シートベルト内蔵型も! 最新エアバッグ事情
近年、クルマに欠かせない安全装備のひとつがエアバッグでしょう。1981年にメルセデス・ベンツの最上級モデル「Sクラス」に初めて搭載されたことで、本格的に市販車へ採用されるようになりました。日本車では1987年にホンダが発売した「レジェンド」に初採用され、いまでは先進国で販売されるほとんどのクルマに何らかのエアバッグが組み込まれています。
ところで、エアバッグにはどんなタイプがあるのでしょうか?
もっともメジャーなのは、運転席と助手席のエアバッグ。ドライバー用はハンドルの中央部、助手席用はダッシュボードに組み込まれるのが一般的で、前方に備わり前からの衝撃に対してダメージを緩和してくれるので「フロントエアバッグ」と呼ばれることもあります。今では、衝撃の度合いに応じてエアバッグの展開速度を調整するといった高度な制御を行うタイプも存在します。
ごく一部の車種ですが、エアバッグをシートベルトに内蔵したタイプもあります。余談ですが飛行機にもエアバッグ付きのシートベルトを搭載している機体がありますね。
次いで普及が広がっているのは「サイドエアバッグ」や「カーテンエアバッグ」と呼ばれるタイプ。運転席と助手席のフロントエアバッグが前方からの衝撃を緩和するのに対し、こちらは乗員の横(ドア周辺やシートなど)に組み込まれて側面からの衝撃に対応。交差点などで横から衝突された時などに乗員を守ります。
あまり知られていないエアバッグですが、軽自動車にも採用されるなど普及しつつあるのが「ニーエアバッグ」。一般的にハンドルの下あたり(ドライバーの膝付近)に組み込まれ、前方衝突した際に展開。ドライバーの脚を受け止めることで下肢の損傷を防ぐとともに、衝撃で姿勢が崩れるのを防いでシートベルトの効果を高める役割があります。
新しいタイプのエアバッグも登場している
ここからは、市販車に搭載され始めている珍しいエアバッグを紹介していきましょう。
まずはシート座面に組み込まれ、展開すると座面前方が高くなるエアバッグ。「シートクッションエアバッグ」と呼ばれるそれは、ニーエアバッグと同じく前面衝突時に乗員の姿勢を拘束するのが目的。衝突時に身体がシートベルトの下をくぐって前方へ滑り落ちる状況(サブマリン現象と呼ばれます)を防いで乗員を保護するのです。日本車でもトヨタ「IQ」の助手席、レクサス「LS」の助手席側後席(一部仕様)やスバル「レヴォーグ」の助手席に組み込まれるなど、少しずつですが採用されています。
また、フロントシートの後部に組み込まれて前面衝突時に後席乗員を守る「後席エアバッグ」、そして側面衝突時に左右席の間に展開して乗員同士の接触によるダメージを防ぐ「センターエアバッグ」などを搭載する車両も登場。衝突時の乗員へのダメージを軽減できるよう、日々進化しているのです。
歩行者やサイクリストを守るエアバッグもある
クルマに搭載されるエアバッグが守るのは、乗員だけではありません。一部のクルマには「歩行者エアバッグ」と呼ばれる、歩行者との衝突時にボンネット後方へ展開して歩行者の衝撃を和らげるエアバッグも採用されています。エアバッグは、使い方によって歩行者を守ることもできるのです。
車両に組み込まれるエアバッグはどんどん増えていて、たとえばレクサス「LS」ではその数は最大12個(運転席フロント、運転席ニー、助手席フロント、助手席ニー、運転席サイド、助手席サイド、カーテン×2〈左右〉、後席サイド×2〈左右〉、後席シートクッション×2〈左右〉)。さまざまな状況に対応し、乗員を守るように工夫されているのです。
しかし、衝突安全の前提となるのはシートベルト。エアバッグも多くはシートベルト装着を前提として最大の効果を生むように作られているので、エアバッグがついているからといってシートベルトをしなくてもいいということにはなりません。クルマに乗ったらまずはシートベルトを締めることを忘れないでくださいね。
(文:工藤貴宏 写真:レクサス、ホンダ技研工業、メルセデス・ベンツ、SUBARU 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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