子どもの命を守るのは大人の責任 チャイルドシートアセスメントとは?

小さな子どもをクルマに乗せる際の必需品であるチャイルドシート。では、安全安心なチャイルドシートを選ぶにはどうしたらよいのでしょうか? 独立行政法人 自動車事故対策機構NASVA(ナスバ)のマネージャー 合羽井享さん、同じくマネージャーの吉田清敏さんにチャイルドシートアセスメントについてのお話を伺いました。

チャイルドシートアセスメントとは?

――チャイルドシートアセスメントとはどういったものなのでしょう?

2001年度より、国土交通省とNASVAで行っているチャイルドシートの安全性能評価です。大きく分けて前面衝突試験と使用性評価試験の2項目で評価を行います。前面衝突試験の試験方法としては、チャイルドシートに子供用ダミーを乗せ、時速55㎞で自動車が正面衝突した場合と同じ衝撃を与えます。その際のチャイルドシートの破損状況やダミーの頭部や胸部などに加わった力に応じて総合的に評価していきます。

(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)
(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)

また、使用性評価試験は、取扱説明書のわかりやすさやクルマへの取り付けの確実性、子どもを座らせやすいかどうかなど5項目を評価、実際に簡単・確実にチャイルドシートを取り付けることができるかを評価します。

――全メーカー全製品を評価するのですか?

評価対象とする製品は国土交通省の「自動車アセスメント評価検討会」で選ばれます。選定の基準としては、一般に需要の高い製品が多いですね。メーカーさんもそれぞれ自社で工夫をされたり、さまざまな検査をされたりして、安全性のアピールをしていますが、やはりそれだと客観的に判断することが難しくなります。私どもは、試験をするすべての製品について、第三者の立場で客観的に判断できるよう比較評価を行い、結果を公表しています。

どう選ぶ? チャイルドシート

――チャイルドシートアセスメントでは全部の製品を公平に判断できるということですね

2018年3月版チャイルドシート安全比較BOOKの表紙 これに掲載されていない製品についてはウェブサイトに掲載されている(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)
2018年3月版チャイルドシート安全比較BOOKの表紙 これに掲載されていない製品についてはウェブサイトに掲載されている(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)

はい。ですから、こちらの「チャイルドシート安全比較BOOK」には価格は一切載せていません。チャイルドシートは、一般的な価格帯が5万円台と高価なものなので、価格を載せてしまうとどうしてもそこを基準に選んでしまいがちになってしまいますよね。チャイルドシートはいざという時には命をあずけるものなので、やはり安全を重視して選んでほしいのです。

――では、選び方のコツは?

今、力を入れてお伝えしているのは、取付方法の違いによる選び方ですね。現在チャイルドシートの取付方法は、共通取付具ISO-FIX(アイソフィックス)というクルマのシートについているバーで固定をするタイプと、シートベルトで固定するものの2種類があります。2012年7月以降に新たに販売されているクルマにはISO-FIXが必ず装備されています。もし、これから新しくチャイルドシートを購入する予定で、ISO-FIX対応のクルマに乗っているのであればこちらのタイプをおすすめしています。誰でも簡単・確実に取り付けることが可能だからです。

ただ、もう1つ気をつけていただきたい点があります。最近はお父さん、お母さんがそれぞれクルマを所有しているケースも多く、遠く離れたご実家のおじいちゃん、おばあちゃんも別のクルマで……というパターンもありますよね。その場合、全部のクルマに対応するチャイルドシートが必要になってきます。2012年7月以前に販売のクルマでもISO-FIX対応のものはもちろんありますが、すべてのチャイルドシートがそれぞれのクルマに取り付けられるとはかぎりません。チャイルドシートメーカーから出ている「車種別チャイルドシート適合表」などを参考に使用予定のすべてのクルマで使うことができるかどうか、しっかり確認の上で決めていただくことが大切です。

(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)
(画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)

それらをふまえたうえで、チャイルドシート安全基準マークのついたものを選んでいただきたいと思います。このマークのついていない未認証チャイルドシートも多く出回っていますが、そういったものはおすすめできません。保険と同様と考えていただくとわかりやすいかもしれません。実際にチャイルドシートの本領が発揮される場面というのは、一度もない方がいいんです。でも、万が一の時にお子さんの命をしっかりと守ってくれるのがチャイルドシートです。価格ではなく安全を第一条件で選んでいただきたいと思います。

ミスユースの落とし穴

――取付方法で気をつけるところはありますか?

先ほどもお話したISO-FIXでの取付ですと、クルマ側のバーにカチャッと取り付けるなど、シートベルト固定式と比べて簡単・確実に取り付けることができます。実は、2016年の取付状況調査(警察庁・JAF合同調査)をみますと、ミスユースしている割合が約60%という結果となっているんです。

ベルト固定方式しっかり取付方法より (画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)
ベルト固定方式しっかり取付方法より (画像提供:独立行政法人 自動車事故対策機構)

せっかく安全基準をクリアしたチャイルドシートを使用していても、取付方法が間違っていては、正しく性能を発揮することができません。近頃は、メーカーさんが「使い方動画」を用意しているところもあります。そちらをご覧になったり、取扱説明書にしっかり目を通したりして、正しく固定してください。また、例えばどなたかから譲り受けた場合、取扱説明書がないこともありますよね。メーカーさんによってはウェブサイト上で取扱説明書をダウンロードできることもありますので、利用するのもよいと思います。

子どもの命を守るのは大人の責任

――チャイルドシートの使用義務は何歳までですか?

満6歳までですが、シートベルトがきちんと装着できるようになるまでは、学童用シートを使う方がいいでしょう。大人の体型に合わせたシートベルトは子どもの体だと肩の位置、腰の位置が合わないため、事故が起きた場合、お腹に食い込んだり、首を吊ってしまう危険があります。体を正しい位置に合わせるためには必要だと思います。

また、「子どもがぐずると、降ろして抱っこしてしまう」というお話をよく聞きますが、それでは子どもはなかなかチャイルドシートに慣れてくれません。親御さんにすると辛いかもしれませんが、そこを我慢させる粘り強さも必要ですね。安全なチャイルドシートを選び、正しく使用することで子どもたちの命を守ってあげてください。

――ありがとうございました。

「いざという時はないに越したことはないのだけれど、そのいざという時には子どもの命をあずけるもの」……チャイルドシートを正しく選ぶこと、正しい取付方法を守ることは、子どもたちの命に対する大人の責任であるということをひしひしと感じました。それぞれのご家庭の状況に合わせて、最適なチャイルドシート選びを、ぜひ、心がけてほしいものです。

(取材・文:わたなべひろみ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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