【初心者向け】似ている競技「ラリー」と「ダートラ」の違いはなに?前編 ~競技の特徴と車両、ドライバーの資質~
- 画像提供:平塚忠博様
舗装されたサーキットではなく、主に不整地を走行する自動車競技、ラリーとダートトライアル(以下:ダートラ)。一見、同じような改造が施されたクルマで同じようなコースを走行しているように見えますが、この2つの競技にはどんな違いがあるのでしょうか?
JAFが主催する「全日本ラリー選手権」、および「全日本ダートラ選手権」の両部門でチャンピオンを獲得され、現在は競技車両を制作するショップ「SMaSH(スマッシュ)」の取締役社長を務める平塚忠博さんにお話を伺いました。
速さと耐久力が求められるラリーと、ここ一番の速さが求められるダートラ
競技としてのラリーとダートラの違いを聞いてみると、全日本選手権に限って言えば現状、それほど違いはないとのこと。
「かつてのラリーは『指定された区間を指定された時間で走行し、その正確さを競う』競技で、車両にも必要以上の性能は求められませんでした。ここに『スペシャルステージ(以下:SS)』や『ハイアベレージ区間』といった、速さを競う区間が設定され、車両には「他の競技車両よりも高い性能」が求められるように。現在では全SSの合計で、より早いタイムを出したチームが優勝する、タイムアタック要素の強い競技となっています。公道を走行する区間(リエゾン)では、安全を確保する意味合いもあり、余裕をもって到着できる時間設定がされています」(平塚さん)
リエゾンは、SSと次のSSとへの移動区間という意味合いの強い区間で、競技の勝敗にはほとんど影響を及ぼさないとのこと。タイムアタック要素が強くなっている傾向は、全日本ラリー選手権だけでなく、WRC(FIA世界ラリー選手権)でも同様なのだそうです。
「一方のダートラは『不整地で純粋なスピード競技がしたい』というラリードライバーの要望が出発点となり、ラリーからSSの要素だけを抽出して競技化されたものです。ひとつの大会はひとつのコースで開催され、早いタイムでゴールをしたドライバー(車両)が優勝するという、シンプルなルールで運営されています。リエゾンはありません」(平塚さん)
ラリーからSSのみを抽出したダートラ。しかし、ラリーがSSを中心としたルールに変わったため、両車は近い性質を持つこととなり、競技に参加する選手やスタッフの感覚としては、それほど違いはないそうです。
■ラリーの特徴
・世界中で開催され、FIAのレギュレーションをベースにし、それぞれの国や地域の社会・交通事情を反映したレギュレーションが用いられる
・1~3日かけて実施され、複数の地区に用意されたSSの総合タイムで競われる
・SSからSSへの移動には時間の制限があるが、余裕を持って設定されている
・年に10戦ほど開催される
・ドライバーとコ・ドライバー(ナビゲーター)が搭乗する
■ダートラの特徴
・同様の競技は他国にも存在するが、ダートラ自体は日本で競技化され、レギュレーションも日本独自に発展した
・1つの大会では1つのコースが使用される
・競技は1台ずつの出走で、2回走行し、早い方のタイムが成績として採用され競われる
・年に8~10戦ほど開催される
・ドライバーのみ搭乗する
ドライバーに求められる資質やメンタルの差は?
次にドライバーに求められる資質やメンタルについて聞いてみました。これには違いがあると平塚さんは言います。
「ラリーの場合、ドライバーには最終日のゴールまで安定して走り続けられる資質と、車両のポテンシャルと自身の集中力を100%近くまで引き出してキープし、決して100%に達しないよう抑制できるメンタルが求められます。ダートラの場合、ドライバーにはギリギリまで攻める資質と、スタートからゴールまで車両のポテンシャルと自身の集中力を100%引き出したまま維持できるメンタルが求められます。求められる資質が異なるため、ラリーとダートラの両競技を行っている人でも『どちらかが得意」』という人が、ほとんどです」(平塚さん)
このドライバーに求められる資質やメンタルは、そのまま競技車両に求められる性能に繋がります。
- 画像提供:平塚忠博様
それぞれの車両に求められる方向性
ラリーとダートラはどちらも市販車をベースとし、不整地を速く走れるよう改造やセッティングが施されますが、その方向性は逆を向いています。
「ラリー車両は、最終日のゴールまで安定して走行できる耐久性と、ドライバーやコ・ドライバーにかける負担の少なさが求められます。もちろん速さも重要ですが、最終日のゴールまで走りきることこそが絶対の条件です。エンジンやボディも限界まで速さを求める(速さに割り振る)改造はせず、足回りは柔らかくセッティングして操作性を重視します。『セッティングの決まったラリー車両は乗り心地が良い』と言われるのは、このためです。車体を守るアンダーガードも、より丈夫なものを装着します」(平塚さん)
林道や峠道を走行するラリーでは、アクシデントが発生した際、切り立った崖から落下することや、山の斜面を延々と転がり落ちることも……。そのため車両には強固なロールケージや安全装備の装着が義務づけられ、競技前にはきびしくチェックされるそうです。
「ダートラ車両は、究極的にいえば2回の走行に耐えられればいいので、エンジンやボディには限界まで速さを求めた改造とセッティングが施されます。走行場所は安全が確保されたコースで、コースアウトしても崖下に落下するようなことはありません。アクシデント後もすみやかに救出され、すぐに病院に搬送する手はずも整っているので、ラリー車両ほどの安全装備は義務づけられておらず、結果として同じ車両でも軽量で、より速く走れる車両に仕上げられています」(平塚さん)
競技としては同じ方向に進んだ一方で、改造やセッティング、そしてドライバーに求められる要素やメンタルは逆を向いているラリーとダートラ。<後編>では、両競技に出場するためにかかる費用や観戦の違いを中心に解説します。
(取材・文・写真:糸井賢一 編集:木谷宗義+ノオト)
<関連リンク>
SMaSH(JAF内)
http://jaf-sports.jp/shop/detail_000052.htm
[ガズー編集部]
あわせて読みたい!
最新ニュース
-
-
トヨタ、技能五輪で5職種金メダル獲得…4職種で連覇達成
2024.11.26
-
-
-
アウディ史上最強・最速の電動スポーツカー誕生、912馬力の『RS e-tron GT パフォーマンス』
2024.11.26
-
-
-
JAOS、レクサスLXで「BAJA 1000」参戦、過酷なオフロードレース制しクラス優勝
2024.11.25
-
-
-
ワゴン専用になったVW『パサート』、524万8000円で日本発売 PHEVはEV航続142kmに
2024.11.25
-
-
-
VW ティグアン 新型発表、米国はひと回り大きい『タイロン』ベースに…ロサンゼルスモーターショー2024
2024.11.25
-
-
-
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
2024.11.25
-
-
-
エンブレムが立ち上がった! メルセデスベンツ『EQS』が「電気自動車のSクラス」らしく進化 1535万円から
2024.11.25
-
最新ニュース
-
-
トヨタ、技能五輪で5職種金メダル獲得…4職種で連覇達成
2024.11.26
-
-
-
アウディ史上最強・最速の電動スポーツカー誕生、912馬力の『RS e-tron GT パフォーマンス』
2024.11.26
-
-
-
JAOS、レクサスLXで「BAJA 1000」参戦、過酷なオフロードレース制しクラス優勝
2024.11.25
-
-
-
ワゴン専用になったVW『パサート』、524万8000円で日本発売 PHEVはEV航続142kmに
2024.11.25
-
-
-
VW ティグアン 新型発表、米国はひと回り大きい『タイロン』ベースに…ロサンゼルスモーターショー2024
2024.11.25
-
-
-
『危ねぇ知らなかった!』危険回避! 知らないと怖いブレーキパッドの交換タイミング~カスタムHOW TO~
2024.11.25
-