ロードスターで売る石焼き芋「ロド芋」に密着! このクルマにしたワケとは!?

ファッション性はもちろん、実用性もこだわりたいクルマ選び。例えば、通勤が主目的ならばハイブリッドカーやコンパクトカーが良さそうだし、アウトドアや旅行にだったらミニバンやステーションワゴンがいいかもしれません。

では、焼き芋屋さんを営むとしたら……? もう、軽トラ1択な気がするのですが、大胆にも真っ赤なオープンカーで営業する焼き芋屋さんが存在する模様。

なんだい、こりゃ! よく見ると「焼きいも」と書かれた提灯がぶら下がってるし、間違いなく焼き芋屋さんです。
なんだい、こりゃ! よく見ると「焼きいも」と書かれた提灯がぶら下がってるし、間違いなく焼き芋屋さんです。

この屋台(?)の店名は「えるろこ」で、通称「ロド芋」と呼ばれているそう。なぜそんな通り名かと言うと、マツダ・ロードスターの3代目モデルNC型で焼き芋を売ってるから。ロードスターが売るお芋、略して「ロド芋」です。

ロードスターだと焼き芋屋くらいしかできなかった

まず聞きたいのは、どうしてロードスターなのか? ということ。店主の井上昌さんに伺うと、彼は笑顔で即答しました。

「単純に、面白そうだなと(笑)」

このロードスターは焼き芋屋さん用に購入したのではなく、2年前から井上さんの愛車でした。そして、ご本人が大の焼き芋好きだった。加えて、ある出来事が井上さんの背中を押します。

「『焼き芋屋をやってみたい』と言う友人がいて、僕が『こんな風にやってみたら?』ってアドバイスをしていたら、いつの間にか自分の車に焼き芋屋のパーツが付いてました。『俺がやっちゃおう!』みたいな(笑)」

他にも「自動車オーナーのオフ会に参加したいが、ハードルが高い。ならば、おいしいものを作り自分で集める方向へ力を注ごう!」と決意するなど、様々な動機が「ロド芋」オープンのきっかけになっています。

ただ、人を集めるだけなら焼き芋に限定する必要はない。事実、当初は焼き芋以外の飲食販売も想定していました。

「焼き鳥とか、お酒を一緒に飲めるお店もやりたかったんですけど、法律的にそれはできないんです。そもそも、お酒とクルマって相性が良くないですし(苦笑)。カフェとかもやりたいんですけど、水回りの問題があって厳しい」

それらに比べ、焼き芋屋さんは断然参入がしやすいとのこと。

「営業許可をとる必要がないんです。焼き芋だけでなく、竿竹屋さんや野菜を移動販売している方とかも、一切いりません」

その辺、もうちょっと詳しく教えてください。

「焼き芋屋って、食品を販売するんですけど“調理”じゃないんです。加熱するだけなので。そうなると保健所の適応外になる。許可が何もいらなくなります。パッと思いつき、素人がパッとやりやすかったんですね」

ロードスターであることのメリットはない

う~ん、見れば見るほどにカッコいい焼き芋屋さん! いや、カッコいいことは十二分にわかりました。でも、実用性はどうなのか? 軽トラじゃなくロードスターで営業することのメリットについて伺ってみました。

「メリットですか? メリット……ないですね(笑)。狭いですし」

特に井上さんが苦慮しているのは、ロードスターの小ささです。

「焼き芋以外の食品、例えばお好み焼きを扱おうと思ったこともありました。でも、軽トラだったら幅があるのでちゃんと調理できるんですけど、ロードスターは幅がなく、保健所に持って行っても『この車じゃ無理だから』と門前払いをされてしまいました。だから、焼き芋しかないっていう(笑)。ほかのメニューをどうしても出せません」

反対に、ロードスターであることのデメリットは?

「いっぱいあります(笑)。狭い、うるさい、天候に左右される、無駄に目立って視線が痛い。道行く人からの視線が、やっぱり痛いんですよ。慣れるだろうと思ってたけど、意外に慣れないものですね(笑)。芸能人ってすごいな! って思います」

私もさっきから気になってました。通る人通る人がロードスターを撮りまくるんです。

でも、しょうがない。どう考えても“らしくない”クルマで焼き芋を売ってるんだから。

そう、ロードスターはらしくないし向いてない。だから、井上さんは若干の手を加えています。焼き芋屋仕様にカスタマイズしたのです。まず注目は、この焼き台。なんと、お友だちの手作りだそうですよ!

「下の部分は薪ストーブで、上を新しく造りました。結構、雑なんですよ。隙間があったり、無駄なところに穴が空いてたり(笑)」

焼き芋台の中を覗くと、当たり前だけど火が燃え盛ってます。ロードスターの上にこんなファイヤーが!

「車幅からはみ出ず、高さ3.8mまでなら普通の荷物と見なされて、これもその扱いです。まだまだ、余裕はありますね」

手作りだけに、全てが規格外。だって、軽トラに積むような普通の焼き台はこの約3倍ほどの幅があるんです。でもロド芋の焼き台は、それより全然小っちゃい。そんな特製品を、自作のキャリア(荷台)に乗っけます。
そして、最も手こずったのは「ヒッチメンバー」なるパーツ。要するに、牽引用フックです。

「こんな車両にヒッチメンバーを付けたことがある職人さんはいないんです。専門店に行っても門前払いの連続で、20~30軒くらいお店を回りやっと見つけました。『保証もないし、すごい高く取るけど大丈夫?』って言われ、実際そこでかなりかかりましたね(笑)」

でも、20~30軒回った甲斐はある。このヒッチメンバー、なんと100kgの重量にも耐えられるそうですよ!

ただ、出ていくものも大きかった模様……。

「なんだかんだで、改造にかかった費用は合計50万円くらいです」

みるみるうちにできる行列

そろそろ準備が整い、いよいよお店がオープンします。

みるみるうちに、列ができる!

もちろん、筆者も1本(500円)買ってみました!

これが、甘い。めっちゃ甘い! お芋からは蜜が垂れてるし、この蜜にも極上の甘みが含まれてるわけで、それをズズッとすすると昇天しそうなおいしさ!

このおいしいお芋、品種は「紅はるか」です。

「お店は今年の1月2日からオープンしているんですが、開店当初と比べ味はだいぶ変わりました。当時は品種もまだ定まっておらず、あの頃は『金時』でした。どれくらいの時間を焼けばいいのかもわからず、生焼けの状態でお客さんに出したりもしましたね……(苦笑)」

そこから1日4~5本を食べるほど研究を重ね、ようやくおいしい焼き方へと井上さんはたどり着きました。

「コツは、焼く温度を抑えめにしてじっくり。40分~1時間くらいかけ、100℃に近づけていくとすごく甘くなります。今売ってる焼き芋はおいしいですよ!」

今売ってる焼き芋はおいしいけれど、オープン当初は生焼けだった。そしてもう一つ、同店には失敗談があります。

「なんか、すごい大きいお芋を買っちゃったんです(苦笑)。それこそペットボトルくらいの芋を焼き台に乗せたんですけど、3時間かけても全然焼けなくて。その間は、来てくれたお客さんを3時間待たせっ放しの状態(苦笑)。周囲にスポーツカーがどんどん溜まっていきましたね……」

お客さんの多くはクルマ好き

そうなんです。このお店には、お客さんが続々とスポーツカーでやってくる。井上さんと同じ人種が「ロド芋」には集まります。例えば、あるカップル客に話を聞くと、2人はロードスターも焼き芋も両方好きで常連になったとのこと。

「昨日も来ました。私も彼氏もクルマ好きです。焼き芋の味はやっぱりおいしくなってきていますね! やみつきになる味というか」(カップルの彼女さん)

時には「僕もNC1のこの型のこの色を持ってたんですよ!」とうれしそうに駆け寄ってくるお客さんもいたし。

「色んなジャンルのクルマ好きの方が来ます。バイク好きの方も来ますよ。あと、情報をTwitterで発信しているので、一番遠い常連の方で北海道からのお客さんもいます。北海道の方なのに、もう3~4回来てるんです。かなりのハイペースですよね(笑)」

もちろん、井上さん自身もクルマ好きの本分を失ってない。日常では、このロードスターでガンガン走るそうですよ!

「このまま、焼き芋台を外した状態で乗ってます。結構、盗撮されますけどね(苦笑)。スーパーで『何、これ?』って、おばさんに話しかけられたりもします」

そんな「ロド芋」は、毎週金土日の夜に横浜のどこかで焼き芋を販売中。出店場所や開始時間についてはTwitterアカウント「@EL_Loco2018」で随時発信されるので、気になる方は要チェックです。

「一日20kgくらいの焼き芋を4~5時間でさばきます。だいたい22時くらいまでの営業なんですが、本当は売り切れるまでか、もしくは自分が飽きるまでです(笑)」

最後に、お店の将来についてお聞きしましょう。「ロド芋」をこうしていきたい! という目標はございますか?

「サーキットで販売をしてみたいですね。すでに色んなイベントからお誘いは受けているんですけど、どうしようかな……。やったら、話題性はありますかね?」

あるに決まってます。サーキットでなぜかロードスターが焼き芋を販売、そんな日がいつか来ることを待ち続けますよ!

(取材・文:寺西ジャジューカ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)

[ガズー編集部]

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