されたモデルが並んでいました。

左上:トヨペット・クラウン(昭和34年)、右上:日産・セドリック(昭和36年)左下:プリンス・グロリア(昭和45年)、右下:プリンス・グロリア スーパー6(昭和38年)
左上:トヨペット・クラウン(昭和34年)、右上:日産・セドリック(昭和36年)
左下:プリンス・グロリア(昭和45年)、右下:プリンス・グロリア スーパー6(昭和38年)

モーターサイクルの展示もあります。陸王のRT-1は昭和30年式。このほかにもスバル・ラビットや、メグロといった「昭和のバイク」も見ることができます。

展示車両の後ろの壁をよく見ると、オープン当時の車両搬入や、歴史館の建造風景などの写真が掲示されており、スタッフの苦労などがうかがい知れましまた。

さて、クルマのゾーンに戻り、今度は小型スポーツカーの車列に。ホンダ・S800やダットサン・フェアレディ、ダイハツ・コンパーノスパイダーといったオープンカーが展示されています。

左上:ホンダS800(昭和41年)、右上:ダイハツ・コンパーノスパイダー(昭和41年)左下:ダットサン・フェアレディ1500(昭和40年)、右下:ダットサン・フェアレディ2000(昭和43年)
左上:ホンダS800(昭和41年)、右上:ダイハツ・コンパーノスパイダー(昭和41年)
左下:ダットサン・フェアレディ1500(昭和40年)、右下:ダットサン・フェアレディ2000(昭和43年)

スバル360や三菱・ミニカといったコンパクトカーのゾーンもありました。ここには、ダイハツ・ミゼットやホンダN360、マツダ・キャロル、スズキ・スズライトといったかわいいクルマがズラリ!

左上:スバル360(昭和42年)、右上:ダイハツ・ミゼットMP5(昭和39年)左下:スズライト(昭和38年)、右下:マツダ・キャロル(昭和44年)
左上:スバル360(昭和42年)、右上:ダイハツ・ミゼットMP5(昭和39年)
左下:スズライト(昭和38年)、右下:マツダ・キャロル(昭和44年)

最後は入り口付近に展示されていた、こんな2台を紹介します。1台は、深みのあるレッドが特徴的な日野・ルノー(4CV)、もう1台はマツダ・コスモスポーツです。

左:日野・ルノー(昭和38年)、右:マツダ・コスモスポーツ(昭和43年)
左:日野・ルノー(昭和38年)、右:マツダ・コスモスポーツ(昭和43年)

日野? ルノー? 2つのメーカー名が並んでいますが、日野自動車がルノー公団より認証をうけ、昭和28年から約10年にわたってライセンス生産したものです。こちらの個体は昭和38年式と、生産されていた最後の年式のもの。コスモスポーツは、2ローターの「L10A型」ロータリーエンジンを積んだ昭和43年式。クルマの脇には手回しでロータリーエンジンの仕組みがわかる模型も置かれていました。

日本の名車歴史館、いかがだったでしょうか? 可能な限り当時の状態を残したクルマの数々に、筆者は昭和の時代にタイムスリップしてしまったかのような気分になりました。お子さんの年齢にもよりますが、分別がわかるようになったお年頃であれば、おじいちゃん、おとうさんと3人で見学、というのもおもしろいと思います。

公園の入場料が大人410円、小・中学生80円で、さらに「日本の名車歴史館」に入るためには500円(大人子ども共通)の入館料が必要となりますが、“一見の価値あり”の充実した展示内容でした。親子で海の中道海浜公園に訪れた際は、ぜひ覗いてみてくださいね。今回紹介しきれなかったクルマもまだまだありますよ!

▼日本の名車歴史館Webサイト
https://uminaka-park.jp/sports/#02-5

(取材・文・写真:赤坂太一、編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road