「ヤリス」は「ヴィッツ」で「スープラ」は「セリカXX」。では「サムライ」は? 海外と日本で車名の違うクルマ

2020年春にデビューしたトヨタのコンパクトカー「ヤリス」。そんなヤリスは、以前は「ヴィッツ」という車名で販売されていて、フルモデルチェンジを機に「ヤリス」へとネーミングチェンジしたことをご存知の方も多いのではないでしょうか。

実は、海外では従来から「ヴィッツ」ではなく「ヤリス」という名前で販売していました。それが日本でも海外と同じ名前になったというわけです。今回は、そんな“海外と日本で名前の違うクルマ”を集めてみました。

マツダは国内専用の名前から海外と同じ名前に統一

有名なのは、「マツダ3」をはじめとするマツダ車でしょう。「マツダ3」の日本デビューは2019年。それまで「アクセラ」と呼ばれていたモデルが、フルモデルチェンジで名前を変えて「マツダ3」となったのです。実はアクセラは、海外での名称は従来から「マツダ3」でした。名前の変更というよりは、日本も海外向けと統一したということですね。

その後マツダは、「アテンザ」を「マツダ6」へ、「デミオ」を「マツダ2」へとスイッチ。いずれも海外向けと同じ名前です。フルモデルチェンジをきっかけとせず、マイナーチェンジと同時に車名を変更するのは珍しい例といえます。

  • 「アクセラ」は日本でも世界統一車名の「マツダ3」に変更(写真:マツダ)

マツダは「以前は、日本では数字の車名が馴染まなかったので海外とは異なる独自の車名を付けました。しかし、輸入車などで認知されるようになったので、日本でグローバル統一名称としました」と説明しています。

「セリカXX」というクルマは、海外にはなかった!

マツダのように、当初は海外と日本で異なる車名だったものの、あるタイミングで統一された例はいくつかあります。代表的なのはトヨタ「スープラ」。日本では「セリカXX(ダブルエックス)」と呼ばれていましたが、1986年に3代目へのモデルチェンジを機に海外名の「スープラ」へと変更されました。

  • これは2代目モデル。日本では「セリカXX」だったけれど、海外では当初から「スープラ」として販売(写真:トヨタ自動車)

またスバル「アウトバック」は日本では当初「グランドワゴン」だったものが、続いて「ランカスター」となり、現在では世界統一名称の「アウトバック」となりました。2回も名前が変わって最終的に海外向けと同じ呼び名になったクルマは珍しいですね。

  • 日本での名前が2回も変わって、最終的にはグローバルネームである「アウトバック」に(写真:SUBARU)

当時を知る開発者によると「アウトバックは“アウト”に“バック”とネガティブなイメージのある言葉がふたつも並ぶので、日本では違う名前を付けました。しかし、その後“アウトバック”という単語の認知度が高まったので、日本向けも改名した」そうです。

「ジャズ」っていうコンパクトカーの日本名はいったい?

ホンダ車でよく知られているのは「ジャズ」でしょう。コンパクトカーの「フィット」は世界各地で販売していますが、海外では「ジャズ」という名称で展開。

ところでホンダといえば、欧州や北米では「HR-V」という日本人としては懐かしい名前で売っているクルマがありますが、これは日本でいうとどのモデルかイメージできますか? 実は「ヴェゼル」のこと。「コンパクトな都市型のSUV」というのがかつて日本で販売していた「HR-V」との共通点なのかもしれません。

  • 「ヴェゼル」はアメリカや欧州では「HR-V」と呼ばれている(写真:本田技研工業)

「サムライ」や「ショーグン」。あまりにも日本語過ぎる海外名を持つクルマ

「サムライ(侍)」「ショーグン(将軍)」そして「ツル(鶴)」。これらがどんなクルマかイメージできる人は、きっとかなりの事情通でしょう。いずれも現役ではなく過去のモデルかつ一部地域だけの限定ですが、スズキ「ジムニー」を北米で「サムライ」、三菱「パジェロ」をイギリスで「ショーグン」、日産「サニー」にメキシコで「ツル」という名前を付けて売っていたのです。サムライにショーグン、さらにツルとは、なんとも日本っぽい名前ですね。

  • かつてジムニーの一部地域での海外名は「サムライ」。なんとも勇ましい

  • 「ショーグン」とは思い切ったネーミングだが、とても日本らしい(写真:三菱自動車)

輸入車の中にも、日本では名前を変えているモデルが

何を隠そう、輸入車にも「日本だけ名前が違う」というモデルが存在。たとえばルノーの「ルーテシア」は日本以外では「クリオ」、かつて大ヒットしたドラマに使われ大ブレイクしたオペル「ヴィータ」は、日本以外では「コルサ」と呼ばれています。なぜ日本だけ名称が違うのでしょうか?

  • 「ルーテシア」とはフランスの首都であるパリの古い呼び名。日本で言えば「江戸」のようなイメージだ(写真:ルノー)

もしかすると、 「クリオ」や「コルサ」という響きは耳なじみがある人もいるかもしれませんね。それがヒントです。

「クリオ」はかつてのホンダの販売店の名称、「コルサ」はトヨタに同名の車種があるなど、すでに自動車関連で使われていたので“被る”のを回避したというわけです。同様に、現行モデルのシボレー「コルベット」も、海外では「コルベット・スティングレー」と呼ばれます。でも日本で「スティングレー」が使われないのは、日本車に「スティングレー」を名乗るモデルがあるからなのです。

クルマの名前は、そのイメージを左右する重要な要素。それだけにどんな名前にするか、自動車メーカーの人は一生懸命考えます。しかし、社会背景や他車との重複、そしてその地域での言葉の意味やイメージから、日本と海外では異なる名前とすることもあるというわけです。

(文:工藤貴宏 写真:トヨタ自動車、マツダ、SUBARU、本田技研工業、三菱自動車、ルノー 編集:奥村みよ+ノオト)

[ガズー編集部]

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