ナイジェル・マンセルが乗ったマシンも! ホンダの第2期F1挑戦に向けて技術を培ったF2マシンたち
現在、パワーユニットサプライヤーとしてF1に参戦中のホンダ。これまでに3度、F1に参戦しています。その中で一番強く印象に残っているのは、エンジンサプライヤーとしてアイルトン・セナやアラン・プロストらとチャンピオンを獲得し、通算で69勝をあげた第2期ではないでしょうか。
F1史上、空前の強さを見せつけた第2期のホンダエンジン。その根幹となる技術はF2で磨かれ、確立したものでした。現在、ツインリングもてぎのホンダコレクションホールでは、ホンダエンジンを搭載したF2マシンを取り上げた企画展「HONDA FORMULA2 ~10年後の再始動~」を催しています。
F2ってどんなレース?
F2は正式には「フォーミュラ2(Formula2)」と呼称する、国際自動車連盟(FIA)が主催する自動車レースのカテゴリのひとつです。最高峰としてF1(フォーミュラ1)があり、F2はその下に位置します。
F2はさまざまな要因により、幾度も廃止と復活を繰り返しています。2017年にGP2の名称を変更し、レギュレーションを引き継いだのが、現在ヨーロッパで開催されるF2です。かつて日本でも、ヨーロッパF2規格で全日本F2選手権を開催していました。現在、開催されるスーパーフォーミュラは、全日本F2選手権の流れを汲んでいます。
各F2マシンが持つストーリーに注目して欲しい
「HONDA FORMULA2 ~10年後の再始動~」では、普段は展示されていない4台のヨーロッパF2マシンと、2台の全日本F2選手権マシン。あとを継いだ国際F3000マシンとF1マシンをそれぞれ1台ずつ展示しています。
本企画展を開催した経緯と見どころを、ホンダコレクションホール課長代理の飯田哲也さんにうかがうと、「F2をもっと知って欲しかったというのが第一にあります。F1にエンジンサプライヤーとして参戦した第2期ホンダは、とても有名です。しかし、その華々しい活躍は、先んじて行われたヨーロッパF2や全日本F2選手権への挑戦と試行錯誤があってこそ。この流れと、それぞれのマシンの持つストーリーを知っていただきたく本企画展を開催しました」とのことでした。
- ホンダコレクションホール 飯田哲也さん
それでは歴史的なマシンの数々を見ていきましょう。
■ブラバム ホンダ BT18
ホンダエンジンを搭載したブラバムチームのF2マシン「ブラバム ホンダ BT18」。このマシンは1966年、開幕から11連勝を達成しています。このブラバムと組んだシリーズは、F1風にいえば第1期。常設展には前身モデルとなる『BT16』も展示されています。
■ラルト ホンダ RH-6-80
1970年のマスキー法(アメリカで法改正された大気浄化法)に注力するため、ホンダはF1とF2のそれぞれから撤退。そして10年後の1980年より、ヨーロッパF2へのエンジン供給を再開します。この「ラルト ホンダ RH-6-80」は、第2期の最初のマシン。のちにF1チャンピオンとなったナイジェル・マンセルもラルトに起用されたため、このマシンに乗ったそうです。
■ラルト ホンダ RH-6-81
1981年のシリーズチャンピオンを獲得した、「ラルト ホンダ RH-6-81」。このマシンはシーズン当初、300PSを発揮したのですが、吸気に難があり、改良。馬力は30PSも落ちたそうですが、サーキットでのラップタイムは1秒も上がったとか。特性や出力に対するホンダの考え方が、ここで大きく変わったとされています。
■スピリット・ホンダ201
1983年に全日本F2選手権のシリーズチャンピオンを獲得したマシン。このシャーシは、82年にF1で使用されていたものが流用されており、アルミニウムによるモノコック構造(応力外皮構造)という、当時としては先進的な作りとなっています。「隣の『ラルト ホンダ RH-6-81』と比べると、作りが全然違うのが分かっていただけるのでは?」と飯田さん。
■ラルト ホンダ RH-6-84
「ラルト ホンダ RH-6-84」は、1983年から1984年にかけてのヨーロッパF2で12連勝を達成! 圧倒的な強さでシリーズチャンピオンに輝いたマシンです。その特徴は、ウィングカーであること。
飯田さんは、「後ろから見てもらうと分かりやすいのですが、これまでのシャーシと比べて下面の曲線が大きく、地面に張り付く空気の流れを意識した、いわゆるウィングカーになっています。ウィングカーは、強力なダウンフォースが得られる反面、なんらかの拍子で空気の流れが狂うとダウンフォースが失われ、車体が舞い上がる危険性をはらんでいました。F1や全日本F2選手権でも大きな事故が多発したため、この年以降、ヨーロッパF2では過度な空力特性を持ったシャーシが禁じられます」と教えてくれました。
■マーチ ホンダ 86J
事実上、全日本F2選手権最後の年となった1986年に、中嶋悟選手のドライビングでシリーズチャンピオンを獲得したのが「マーチ ホンダ 86J」。後ろから見ると、車体底部のベンチュリー構造を規制するため、フラットボトムになっていることがわかります。
コクピットを覗くと、タコメーター(回転計)が下向きに設置されていました。これは設置ミスではなく、ドライバーが見やすいように配置したためだそう。
■ラルト ホンダ RT20
こちらの「ラルト ホンダ RT20」は、国際F3000規格のものですが、実質的にヨーロッパF2を継いでいるため展示しているそう。F2規格のシャーシに過去のF1規格のエンジンを流用して搭載しており、スポット参戦の形で中嶋悟選手もドライブしました。
■ウイリアムズ ホンダ FW10
ホンダはヨーロッパF2や全日本F2選手権で得たノウハウを元に、1983年よりエンジンサプライヤーとしてF1に復帰します。この「ウイリアムズ ホンダ FW10」は、1985年のF1マシンです。「ナイジェル・マンセルがドライブした第2期の初期マシンとして展示しました」と飯田さんは話します。
■ブラバム ホンダ BT18、マーチ ホンダ 812、ラルト ホンダ RH-6-84
「ブラバム ホンダ BT18」「マーチ ホンダ 812」「ラルト ホンダ RH-6-84」の3台は、常設展示の方に展示されているマシン。ホンダコレクションホールを訪れたなら、ぜひ見ておきたいマシンです。
「HONDA FORMULA2 ~10年後の再始動~」は9月11日(水)まで
ホンダコレクションホールでは一日に数度、ガイドツアーを行っており、「HONDA FORMULA2 ~10年後の再始動~」の開催中は、この企画展用のガイドツアーも行っています。もしF2マシンのことで気になることがあったら、ガイドツアーにてスタッフに聞くと教えてもらえるそうです。何時にガイドツアーが始まるのかは、公式サイトに開催されている「ホンダコレクションホールスケジュール」にて確認できます。
企画展「HONDA FORMULA2 ~10年後の再始動~」の開催は2019年9月11日(水)まで。これまでF1は知っていたけれど、F2のことはよく知らなかったという方は、この機会に足を運んではいかがでしょうか?
(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
ツインリンクもてぎホンダコレクションホール
https://www.twinring.jp/collection-hall/
[ガズー編集部]
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