「マイルドハイブリッド」の仕組みを解説!燃費向上で採用例が増えるワケ
世界初の市販量産ハイブリッドカーである、初代「プリウス」がトヨタから発売されてから23年。いまやハイブリッドカーはごくあたりまえの存在となりました。新車を買うときには、多くの人がハイブリッドカーを検討していることでしょう。
しかし、現在では一口にハイブリッドと言っても、いろいろなタイプがあります。中でも、欧州車を中心に増えているのが「マイルドハイブリッド」と呼ばれるタイプです。では、このマイルドハイブリッド、一体どんなシステムで、何が「マイルド」なのでしょうか? 今回は、このマイルドハイブリッドに注目してみます。
マイルドハイブリッドは、モーターのパワーが控えめ
マイルドハイブリッドを一言で説明すれば、システムがシンプルで、モーターの出力が控えめ(=マイルド)なハイブリッドといえます。たとえば、ハイブリッドカーの代表格といえるプリウスのモーターは最高出力が72psですが、同じクラスで「e-BOXER」と呼ばれるマイルドハイブリッド搭載のスバル「インプレッサ スポーツ」では、モーター最高出力13.6psと控えめ。また、搭載するバッテリーも小さいのが一般的です。
プリウスのような高出力のモーターを積むハイブリッドシステムを、マイルドハイブリッドに対して「ストロングハイブリッド」や「フルハイブリッド」などを呼ぶこともあります。
また、走行の方式も異なります。プリウスを代表とするハイブリッドは、力強いモーターを積んでいるため、エンジンを止めてモーターだけで走ることが可能。しかし、マイルドハイブリッドは一般的に、アクセルオフ時と低速時を除けば、エンジンを止めてモーターだけで走ることはできません。
マイルドハイブリッドのメリットはどこにある?
モーター出力が低く、モーターだけでの走行もあまりできないと聞くと、ハイブリッドシステムとしては劣るように思えるマイルドハイブリッドですが、もちろん“ならでは”のメリットもあります。
最大の魅力は、大きなコストアップなしに燃費を改善できることです。「コストアップ」とはユーザー視点から見れば「車両価格の上昇」と考えていいでしょう。
ハイブリッドシステムの規模によりますが、簡易的なタイプのマイルドハイブリッドを備える車両であれば、ハイブリッドシステムのないクルマに対しての価格上昇が10万円に満たない車種も存在します。それでいて、確実な燃費向上効果があるのが魅力です。
たとえば前出のインプレッサ スポーツの場合、e-BOXER搭載グレード(2.0e-L EyeSight 4WD)とそうでないグレード(STI Sport 4WD)を比較すると、前者のWLTCモード燃費値が15.2km/Lなのに対し、後者は12.4km/L。マイルドハイブリッドシステムは、しっかり燃費向上を果たしています。
燃費向上効果は、単にエンジンを止めてガソリンを節約するだけではありません。発進時など、エンジンが苦手な領域をモーターがアシストすることでエンジンの負担を減らして、燃費をよくするという面もあります。
また、減速時にエネルギーを回収し、そのエネルギーをモーターアシストに使う電気として再利用できるのも、エネルギー効率向上に大きな役割を果たします。
マイルドハイブリッドはどんなクルマに搭載されている?
マイルドハイブリッドという言葉は聞き慣れなくても、すでにマイルドハイブリッドは身近なクルマに搭載されています。たとえば、軽自動車。
いち早く採用したスズキ「ワゴンR」をはじめ、同社の「スペーシア」や「ハスラー」、三菱「eKワゴン」「eKスペース」、そして日産「デイズ」「ルークス」などにも搭載。声高にハイブリッドを謳っていない車種もありますが、普及は進んでいるのです。
登録車では、スズキ「スイフト」や「ソリオ」、日産「セレナ」、スバル「インプレッサ」「XV」「フォレスター」、マツダ「マツダ3」「CX-30」「MX-30」などが採用しています(各車とも一部仕様に搭載)。ハイブリッドだと意識せずに乗っている人も、少なくないでしょう。実際に運転してみても、まったくハイブリッドを感じさせないクルマも少なくありません。
欧州では「48V」と呼ばれるタイプも普及
マイルドハイブリッドは、欧州ではさらに広がりを見せています。
最新のフォルクスワーゲン「ゴルフ」は、日本向けも全グレードがマイルドハイブリッドで、メルセデス・ベンツ「Cクラス」の最新モデルはプラグインハイブリッドもしくはマイルドハイブリッドというバリエーション展開です。
その理由は、車両価格を大きく引き上げることなく、効果的に燃費を向上したいから。マイルドハイブリッドによる燃費向上は、最大で十数パーセントといわれていますが、欧州では燃費規制により、すべてのクルマで平均燃費を上げることを求められているので、車両価格の上昇を抑えつつ燃料を節約できるマイルドハイブリッドを積極的に採用しているのです。
そんな欧州では、「48Vハイブリッド」と呼ばれるタイプが増えているのが、特徴。
これは、一般的な車載電源である12Vに対して、モーター作動電圧を48Vまで上げることで、よりモーターを力強く動かしてエンジンを補ってエネルギー効率を高めることで燃費向上効果を高めようというアイデアです。ただし、電気系統を強化する必要があるので12Vに対して価格は高くなってしまいます。
マイルドハイブリッドは、力強いモーターを組み合わせたフルハイブリッドほど大きな燃費向上は期待できません。しかし、わずかな車両価格アップで確実な燃費向上効果があるので、ユーザーフレンドリーかつバランスのいいシステムともいえます。
(文:工藤貴宏 編集:木谷宗義+ノオト)
[ガズー編集部]
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