その歴史は明治時代から! 一般道の街路樹はどうやって選ばれている?
桜やケヤキ、イチョウなど四季折々でドライバーの目を楽しませてくれる一般道の街路樹は、場所によって植えられている種類がさまざまです。どんな基準で選ばれているのかご存知でしょうか。
さらに、街路樹には景観や排気ガスの緩和などの役割がありますが、他にもたくさんの役割があるんです。
そこで、街路樹の選定基準や役割、その歴史などについて、東京都建設局公園緑地部 計画課長の根来千秋さんにお伺いしました。
意外な役割も! 街路樹はそもそもなぜ植えられているの?
一般道には必ずと言っていいほど植えられている街路樹。そもそもどんな理由で植えられているのでしょうか。
「街路樹には景観を向上させる役割や、クルマの排気ガス、騒音などを緩和させる役割、さらには夏の強い日差しを遮断する役割など沿道の環境を良好に保つことを目的に植えられています」と根来さん。
他にも、「街路樹があることで道の曲がり方などが分かりやすくなるため、ドライバーの視線誘導にも役立っている」と言います。
さらに、こうした日常の環境を保つだけではなく、災害時にも役割があるのだそうです。
「大地震などの災害が起こった時、建物が道路上へ倒壊するのを防いだり、火事の延焼を食い止めたりする役割もあるんです。阪神淡路大震災の時には、瓦礫の道路上への流入を街路樹が防いだため、救助や輸送活動がスムーズに進んだという報告もあります」
秋に気になる匂い……イチョウ並木が多い理由とは?
ドライバーだけでなく、歩行者のことも考えて植えられている街路樹ですが、こんなにたくさんの理由があるとは驚きです。
また、街路樹は道路によって植えられている種類がさまざまですが、どんな基準で選んでいるのかをお伺いしたところ、「街路樹を植える枡の大きさや、道路の幅員や沿道の利用状況など環境特性を鑑みながら地元住民の意見を踏まえて最適な樹種を選択しています」とのことでした。
しかし、特にこの季節に気になるのはイチョウ並木。落ち葉が道路へ敷き詰められた様はとても綺麗なのですが、他の木々と違って実が放つ匂いがかなり強いうえ、美しい落ち葉も掃除が大変そう。街路樹に適さないのではないかという疑問が浮かびます。その一方で、都内では名所と呼ばれるイチョウ並木が数多いのも事実。なぜ街路樹にイチョウが選ばれるのでしょうか。
「都内ではイチョウ並木の黄葉や落ち葉のじゅうたんを楽しみにされている人も多く、代表的な街路樹のひとつで、都道ではイチョウが最も多いというデータ(※2018年4月1日時点)もあります。また、イチョウの葉は水分が多く油分が少ないため耐火性が高く、火災の延焼を防止する効果が期待されて選択されています。しかし、一方では、イチョウが大木になること、落ち葉の掃除などの維持管理に手間がかかってしまうことから、最近ではあまり植えられなくなっているのも事実ですね」
ちなみに、イチョウには雌雄の区別があり、匂いのもととなる実をつけるのは雌のイチョウのみ。それなら、雄のイチョウを植えれば匂いはしなくなるのでは…?とお伺いしたところ、「イチョウの雌雄は区別がつきにくいため、街路樹として植栽される時に、雄のみを選んで植えるということは非常に難しいことなんです」とのことでした。
都内で一番古い街路樹はどこにある? 一般道の街路樹の歴史
日本で本格的な道路整備が始まったのは明治時代です。それでは、現在当たり前のように植えられている街路樹は、都道ではいつ頃から植えられるようになったのでしょうか。
「地方では古くから街道や寺社の参道などを対象として樹木が植えられていました。市街の道路に街路樹が導入されるようになったのは明治以降ですね」と根来さん。
東京で初めて植栽されたのは明治6年。銀座の煉瓦通りにある歩道へ桜とクロマツが植えられたそう。銀座といえば柳というイメージがありますが、実際に植えられたのはそれ以降のこと。
さらに、現在では2020年のオリンピックを目指して、新たにカツラの植栽を始めています。ハートの形をした葉が愛らしいカツラは紅葉も楽しめる木ですから、植栽の完了が待ち遠しいですね。
ちなみに、街路樹はどんな方法で植栽されるのでしょうか。
「植栽する樹木は、植えられる道路の環境特性を考慮して選定をします。環境に適応するよう健全に育成する可能性が高い約5メートルの若木を植栽して、約10メートルまで生育するのが一般的ですね」
最後に、もしも一般道で倒木した木を見かけたらどうすればいいのか、対処方法も教えていただきました。
「道路は国道、都道府県道、区市町村道などでそれぞれ管轄が変わりますので、倒木のある道路がどこに該当するのかで連絡先も変わります。ですから、該当する管轄への連絡がベストなのですが、分からない場合は国土交通省の『道路緊急ダイヤル』へ連絡するのかいいかと思います」
道路緊急ダイヤルは、道路の損傷や落下物などさまざまな道路の異状を24時間受け付けています。番号は「#9910」(無料)です。
(※走行中の通話は禁止されているので、安全な場所へ停車してからかけてください)
私たちの目を楽しませてくれるだけではなく、災害時などさまざまな場面で役割を担っている街路樹。今回は都道に関してのみでしたが、日本にはたくさんの街路樹があり、その土地ごとに名所と呼ばれる道路も多数存在します。
ちょっとしたドライブや旅行などで、街路樹巡りをしてみるのもいいかもしれませんね。しかし、脇見運転は事故のもとですから、運転手は十分に気をつけるか、停車して景色を楽しむようにしましょう!
(取材・文:ヤマウチカズヨ 編集:ミノシマタカコ+ノオト)
<取材協力>
東京都建設局(http://www.kensetsu.metro.tokyo.jp/)
[ガズー編集部]
あわせて読みたい!
最新ニュース
-
-
気付いた時にはパンクする!? 知らないと損するラジエーター選びの新常識と失敗しないポイント~カスタムHOW TO~
2024.11.30
-
-
-
スバル『WRX』の高性能モデル「tS」、2025年初頭より米国で発売へ
2024.11.30
-
-
-
マツダ『CX-5』など人気の4モデルに新機種、ブラックやレザー仕様など…12月25日発売へ
2024.11.30
-
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-
-
-
レクサス、日本の伝統工芸に現代技術を融合…アート作品展開催中
2024.11.29
-
最新ニュース
-
-
気付いた時にはパンクする!? 知らないと損するラジエーター選びの新常識と失敗しないポイント~カスタムHOW TO~
2024.11.30
-
-
-
スバル『WRX』の高性能モデル「tS」、2025年初頭より米国で発売へ
2024.11.30
-
-
-
マツダ『CX-5』など人気の4モデルに新機種、ブラックやレザー仕様など…12月25日発売へ
2024.11.30
-
-
-
2倍の速さで自動駐車! メルセデスベンツのパーキングアシストが性能向上
2024.11.29
-
-
-
「超イケてる!」ホンダの本格SUV『パスポート』発表に日本導入を期待する声
2024.11.29
-
-
-
BMW『X3』新型はマイルドHV、Mパフォーマンスも…価格は798万~998万円
2024.11.29
-