プロ自動車カメラマンを体験! 本気でモータースポーツを撮影する心構えとは!?

  • 群サイBIGMEETで行われたプロ自動車カメラマン体験

2021年12月18日、群馬サイクルスポーツセンターにて開催された「群馬サイBIGMEET」。イベント内で催された「タバードメディア体験コーナー(以降、タバードメディア)」は、プロ自動車カメラマンを体験しながらクルマの撮影を学べるといったプログラムです。SNSにて活躍するアマチュアカメラマンの間で話題となりました。
プロ自動車カメラマンの西尾タクトさんが講師をつとめた同プログラムは、どのような内容だったのか? 受講生の皆さんに同行し、取材してきました。

講師をつとめる西尾タクトさんってどんな人?

西尾さんは、プロ自動車カメラマンとして自動車雑誌やパーツメーカーのカタログ撮影などで活躍しています。音楽大学院を卒業後、音楽音響業界に身を置いていたキャリアから、音楽イベントの撮影も行っているそうです。
もちろん大のクルマ好きで、かつてはご自身で所有するトヨタ86を競技用に改造し、TGR(トヨタガズーレーシング)ラリーチャレンジに参戦されていました。

気さくな人柄と軽快なトーク力が買われ、2021年よりFIA公式配信番組『WRC+オールライブ』の日本語版実況中継を担当されています。

  • 群サイBIGMEETのプロ自動車カメラマン体験で講師を務めた西尾タクト氏

    2019年、独自にWRCの取材を敢行。その走行技術の高さに感銘を受け、よりラリーを追いかけるようになったそう

  • 群サイBIGMEETのタバードメディア

    同日、西尾さんの撮影した写真。受講生の後ろ姿に、気持ちが引き込まれる(画像提供:西尾さん)

  • 同じく西尾さんの撮影した写真。現場の臨場感や緊迫感までもが伝わってくる(画像提供:西尾さん)

昨年の秋頃、「群サイBIGMEET」を主催する新井大輝(あらいひろき)さんから、イベント撮影の依頼を受けた西尾さん。その際に「写真好きの参加者にも、なにか楽しんでもらえるプログラムをしたい」と提案したのが、タバードメディアのスタートとなりました。

「ラリーカメラマンは、自己の安全確保と競技を邪魔しないという基本を前提に動くこと。モータースポーツは危険が伴うことを理解していただくこと。『タバード(撮影許可証)』を着けることで、ラリーカメラマンとしての意識を持っての撮影体験をしていただくというツアーの開催に至りました」(西尾さん)

大雪で予定が変更になったタバードメディア

「群サイBIGMEET」は開催日当日、突然の大雪に見舞われ、予定していた催しが大幅に変更となりました。もちろんタバードメディアも大きな影響を受けます。当初は敷地内で催されるすべてのプログラムを巡って撮影し、その後「SNSを活用してイベントを盛り上げる」ためのメディアコーナーを実施する予定でした。

しかし開催時間の遅れや積雪による峠コースの移動の困難さにより、思うように事が運ばず、臨機応変な対応を要求されます。

  • 開催時間の遅れから、おした時間の中で座学が行われる。ここで座学が不十分になってしまったことは、西尾さんにとって今後の課題となった

オレンジ色のタバードをまとった西尾さんと受講生は、まず展示エリアを抜けて峠コースに向かいます。ここで「クルマに積もった雪やツララは“その日しか撮れない写真”を撮るための、絶好の小道具です」と、ワンポイント講座。皆さんさっそく展示車両の写真を撮り始めます。

  • 群サイBIGMEETのタバードメディア

    エンジンの熱で溶けた雪が車体から零れてツララをつくる。現場の寒さが伝わるアイテムだ

峠コースはコースラインこそ雪が踏み固められていますが、路肩の雪は積もったまま。受講生は膝まである雪を踏み分け、撮影ポイントへと足を進めます。当初の予定では、おのおの好きな撮影ポイントに移動して撮影を行う予定でした。
ですが時に地吹雪でホワイトアウトしてしまう悪天候とあって、西尾さんに着いていくのがやっとです。結果的に終始、団体での行動となりました。

  • 慣れない雪歩きにより撮影ポイントに着けず、どんどん時間がおしてしまう

参加車両に気を配りながら、やっとの思いで撮影ポイントに到着。受講生もカメラやスマホを構えて、雪煙をあげて疾走する参加車両を待ちます。ここで西尾さんより「クルマをアップで撮影した写真ももちろん格好いいのですが、最近では“どこで何をしているのか”が分かる写真が求められます」とのワンポイント講座が。受講生は西尾さんの言葉をそれぞれで解釈し、撮影場所を工夫するなどしてスタイルに取り入れていました。

  • まるで冷凍庫の中のような気温の中、カメラを構え、絶好のチャンスをじっと待つ

  • タバードメディアに関して、走行枠の参加者からも「カメラを向けられるのはうれしいし、気合いが入る」など、好印象のコメントが寄せられた

  • 積雪により峠コースの外を移動することができないため、特例でコース内の移動が許可された。安全を確認してからダッシュで移動!

午前の部のタバードメディアは、峠コースの撮影のみで終了。最後にメディアの意義と「イベントを盛り上げるため、撮った画像はハッシュタグを付けてSNSに掲載しましょう。ドライバーにも一言、声をかけておくと、皆が気持ちよくイベントを楽しめます」とまとめ、解散になりました。

  • 終了時間もおしていたため、西尾さんはこの後、昼食もとらずに午後の部のミーティングへ向かう

  • 午前の部は晴れ間もみえたが、午後の部は終始、雪の降る中で行われた(画像提供:西尾さん)

ちゃんと安全意識を伝えることが今後の課題

日が傾く頃、「群サイBIGMEET」は閉幕。タバードメディアも午前の部、午後の部を終え、好評のうちにすべてのプログラムは終了しました。受講生と参加者(ドライバー枠、ミーティング枠)との間にSNSを通じた繋がりが生まれるなど、狙った通りの成果が生まれ、企画は成功したかのようにみえますが、西尾さんにとっては課題の多い内容となってしまったそうです。

「はじめてのタバードツアーなのに、いきなりの過酷な雪中行軍となりました。本来はまとまってぞろぞろ歩くのではありません。山長(管理者)からの指示をちゃんと理解して遵守し、危機感を持って行動するよう、しっかり伝えられなかったのが悔やまれます」(西尾さん)

今後の「群サイBIGMEET」にて、引き続きタバードメディアは催される予定です。この記事を見て興味を持った方に向けたコメントをいただけました。

「当ツアーは“人に迷惑をかけないこと”が最低限の約束です。これは、選手・運営・観客・自分の家族など、すべての人に対していえること。モータースポーツは危険を伴うものです。撮影者もともに、死と隣り合わせであることは事実なので、自己責任の書面にもサインをいただいています。ご参加の際は“お客様”ではなく“タバードメディア”であることを意識していただくことが必要です。

それだけに、写真や動画撮影に本気で挑めるチャンスでもあります。リスクを理解した上で安全を確保した場所から撮影できるものは、やはり迫力もあり特別な一枚や動画が撮影できると思います。機会があれば、ぜひご体験いただければと思います」(西尾さん)

「群サイBIGMEET」の開催日や催し物の予定は、Twitterの公式アカウントで告知されます。プロ自動車カメラマンを体験したい人、あるいは西尾さんにクルマ写真の撮り方などを学びたい人は、参加を検討してみてはいかがでしょう。

<関連リンク>
群サイBIGMEET公式アカウント

(取材・文・写真:糸井賢一/編集:奥村みよ+ノオト)

[GAZOO編集部]

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