塗装なしでもこの仕上がり! アオシマの新感覚プラモデルはどのように生まれたのか?

新型車から旧車、バイクやトラックまで、さまざまな製品をラインナップするプラモデルメーカー「青島文化教材社(アオシマ)」が、「ザ・スナップキット」と呼ばれるシリーズで新たなプラモデルの可能性に挑んでいます。このキット、なんと塗装も接着剤も使わずに、上の写真のようなクオリティのモデルカーが作れてしまうんです。今回、そのキットの秘密について、青島文化教材社にお話を聞いてみました。

「セメントってなに?」 プラモデル初心者の素朴な疑問がきっかけに

「ザ・スナップキット」の特長は、セメント(接着剤)を使わずに作れるスナップキットであること。しかも、色付きの素材とシールによって、塗装も不要です。クルマのように実物を参考に作られる「スケールモデル」は、複雑な部品が多くなる関係上、スナップキットにするのは難しく、珍しいことなのです。

2017年から展開する「ザ・スナップキット」は、スズキ・ハスラーとトヨタ・プリウスの2車種。カラーバリエーションも含めて4タイプをラインナップ
2017年から展開する「ザ・スナップキット」は、スズキ・ハスラーとトヨタ・プリウスの2車種。カラーバリエーションも含めて4タイプをラインナップ

このシリーズが生まれたきっかけは、アニメキャラクターとスケールモデルのコラボキットを発売したときの経験にあるのだそう。

「そのとき、普段プラモデルに触れていない人たちから『セメントってなんですか?』『どうやって作るの?』といった声をいただいたんです。そうした意見を受けて『もう一度ユーザー目線に立って考えよう』と、このシリーズを開発しました。プラモデル初心者に向けたキットのため、まずは人気の高いハスラーとプリウスを製品化しています」(青島文化教材社)

塗装をせずに組み立てる“素組み”でもこのクオリティ

「同シリーズは、今までプラモデルに馴染みのなかったクルマ好きの方や女性にも楽しんでもらいたい」との考えから、パーツの分割を大きく(=小さな部品が少ない)していることも特長です。運転席まわりやシャシー(車体の下裏側)など、通常なら小さな部品をたくさん組み合わせて再現するような部分も、一体成型とすることで組み立てを容易にしています。

こちらはハスラーの全パーツ。通常のプラモデルを知っている人なら、点数の少なさに驚くはずだ。パーツが色分けされていることにも注目
こちらはハスラーの全パーツ。通常のプラモデルを知っている人なら、点数の少なさに驚くはずだ。パーツが色分けされていることにも注目

少ない部品点数でもリアルに再現されているのは、長年クルマのスケールモデルに携わってきたアオシマが持つ開発ノウハウや金型技術のおかげでしょう。もうひとつ、プラモデルを作る際に、大きなハードルとなるのが塗装です。

「アニメのコラボキットを発売したときに、『なぜ、色がついていないの?』という声もありました。そこで、このシリーズではパーツごとに色分割をし、塗装をせずに組み立てる“素組み”でも、ある程度カラー再現できるようにしました」とのこと。さらに、ウインドウサッシ(窓枠)などパーツでのカラー再現が難しい部分は、シールを使うことで対応しています。

写真はスズキ・ハスラー(キャンディピンクメタリック)のシール。
写真はスズキ・ハスラー(キャンディピンクメタリック)のシール。

記事中の完成品写真は素組みしてシールを貼付しているもので、素組みで作られたものでも、車体の構造などはリアルに再現されています。ほんのすこし塗装をするだけでさらに実車に近くなるので、塗装の練習をするのにも絶好のキットです。まずは安全性の高い、水性塗料を使ってみてはどうでしょうか?

なお、値段の方も初心者向きで、1,500円(税別)とスケールモデルとしては安めに設定されています。ちなみに、現在はハスラーとプリウスの2車種、計4タイプのラインナップですが、もうすぐトヨタ86も加わるそうですよ!

開発中の「トヨタ86」のテストモデル。カラーはクリスタルホワイトパールとオレンジメタリックの2色になる予定だそう
開発中の「トヨタ86」のテストモデル。カラーはクリスタルホワイトパールとオレンジメタリックの2色になる予定だそう

プラモデルの経験はクルマ選びも役立つ。だから……

遊びが多様化したこともあり、子どもだけではなく、親世代でも模型を作った経験のある人が珍しくなった現在、模型ユーザーのすそ野を広げることが模型業界では重要で、アオシマ以外のメーカーでも、「接着剤不要」「塗装不要」などをアピールするプラモデルが多くなっています。

子どものころにプラモデルに親しんだ経験は、大人になったときのクルマ選びなどにも役立つもの。アオシマの新しい試みが模型業界のみならず、クルマ業界の活性化にもつながっていくいいなと、今回の取材を通じて筆者は感じました。プラモデル未経験の方も、大人になって離れてしまったという方も、「ザ・スナップキット」でプラモデルのおもしろさを再発見してみませんか?
 

(取材・文:斎藤雅道 写真:青島文化教材社 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road