大雪でも欠航させない! 旭川空港を支える農家の除雪隊「WAX WINGS」

北海道の道北に位置する旭川空港では、天候を理由とした欠航がほとんどなく、なんと就航率は99%! 大雪に見舞われることも多い地域での驚くべき就航率を支えている除雪隊「WAX WINGS(ワックスウイングス)」について、空港を運営する北海道エアポート株式会社旭川空港事業所 業務管理課の斉藤奈留美さんに伺いました。

1年間に雪の日が150日以上ある旭川で就航率99%をキープし続けるワケ

旭川空港は北海道内第2の都市である旭川市に隣接する東神楽町にあります。国内線・国際線合わせて年間でおよそ100万人以上が利用する空港ですが、1年のうち平均150日以上もの長い間、雪に覆われています。しかも総降雪量は毎年およそ400cmにも。しかし、それにもかかわらず雪などの天候による欠航はほとんどなく、2015年度から99%の就航率を常にキープし続けています。どんな大雪の日でも飛行機の発着が安全かつスムーズに行われているのは、近隣の農家の皆さんにより結成されている除雪隊の活躍の賜物です。

「旭川空港の除雪隊『WAX WINGS』は、東神楽町、東川町、美瑛町、旭川市の近郊の農家の皆さんをメンバーとして構成されています。WAX WINGSとはキレンジャクという鳥の英語名。旭川市の鳥であるキレンジャクは、冬になると繁殖地から帰ってきて旭川市の木ナナカマドにたくさんとまり、旭川の町を見守っています。市民の皆さんで結成される除雪隊は、冬になると旭川空港に集結します。キレンジャクのように冬の旭川空港の安全を守っているというイメージで命名されました」(斉藤さん)

  • キレンジャクとナナカマド

巨大な「スノースイーパー」で極寒の雪を跳ね飛ばす

雪が降ると、飛行場の運用開始時間の午前8時までには除雪完了させなければなりません。そこで、WAX WINGSは積雪状態を確認の上、夜明け前のまだ暗い午前4時から6時の間で出動します。旭川空港で活躍するのは「スノースイーパー」と呼ばれる幅3.7mの大型除雪機です。極寒の地域特有の結晶の細かい軽い雪を効率よく除雪するため、直径45インチ(114.3cm)の巨大なブラシと2つのブロワ―(送風機)で雪を跳ね飛ばします。

  • 大きな鉄製ブラシとブロワ―で細かな雪も跳ね飛ばす

大きなスノースイーパー5台が長さ2,500m・幅60mの滑走路を、2台が誘導路やエプロンと呼ばれる航空機の駐機場所を除雪していきます。スノースイーパーがずらりと並んで進む姿は圧巻です。

ブラックトップを保つための高い技術とチームワーク

飛行機が安全に離着陸できるよう、黒く舗装面が出ている状態であるブラックトップとなるまで徹底的に除雪は行われます。そのために必要とされるのが熟練の技術とチームワークです。大型の除雪機が連なって行う除雪は、事故と隣り合わせなので細心の注意が必要です。経験の長いメンバーからの技術の継承もしっかりと行われています。

WAX WINGSとして今年で13年目となる狩野勝さん(東神楽町)は、こう話します。

「参加するきっかけは地元の先輩の紹介でした。当初、先輩方の技術の高さとチームワークにただただ圧倒されるばかりでしたが、おかげで高い目標をもつことができました。どんな雪にも負けない技術とチームワークを後輩に伝え、空港関係者から信頼されるチームでありたいとの思いで取り組んでます」(狩野さん)

  • スノースイーパーの車内

どんなに大雪が積もっても、夜明け前から巨大な除雪機を操り、完璧なブラックトップを維持するWAX WINGSの長年培われてきた高い技術と誇りに感服しました。雪国の雪氷対策は、一般道路と高速道路、そして飛行場とさまざまな場面において、携わる皆さんの技術と努力によって支えられています。

 

<取材協力>
北海道エアポート株式会社旭川空港事業所
https://www.hokkaido-airports.co.jp/

(取材・文:わたなべひろみ/写真:北海道エアポート株式会社旭川空港事業所/編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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