「軽油」には寒冷地仕様がある! では「ガソリン」は夏と冬で違いはあるの?

積雪地に住む人やウインタースポーツを楽しむ人、仕事でトラックなどを走らせる人なら、ディーゼルエンジンの燃料となる「軽油」に、寒冷地仕様があることを知っているでしょう。
「寒い地域に行くときは、現地で寒冷地仕様の軽油を給油せよ」とよく言いますよね。

でも、「ガソリンに寒冷地仕様がある」とは聞いたことがありません。ガソリンは、夏も冬もまったく同じものが販売されているのでしょうか? ガソリンの気になる話を石油元売の広報さんに聞きました。

軽油に寒冷地仕様があるのは「凍る可能性がある」から

広報さんに聞いたガソリンのことに触れる前に、まずは、なぜ軽油に寒冷地仕様があるのかを、説明しておきましょう。日本国内で販売される軽油は、JIS(日本産業規格)により安全に考慮した決まりがあるからです。

その理由は、寒冷地に対応した軽油ではないと、あまりに低温になると、軽油に含まれるワックス分が分離してシャーベット状になり、凍結してしまう可能性があるからです。

そこで、北海道や東北、関東の山間部などの寒冷地では冬場、大体1~3月に-20℃以下で凝固する「JIS3号」、-30℃以下で凝固する「JIS特3号」という凍結に強い軽油が販売されます。

これが、「寒い地域に行くときは、現地で寒冷地仕様の軽油を給油せよ」と言われる理由。温かい地域で入れた軽油のまま寒冷地に行くと、燃料が凍ってしまう可能性があるというわけです。

ガソリンは凍らない。でも「夏用」「冬用」が存在する!

では、ガソリンはどうでしょうか?

ガソリンが凍る温度(凝固点)は、-100℃と言われていますから、自然環境の中で凍ることはまずありません。しかし、石油元売の広報さんによると「ガソリンに寒冷地仕様はないものの、夏用と冬用が存在している」とのこと。一体、どういうことでしょうか?

「ガソリンは凍結しないので、軽油のように地域によって細かく仕様を変える必要はありません。しかし、気温が異なる夏と冬では、『蒸気圧』を変えています」(石油元売 広報)

「蒸気圧」とは、ガソリンの揮発性を表す指標とのこと。数値が高いほど、揮発性が高い(=蒸発しやすい)そうです。

「ガソリンの揮発性が高すぎると、ベーパーロック(蒸気閉塞)という現象が起き、アイドリングや加速性が不安定になってしまいます。一方、蒸気圧が低すぎると、今度は気温が低い冬場に蒸発しにくくなり、エンジンの始動性が悪化してしまうのです。JISではガソリンの蒸気圧について、冬用の上限値を93kPa、夏用の上限値を65kPaと定めており、各社はその数値内でガソリンを生産しています」(石油元売 広報)

夏用と冬用はいつごろ切り替わるのでしょうか?

「夏用と冬用の切り替え時期は、ガソリンスタンドによって違いますが、大体10月下旬から順次、冬用に変わっていくのが一般的です。冬用から夏用への切り替えは、例年5月ごろですね。とはいえ、軽油のように『凍ってエンジンがかからなくなる』といったことはないので、普段から乗って頻繁に給油している方なら、『夏用にしなきゃ』と気にする必要はありません」(石油元売 広報)

快適なドライブの裏に見えない配慮あり

自動車ユーザーとしては、燃料価格の上限に一喜一憂するぐらいで、その中身まで気にして給油することはまずありませんが、私たちが快適にクルマを運転できる裏には、こうした製油会社による目に見えない配慮があったのですね。

最後にもう一度おさらい。ガソリンには夏用と冬用があるけれど、特に気にせず給油をすればOK。軽油は凍結の可能性があるので、寒冷地に行くときには現地で給油する。この2つを、ぜひ覚えておきましょう!

(取材・文:斎藤雅道 編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[ガズー編集部]

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