「サポカー限定免許」も登場。改正道路交通法で免許制度はどう変わった?

2022年5月13日に施行された、改正道路交通法。特に75歳以上、いわゆる後期高齢者の運転免許更新手続きに関して大きな変更があり、話題となりました。
ほかにも大型免許、中型免許、二種免許等の受験資格の緩和や、サポートカー限定免許の導入などが盛り込まれています。

ここではそれぞれの改正が、どのようなものなのかを具体的に説明します。

75歳以上は一定の違反歴で運転技能検査が必要に

75歳以上の運転免許更新手続きには、以下の3点が変更、新設されました。

①認知機能検査の検査方法の変更
②高齢者講習の一元化
③運転技能検査の新設

<①認知機能検査の検査方法の変更>

旧道路交通法(以下、旧法)でも、75歳以上が免許の更新時には認知機能検査を実施していました。その項目は 「時間の見当識」「手がかり再生」「時計描画」の3つでしたが、改正道路交通法で「時計描画」が廃止され、「手がかり再生」と「時間の見当識」の2項目の実施に変更されました。
この認知機能検査は、認知症に関わる医師の診断書を提出することで省くこともできます。

「手がかり再生」は、先に提示された16枚のイラストをもとに、記憶力を検査します。採点には関係のない質問が行われたのち、提示された16枚のイラストの名称を順不同で回答。そのあと簡単な設問と関連したイラストの回答が求められます。

「時間の見当識」は、当日(検査日)の年月や曜日、時間を元に、時間の感覚を検査します。

<②高齢者講習の一元化>

旧法での高齢者講習は3時間講習と2時間講習の2つがあり、認知機能検査の採点結果により、どちらを受けるかが指定されました。改正道路交通法では3時間講習は廃止され、2時間講習に一元化されました。

2時間の講習時間中、30分は適性検査、30分は講義(座学)、1時間は実車指導を行うと定められています。
ただし、運転免許が原動機付き自転車、自動二輪、小型特殊自動車、大型特殊自動車だけの人、および後述する運転技能検査を受けた人は実車指導が免除されるため、講習時間は1時間のみとなります。

<③運転技能検査の新設>

75歳以上で普通自動車免許(原動機付き自転車、自動二輪車、小型特殊自動車、大型特殊自動車だけの免許を除く)を所持し、過去3年以内に一定の交通違反行為歴がある場合は、運転技能検査の受検が義務付けられました。
「一定の交通違反」とは、高齢者を対象とした「いずれ重大事故を起こす可能性が高い交通違反」を指します。

●対象となる一定の交通違反

  • 信号無視
  • 通行区分違反
  • 通行帯違反等
  • 速度超過
  • 横断等禁止違反
  • 踏切不停止等・遮断踏切立入り
  • 交差点右左折方法違反等
  • 交差点安全進行義務違反等
  • 横断歩行者等妨害等
  • 安全運転義務違反
  • 携帯電話使用等

運転技能検査に合格できなくても、免許更新の手続き期限内であれば何度でも検査を受けることができます。しかし、合格できないまま期限を過ぎてしまった場合、免許の更新はできません。

19歳から大型免許、中型免許、第二種免許の取得が可能に

旧法では、中型免許の受験資格は、「20歳以上で普通自動車免許等を2年以上保有(免許停止期間等は含めない)」、大型免許と第二種免許の受験資格は、「21歳以上で普通自動車免許等を3年以上保有(免許停止期間等は含めない)」と定められていました。

これが改正道路交通法により緩和され、大型免許、中型免許、第二種免許のいずれも受験資格特例教習の修了を条件に、「19歳以上、普通自動車免許等を1年以上保有」で受験資格を得られるようになりました。
受験資格特例教習を修了するには、座学講習を7時限以上、技能講習を29時限以上、受ける必要があります。

免許を取得後、本来の免許を取得できる年齢まで(中型免許は20歳、大型免許と第二種免許は21歳)は、「若年運転期間」と指定されます。

若年運転期間中に交通違反を犯し、累積の点数が3点以上(1回の違反で3点を受けた場合は4点以上)に達した人は、若年運転者講習の受講が義務付けられます。
定められた期限内に受講しなかった、あるいは受講しても再度、交通違反の累積点数が一定の基準に達した場合、特殊取得免許は取り消しになります。

サポートカー限定免許の導入

改正道路交通法の施行により、新たに導入されたサポートカー限定免許。その名の通り、運転できるクルマを「サポートカーに限定する」条件を付与した免許を指します。
現在のところサポートカー限定免許は、普通自動車免許にのみ付与が可能。申請により交付されるもので、オートマチック車限定免許のような、教習所等に通って取得するものではありません。

また、中型免許や第二種免許等への付与はできず、一部の条件を自主的に取り消して(返納して)普通自動車免許を取得したのち、あらためてサポートカー限定免許の条件を付与します。

「サポカー」や「セーフティ・サポートカー」ともいわれるサポートカーは、以下の安全運転支援装置が搭載された普通自動車を指します。

●衝突被害軽減ブレーキ(対車両、対歩行者)
車載レーダー等により前方の車両や歩行者を検知し、衝突の可能性がある場合は運転者に対して警報等で警告を行う。さらに衝突の可能性が高い場合には、自動でブレーキが作動する機能

●ペダル踏み間違い時加速抑制装置
発進時やごく低速での走行時、ブレーキペダルと間違えてアクセルペダルを踏み込んだ際、エンジン出力を絞り、加速を抑制する機能

サポートカー限定免許で運転できるクルマは、国土交通大臣より指定を受けたクルマに限られます。後付けで安全運転支援装置を搭載したクルマは対象となりません。
対象サポートカーは警視庁のWebサイトで確認できます。また、ディーラーに相談すれば、そのメーカーの対象サポートカーを教えてくれるはずです。

対象のサポートカーではないクルマを運転すると、免許条件違反として罰せられます。現在、乗っているクルマが非対象車の場合は、サポートカー限定免許へ変更する前に、対象車に乗り替える、あるいは増車して備えておく必要があります。

サポートカー限定免許を解除し、普通自動車免許に戻すには、運転免許試験場等で運転技能の審査を受ける、あるいは教習所で限定解除のための教習を受ける必要があります。申請だけで戻せるものではないので、変更は慎重に行いましょう。

緩和されたところもあれば、厳しくなったところもある改正道路交通法。特に免許の更新を控えた75歳以上の身内の方がいるのならば、念のため期日に余裕を持って認知機能検査や免許更新を行うよう、アドバイスをしてあげましょう。

(文:糸井賢一 編集:木谷宗義 type-e+ノオト)

[GAZOO編集部]

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