アイドリングストップ用にハイブリッド用に……いろいろある「バッテリー」の性能や機能の違いは?

  • 群サイBIGMEETで行われたプロ自動車カメラマン体験

その昔、クルマのバッテリーといえば鉛バッテリー、ただひとつでした。ところが現在では、同じ鉛バッテリーでも、「充電制御車用」と記載されている製品や「アイドリングストップ車用」、さらに「ハイブリッド車用」と、さまざまな鉛バッテリーが販売されています。

では、それぞれにどんな違いがあるのでしょうか? 違うバッテリーをつけると問題が起きるのでしょうか?

そんな疑問を国内の新車向けで約7割、補修向けでも約6割ものシェアを誇るバッテリーメーカー、「GSユアサ」の広報担当者にたずねました。

大きく3種類ある鉛バッテリー

大きく、鉛バッテリーの種類を分類すれば、3つに分けることができます。それが「一般ガソリン・エンジン車」、「アイドリングストップ用」、そして「ハイブリッド用」の3種類です。

「一般ガソリン車用は、主にエンジンの始動用として使用されます。充電制御車など燃費向上のための機能が付いた車両が増えてきており、バッテリーの充電時間が短くなっていますので、素早く充電できるクイックチャージ性能が求められています。GSユアサの製品では、電解液や負極活物質の添加剤によりクイックチャージ性能を向上させています」(GSユアサ広報)

充電制御とは、バッテリーの充電が一定以上になったときに、エンジンによる発電を停止する機能のこと。過充電を防ぐだけでなく、走行中に発電をし続けないことで、発電によるエンジンの負担が減って燃費が向上します。しかし、バッテリーを充電する時間は短くなり、それに対応できるよう、バッテリーにクイックチャージ性能が求められるようになっているのです。

では、アイドリングストップ車用は?

「アイドリングストップ車は、さらなる燃費性能改善のため、エンジン停止回数や停止時間の拡大、減速時のアイドリングストップシステム作動、充電時間の短縮など、日々進化し続けていますが、アイドリングストップ中は、バッテリーから電力を供給するため、放電気味の状態で使われる傾向があります。そのため、充電制御車以上に素早く充電できるクイックチャージ性能が求められます」(GSユアサ広報)

つまり、バッテリーの負担はますます大きくなっていて、より高いクイックチャージ性や耐久性(アイドリングストップ寿命性能)が求められているということ。

「GSユアサでは、電解液や負極活物質の添加剤、薄型極板の多枚数化によりクイックチャージ性能をさらに向上させています。また、正極板のグリッド/活物質の耐久性向上、正極活物質の添加剤等により、アイドリングストップ寿命性能を向上させています」(GSユアサ広報)

より短い時間で充電しつつ耐久性能を高めるため、バッテリー内部にあるプラスとマイナスの極板の数を増やし、素材自体の耐久性をアップ。バッテリー内部を満たす電解液に添加剤を加えているというのです。

そして、ハイブリット車の場合、鉛バッテリーの電力は走行には使われず、始動や補機類の駆動用です。そのため、求められる性能も違います。

「ハイブリッド車用鉛バッテリーは、ハイブリッドシステムを起動するための電源である補機用バッテリーとして使用され、後部座席下やトランクルームなど、車室内に搭載されていることが多く、バッテリーから発生するガスを車外に排出できる構造が求められます。GSユアサの製品では、ガスを車外に排出できる一括排気構造を採用しました」(GSユアサ広報)

クルマに使われる鉛バッテリーは、充電中に水の電気分解によって酸素と水素が発生します。これが「ガス」となります。一般的なクルマは、バッテリーをエンジンルームなど密閉されていない場所に置くため、ガスがたまることはありません。しかし、ハイブリッド車の多くは、密閉された場所にバッテリーがあるため、ガスを車外に排出する構造を備えています。

まとめて言えば、一般のガソリン・エンジン車用は「充電制御機能への対応によるクイックチャージ性能」が高められ、アイドリングストップ用は「クイックチャージ性能と耐久性の両方」が高められていることが特徴。そしてハイブリッド車用は、補機用バッテリーと呼ばれ「鉛バッテリーから発生するガスを車外に排出できる構造」になっているのが、他との違いとなります。

  • バッテリーには「一般ガソリンエンジン車」「アイドリングストップ用」「ハイブリッド用」がある

    同じような鉛バッテリーでも、一般ガソリン・エンジン車用とアイドリングストップ用、ハイブリッド車用の補機用では、内容が異なる

3種ある鉛バッテリーを他車種に使うとどうなるの?

では、「一般ガソリン・エンジン車用」「アイドリングストップ用」「ハイブリッドの補機用」を別の車種に使うことはできるのでしょうか?

「一般ガソリン・エンジン車用の鉛バッテリーをアイドリングストップ車に使用することはできません。仮に使用した場合、電池への負担が大きく、寿命が短くなります。また、車両のアイドリングストップ機能が正常に機能しない可能性もあります。ただし、アイドリングストップ用を一般ガソリン用の上位互換として使用することは可能です」(GSユアサ広報)

つまり、一般ガソリン・エンジン車用のバッテリーをアイドリングストップ車に装着することは物理的にできるけど、クルマの調子が悪くなったりバッテリーの寿命が短くなったりするから、メーカーとしては使わないでください、ということでしょう。一方、その逆はありだというようです。

その理由を聞いてみると、「アイドリングストップ車用は一般ガソリン用よりもクイックチャージ性能、耐久性の面で高性能であるため、長寿命が期待できるから」とのこと。

「ハイブリッド車の補機用バッテリーは、あくまでも補機専用です。先にも説明したように、補機用バッテリーは搭載場所が異なり一括排気構造が求められますから、この点でも他のバッテリーとの互換性はありません」(GSユアサ広報)

「アイドリングストップ用」を「一般ガソリン・エンジン車」に使うのはOKで、それ以外はNGのようですが、やはりそれぞれの構造にあったバッテリーを選ぶのが適切なようですね。ちなみにGSユアサ以外のメーカーでも、ハイブリッド車用バッテリーには、ガスを排出する構造が採用されています。

メンテナンスを怠ると最悪の場合……

では、3種類の鉛バッテリーの寿命は、異なるのでしょうか?

「3種類は、それぞれの使用環境に適した設計となっていますが、クルマの使用頻度・走行距離などにより、実際の寿命は異なります。バッテリートラブルは毎年JAFの出動理由No.1で、年間約80万件もあります。突然のトラブルを避けるため、定期的なテスターでの点検と、2~3年での交換をオススメしています」(GSユアサ広報)

鉛バッテリーの種類によって寿命が異なるというよりも、クルマごと、利用状況によって異なるということでしょう。トラブルに遭遇しないためには、定期的な点検と早めの交換が必要ということです。最後に、バッテリーのメンテナンスについてお聞きしました。

「最新型のバッテリーであっても基本的な日常のメンテナンスはこれまでと変わりません。『外観点検』『液量点検』『内部点検』の大きく分けて3つとなります」(GSユアサ広報)

それぞれを説明すると次の通り。

■外観点検
外観の変形、破損、液漏れ、端子の腐食やゆるみがないことを確認する

■液量点検
定期的に規定液量にあるかどうかを点検し、最低液面線(LOWER LEVEL)近くまで減っていれば精製水を補充して、規定液量を保つ。液面線がないバッテリーは、液栓から伸びるスリーブが液面に触れているかどうかで確認する

■内部点検
外観や液面の目視だけでは、バッテリー内部の劣化や充電状態はわからないため、バッテリーテスターや比重計による点検を組み合わせ、バッテリーの正確な状態を把握する

外観の破損や端子の腐食が危険なのはわかりますが、液量の低下も同じように危険なのだそう。

「液量の低下が起こる原因は、バッテリーの電解液が充電により電気分解されて、電解液中の水分が失われるため。液面が低下して極板が露出してしまうと、バッテリーの寿命を縮めるだけでなく、劣化部位でスパークが発生して、最悪の場合、バッテリーの内部に溜まっている水素ガスに引火してしまうこともあります」(GSユアサ広報)

最近のクルマは、バッテリーが見えない場所に設置されていることも増えています。その場合、クルマのユーザーが自分自身でバッテリーを点検するのは非常に困難です。また、テスター類を使う内部点検も、普通の人であれば難しいもの。結局、ディーラーにクルマを持ち込んで、定期的な点検を実施するのがベストになります。

毎日のようにクルマに乗っていても、なかなか目にすることのない鉛バッテリー。しかし、鉛バッテリーは、クルマのエンジン始動をはじめ、ヘッドライトの点灯など、クルマの機能を支える重要な役割を果たしているパーツです。愛車に今、どんな鉛バッテリーが搭載されていて、どんな状態なのかを知っておくことも、安心なカーライフを送るためのひとつではないでしょうか。

(取材・文:鈴木ケンイチ 編集:木谷 宗義type-e+ノオト)

<関連リンク>
GSユアサ
GSユアサ 車用バッテリーの知識
液量点検の参照

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