ただの「ガラス」ではなかった! フロントガラスの構造・機能がすごい
クルマを運転するとき、かならず視界に入っているのがフロントガラス。ですが、その存在をとくに意識せず運転できているのは、そこに高度な技術がたくさん詰まっているからなのです。フロントガラスの基本構造や機能、それをつくる技術について、AGC株式会社 オートモーティブカンパニー・モビリティ事業開拓室 マーケティンググループの宮川博行さんと黒川みどりさんにお話を伺いました。
フロントガラスに求められる基準や性能は?
クルマの窓ガラスにはさまざまな保安基準が定められています。フロントガラスに関しては、「損傷した場合においても運転者の視野を確保できるもの」および「容易に貫通されないもの」として合わせガラスを使うことが定められています。また運転者の視野をきちんと確保するために、「透明で、運転者の視野を妨げるようなひずみのないもの」および「運転者が交通状況を確認するために必要な視野の範囲に係る部分における可視光線の透過率が70%以上のもの」という安全上の基準があります。
ドライバーが安全に運転するための良好な視界を確保しながら、万が一事故が起きてしまった場合にもできるだけ乗員の安全を確保し、安全に割れるということが、フロントガラスに求められる性能です。
クルマの部位によってガラスは使い分けられている!
1台のクルマにはフロントガラス、ドアガラス、リアガラスなどが取り付けられていますが、部位によって使われるガラスの種類は異なります。
「自動車用安全ガラスは大きく分けて『合わせガラス』と『強化ガラス』の2種類。合わせガラスとは、2枚のガラスの間にPVB(ポリビニルブチラール)でできたプラスチックの中間膜を挟み込み、3層構造にしたガラスのことです。フロントガラスにはこの合わせガラスが採用されています。一方、強化ガラスとは1枚の板ガラスに風冷強化処理を施したもの。主にドアガラスやリアガラスに採用され、割れると粒状になるため乗員がケガしにくいようなつくりになっています」(黒川さん)
合わせガラスにはどんなメリットがある?
フロントガラスに「合わせガラス」が使われることで、得られるメリットは主にふたつ。まず挙げられるのは「安全性」で、2枚のガラスに中間膜を挟み込むことにより、衝撃物の貫通に対して大きな抵抗力を発揮します。飛び石などでフロントガラスにヒビが入った際、その部分を車内から触ってみても貫通していないのは、中間膜が機能しているおかげです。そして、あらゆる衝撃に対しての機能だけでなく、「遮音性」を高めるうえでも合わせガラスは大きな役割を担っています。
静かな車内空間の実現にも一役買う合わせガラス
快適なドライブを楽しむうえで、車外からのノイズは極力シャットアウトしたいもの。合わせガラスは遮音の面でどのような働きがあるのでしょうか?
「ガラスに厚みがあればあるほど、車外のノイズを通しにくくなります。ところが当然ながら、ガラスを厚くする分、車両の重量も重くなってしまいます。合わせガラスは中間膜があることで遮音性を高めることができるのです。とくに遮音性の高い中間膜を使うことで、さらに遮音性を上げることを可能にした合わせガラスも存在します」(宮川さん)
遮音性を高める意味でも中間膜が役立っているわけですね! そして車重の軽減にも恩恵をもたらす中間膜、実に頼もしい存在です。
カーブした形状でも視界を歪ませない「曲げのノウハウ」
フロントガラスをよく見てみると、真っ平らではなく少しカーブしているのがわかります。それでも視界を歪ませないための技術とはどんなものなのでしょうか?
「透明な下敷きを極端に曲げて向こう側を見ると、視界にひずみが出ますよね。フロントガラスも同じような原理ですが、クルマの場合は視界が歪んではなりません。当社にはガラスを曲げる工程の温度をはじめ、過去の経験を蓄積した“曲げのノウハウ”があり、さらにコンピューター上でのシミュレーションを繰り返すことで、ひずみの出ないガラスをつくっています」(宮川さん)
長い年月をかけて高められた技術の結晶がわたしたちの愛車に取り付けられ、快適なドライブを陰で支えてくれているのですね。
透明がゆえにあまり意識されないフロントガラスですが、その構造や製法は奥深いことがわかりました。現在はさまざまな付加価値をもったガラスが数多く開発されているので、クルマのデザインやパワートレインだけでなく、ガラスにも注目してみると面白い世界が広がっているかもしれません。
<取材協力>
AGC株式会社 オートモーティブカンパニー
https://www.agc-automotive.com
(取材・文・写真:吉田奈苗 写真:AGC株式会社オートモーティブカンパニー 編集:奥村みよ+ノオト)
[ガズー編集部]
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