「ワイパー」って進化してるの? その歴史と最新事情を聞いた

雨天時の運転で欠かせないのが、ワイパー。視界を確保する安全上、とても重要なパーツのひとつですが、旧車でも新型車でも、その見た目に大きな違いはありません。果たして、ワイパーは進化しているのでしょうか?
長年ワイパーを作り続けているBOSCH(ボッシュ)への取材をもとに、ワイパーの歴史と最新事情をお伝えします。

世界初のワイパーは路面電車の中で発案された

ワイパーは、1903年にメアリー・アンダーソンという女性実業家によって発明されたとされ、特許が取得されました。彼女は、冬のニューヨークで路面電車に乗ったとき、運転手が氷雨によって視界確保に苦労している様子を見て、レバーとゴム製のリップを着けた装置のアイデアスケッチを描きました。

当初のワイパーは今のような電動式ではなく、手動で動かすもので、その後、キャブレターを利用して動くワイパーが登場。これは、エンジンの回転数に応じて、ワイパーの速度が変化するシステムでした。

電動化やウォッシャー…、進化の歴史

ワイパーが電動化したのは、1926年のこと。ボッシュはカーバッテリーの電力を使用して、小型モーターで駆動させるシステムを開発しました。

  • モーターで動くようになったワイパー(写真:BOSCH)

キャブレター式と違ってエンジンに依存しないため、一定速度でワイパーを稼働させられるようになったのが、進化のポイント。以後、電動ワイパーは自動車の標準的な装備となり、その数を増やしていきました。

1959年になると、BOSCHはウインドウシールド・ウォッシャーシステムを開発。これにより、フロントガラスの汚れを取れるようになり、いつでもクリアな視界を確保できるようになりました。そして1960年になると、今日のワイパーの基本形が完成します。「トーナメント型ワイパー」の登場です。

トーナメント型ワイパーとは、文字通りトーナメントのように枝分かれしたフレーム構造を持つワイパーのこと。この構造により、丸みを帯びたフロントガラスの曲面にワイパーゴムをピッタリとフィットさせることが可能となりました。このトーナメント型ワイパーは、現在でも多くのクルマに採用されています。

最新のワイパーは「フラットワイパー」

そして2021年現在、ワイパーの最終進化系とも言えるのが「フラットワイパー」です。

フラットワイパー(フラットワイパーブレード)は2002年にBOSCHが開発したもので、スプリング作用のある素材を軸として採用することで、トーナメント型のように複数の金属フレームを繋げてアーチ型を作らなくても、フロントガラスの曲面にフィットさせることが可能となりました。

また、フラットワイパーはトーナメント型に比べてシンプルな設計で部品点数が少なく、軽量、さらには耐久性の向上も実現しています。また、極寒で凍ってしまっても、金属の関節部分がほとんど無く全体をゴムで覆われているため凍結を直ぐに払い落すことができるため、トーナメント型よりも冬場に強いというメリットも。また、金属部分が錆びてワイピングがガタつく心配がないという点も優れています。

このフラットワイパーも純正採用が進んでいますが、トーナメント型ワイパーを装着する車種もまだまだ少なくありません。しかし、取り付けフックの部分は共通のため、トーナメント型ワイパー装着車もフラットワイパーに交換することができます。

ワイパーの代わりはほかにない

誕生から100年以上と、長い歴史を持つワイパー。いろいろな進化を経て最新のフラットワイパーへと進化を続けてきたわけですが、ワイパーゴムでフロントガラスを拭き上げるという基本的な仕組みは変わっていません。それはフロントガラスをキレイにするメカニズムに、「ワイパー以上に効率的なのものがないから」だそうです。

これまでも風圧や超音波で水滴やゴミを吹き飛ばす方法などが試されてきましたが、確実かつ現在と同等の消費燃費でワイパーと同等以上の性能を持つ仕組みは、実現できていません。ガソリンエンジンの仕組みが変わらないように、これからもワイパーの形が大きく変わることはなさそうです。
とはいえ、ワイパーメーカーの地道な努力によって改良が施され、よりよいワイパーになっていくことでしょう。

(取材・文:西川昇吾/写真:ボッシュ・西川昇吾/編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[ガズー編集部]

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