レイアウト変更で予測不能なレースに! 富士スピードウェイで行われた「ブランパンGTシリーズ・アジア」
日本で市販車をベースにしたレースカテゴリーといえば、その筆頭は「SUPER GT」でしょう。しかし、ここ最近、ヨーロッパ発祥のGTレース「ブランパンGTシリーズ」が人気を集めています。
このレースカテゴリーは、その名の通りスイスの高級腕時計ブランド「ブランパン(Blancpain)」がタイトルスポンサーを務め、欧州を中心に行われているGTシリーズです。
急速に人気が高まり欧州最高峰のGT3レースに!
- 出場するGT3マシン。ジェントルマンレースだが、自動車メーカーのサポートが強いのもこのシリーズの魅力のひとつ。ちなみに、「Blancpain」は、1735年に創業された世界最古の時計メーカーだ
もともとは「個人でも購入できるレーシングカー」である「FIA-GT3マシン」を所有するジェントルマンドライバー向けに始まったシリーズで、あっという間に人気を集めて欧州最高峰のGT3レースとなりました。「ブランパンGTシリーズ・アジア」は、2017年に「GTアジア」を引き継ぐ形で発足されたもの。日本では「鈴鹿サーキット」と「富士スピードウェイ」で開催されており、今年も6月30日(土)~7月1日(日)に鈴鹿サーキットで行われました。
今回のイベントは7月21日(土)~22日(日)に、富士スピードウェイの主催で毎年夏に行われる「ザ・ワンメイクレース祭り 2018 富士 SUMMER」との併催イベントとして行われたものです。
より市販車に近い「GT4クラス」マシンも参戦
「ブランパンGTシリーズ・アジア」は、先に紹介したFIA-GT3が中心となって行われるレースですが、もうひとつ「FIA-GT4クラス」のマシンも参戦しています。「GT4クラス」のマシンは、簡単に言うと「より市販車に近いレーシングカー」です。かつての「N1マシン」や「グループN」を知っている人なら、「それに近い」と言うと実感しやすいかもしれません。
- 上から「メルセデスAMG GT4」、「ポルシェ・ケイマンGT4クラブスポーツ」、「マクラーレン570S GT4」
市販車に近いだけに、価格も手頃で参戦のハードルが低いのも特徴。最新のGT3マシンが6000万円台の価格であるのに対して、GT4マシンは1/3程度の2000万円前後で購入できます。改造範囲が狭いので、もとの素性の良さを引き出したマシン作りやセッティング、走り方が求められます。それだけに、奥の深いクラスだとも言えるのです。
このクラスには、昨年まで「SUPER GT」GT300クラスで、「BMW M6 GT3」で参戦していた「BMW TEAM Studie」がフルエントリーしています。このチームは、アジアで唯一のBMW Official Racing Teamです。マシンは、プレミアムスポーツFRクーペ「M4」をベースにした「M4 GT4」。ドライバーは、TOYOTA GAZOO Racingでもお馴染みの木下隆之選手をエースドライバーに、2台のマシンと4名のドライバーで戦っています。
いたるところでホコリが舞う波乱続きの決勝レース
1時間の決勝「レース1」は、スタート直後にクラッシュが起きたり、鬼門のダンロップコーナー周辺で激しいバトルが繰り広げられたりと、あちこちで土けむりが上がる展開に。そんな中、レースを制したのは、2018年仕様のNISSAN GT-R NISMO GT3を駆る「KCMG 18号車(谷口行規/アレックス・インペラトーレ組)」。6番手からスタートし、レース中盤のピット後にトップ立つと、2位以下を13秒も引き離す速さを見せてくれました。
「BMW TEAM Studie」が出場するGT4クラスは、たくさんのチームサポーターが見守る中、81号車(木下隆之/砂子塾長組)が2位以下のすべてを周回遅れにする快走を見せて圧勝。練習走行、予選、決勝とすべてをトップで締める完璧なレース運びでした。後日行われた「レース2」では、惜しくもレース1のポディウムを逃した 「GruppeM Racing Team」メルセデスAMG GT3 999号車がチームメイトの888号車と総合ワンツーフィニッシュ。そしてGT4クラスは「BMW TEAM Studie」81号車がレース1同様、2位以下を周回遅れにする圧勝ぶりを見せました。
- 表彰式では木下選手が優勝の嬉しさからか大暴れ(笑)
- 左上:ファンにキャップをプレゼントしようと投げたらフェンスに引っかかってしまった瞬間
左下:2位3位の賞金を取り上げてしまう木下選手と砂子選手
右下:さり気なく木下選手が砂子選手にシャンパンをダバーッ!
「路面剥がれ」により、コースレイアウトが変更に
- 派手に砂に乗っかってしまったアウディR8 LMS GT3の5号車。後続車は「ひえ〜!」
今回のレースウィーク直前に「ダンロップコーナー」内側の路面の剥がれが発見され、いつも大きなレースでは使われないショートカットコースを急遽使用することに。そのため、普段は低速セクションのダンロップコーナーが一変して、「中高速カーブ+跳ね」というエキサイティングなコーナーに変貌しました。
- コース内側にも砂が積もっているので横並びも非常にリスキー!
コース変更の影響は大きく、練習走行から決勝を通じてコースアウトが多発。さらにその先の「13コーナー」へのスピードの“のり”が高くなるので、普段の富士スピードウェイに走り慣れているドライバーほど難しいレースになったのではと推測されます。
- 次のレースに向けてオフィシャル総出でコースの大掃除(汗)
おまけ、ピット裏にはランボルギーニが大集合!
- (左上:チェンテナリオロードスター 右上:スーパートロフェオ用の「ウラカン・ペルフォルマンテ」セーフティーカー)
今回のレースは、冒頭でお伝えしたように「ザ・ワンメイクレース祭り 2018 富士 SUMMER」の併催イベントとして行われたもの。この日はほかにも、「ランボルギーニ・ウラカン スーパートロフェオEVO」のワンメイクレースが開催されていました。そのため、ピット裏にはカウンタックから最新のアヴェンタドールSまで、ランボルギーニがずらり!
- ランボルギーニ・ウラカン スーパートロフェオEVO。お値段は3111万円と意外とリーズナブル?
さらにピット裏の奥には、隠れるようにランボルギーニの創業者「フェルッチオ・ランボルギーニ」生誕100周年を記念した世界限定20台スペシャルモデル「チェンテナリオロードスター」が展示されていました。スーパーカー好きには、最高の週末になったのではないでしょうか。
2018年シーズンのブランパンGTシリーズ・アジアは、残すところ中国の2戦のみで日本国内では行われませんが、欧州で行われるブランパンGTシリーズ エンデュランスカップ/スプリントカップと併せて、ぜひチェックしてみてください。人気急上昇の理由がきっとわかりますよ!
(取材・文・写真:クリハラジュン 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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