何が違うの? 「高速道路」と「自動車道」。2つの呼び名がある理由

クルマで遠くまで出かけるときに便利な、高速道路。高速道路は、道幅を広くカーブを緩やかにするなど、速度を上げても安全に走れるように作られた自動車とバイクだけが通れる道です。信号もないからスムーズに走れ、長距離移動時に時間を節約することができます。

そんな高速道路の総延長は、平成31年3月31日のデータで9021km(国土交通省「道に関する各種データ集」より)。日本の高速道路ネットワークはさらに拡大中で、たとえば関東周辺だと圏央自動車道や北関東自動車道、新東名高速道路、名古屋周辺だと伊勢湾岸道や名古屋第二環状自動車道の全線開通、そして関西方面では新名神高速道路など、次々と新しい高速道路が作られてクルマ移動がより便利になっています。

「高速道路」は「東名」と「名神」しかない

東京から名古屋へ向かう場合、東名(新東名)と中央道の2つのルートがあります。どちらも「高速道路」だと思いがちですが、正式名称を思い浮かべてみれば、東名(新東名)が「東名高速道路」「新東名高速道路」と、“高速道路”であるのに対して、中央道は「中央自動車道」と“自動車道”と、道路の名称が違うことがわかるでしょう。
実は、「高速道路」と呼ばれるものには、「高速道路」と「自動車道」のふたつがあるのです。

日本には、一般的に「高速道路」と呼ばれる道路が約70路線ありますが、驚くことに高速道路(首都高など都市高速道路は除く)は、「東名高速道路」と「名神高速道路」と、それぞれの“新道”となる「東名高速道路」と「新名神高速道路」しかありません。

それ以外の60以上の路線は、すべて「自動車道」なのです。つまり、一般的に高速道路と認識されている道路のほとんどは、正式名称は「高速道路」ではなく「自動車道」というわけ。

では、そのふたつはどう違うのでしょうか?

高速道路と自動車道では制限速度が違う?!

高速道路と自動車道では、「制限速度が違う」という説あります。高速道路の制限速度は一般的に「時速100km」というイメージですが、時速80kmの自動車道も少なくありません。

さらに、東名高速道路や名神高速道路でも、曲がりくねって高低差も大きな山岳区間は時速80km制限となっています。

また、新東名高速道路の一部区間は、制限速度が時速120kmとなりましたが、それは高速道に限ったことではなく東北自動車道でも一部に時速120km区間が存在。「高速道路」と「自動車道」で、制限速度に違いがあるとは言い切れません。

「高速道路」は正式名称ではなかった!

ヒントは、西日本の高速道路を管理するNEXCO(ネクスコ)西日本のウェブサイトにあります。

「名神・新名神高速道路の『高速道路』と、○○自動車道の『自動車道』は、どちらも同じ『高規格幹線道路』のことです。名神・新名神高速道路の正式な法定路線名は、名神高速道路は「高速自動車国道 中央自動車道西宮線」、新名神高速道路は「高速自動車国道 近畿自動車道名古屋神戸線」と言います」(引用:NEXCO西日本のウェブサイト)

なんと、同社が管轄する「名神高速道路」や「新名神高速道路」の正式名称は「高速自動車国道(=自動車道)」だというのです。一般的に「名神高速道路」と呼んでいたのは正式な名称ではなく、“呼び名”だったのですね。

さらにこう続きます

「東名・名神高速道路は、昭和40年に名神高速道路、昭和44年に東名高速道路がそれぞれ全線開通し、日本で最初の高速道路として、また経済発展を担う重要路線として、各方面から注目されてきました。その中で『東名高速』『名神高速」』という通称が広く使用され、一般的に定着して馴染みのある名称となりました。この歴史的な背景を考慮し、『高速道路』はお客さまが最も受け入れやすい道路名称として例外的に採用されたものです」(引用:NEXCO西日本のウェブサイト)

つまり、東名や名神の「高速道路」という呼び名だけが、全国の自動車道のなかでもイレギュラーなものだったのです。次回、東名高速道路や名神高速道路を通るときは、ぜひ思い出してみてください。

ところで、海外ではどう呼ばれるの?

ところで、高速道路は海外ではどう呼ばれるのでしょうか?

日本でよく知られているのは、アメリカの「フリーウェイ」や速度無制限で知られるドイツの「アウトバーン」でしょう。イタリアでは「アウトストラーダ」、フランスでは「オートルート」と呼ばれる高速道路があります。

ちなみにフリーウェイとは「料金がかからない」ではなく、「信号がない」という意味。アメリカの高速道路は一般的に無料ですが、一部の混雑区間のバイパスなどで料金が発生する路線もあります。基幹路線は、「州をつなぐ高速道路」として「インターステートハイウェイ」と呼ばれることも。

英語では、一般的に総称として「Expressway」と呼ばれることが多く、日本の高速道路も英語ではそう表記されています。日本で「高速道路」を指して使われることがある「ハイウェイ」は、英語だと「幹線道路」を意味するニュアンスが強いそうです。

ロングドライブには欠かせない「高速道路」ですが、東名・名神高速は通称名が例外的に名称として使われるなど、その名前にもしっかりと背景があって興味深いですね。

<参考リンク>
国土交通省 道に関する各種データ集
ネクスコ西日本 よくある質問 その他

(文:工藤貴宏 写真:PIXTA 編集:木谷宗義+ノオト)

[ガズー編集部]

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