「世界に一つだけのボク」 SAPAグルメ名物の『アメリカンドッ君』って知ってる?

SAPAで食べるグルメは、高速道路で出かける楽しみのひとつ。中でも、ドライブの休憩に食べるホットスナックのおいしさはひとしおです。それぞれのSAPAごとに、さまざまな工夫が凝らされたフードが販売されています。

筆者が以前、立ち寄った東名高速道路・鮎沢PAには、一風変わったアメリカンドッグが販売されていました

  • アメリカンドッ君 ※筆者撮影

なんともいえないアンニュイな顔の焼印が押された、アメリカンドッグ。その名も「アメリカンドッ君」です。そのビジュアルに目を惹かれて思わず購入しましたが、味もバツグンで今でも忘れられないSAPAグルメとなりました。

それにしてもこのビジュアル、一体どんないきさつで生まれたのでしょうか? あまりに気になるので、販売会社の株式会社東京ハイウェイ・営業部の木川さんに聞いてみました。

  • ご対応いただいたのは東京ハイウェイ営業部・木川篤司さん

「アメリカンドッ君」って何者?

――それではさっそくお伺いします。「アメリカンドッ君」とはいったいどんなグルメなのでしょう。

木川さん:弊社で手がけている、オリジナルのアメリカンドッグです。粉を練るところから手作りで作っていて、「世界にたった一つだけのボク」をキャッチコピーにして販売しています。弊社は高速道路の維持管理業務と売店運営などをおこなう会社で、特に「アメリカンドッ君」は1972年から続く看板商品です。

――いいキャッチコピーですね。「アメリカンドッ君」は、どこで買えるのでしょうか?

木川さん:関東を中心に展開していて、代表的なところで言うと、

  • 鮎沢PA(上り・下り)
  • 大磯PA(上り)
  • 小田原PA(下り)
  • 平和島PA(上り)
  • 川口ハイウェイオアシス(上り)

など、弊社が運営を手掛けるSAPAですね。特に鮎沢PA(上り・下り)は、「アメリカンドッ君」の特色が出ているのでおすすめです。

  • 鮎沢PA(上り)は壁面にアメリカンドッ君の物語が描かれている

  • 食堂には社員手作りのアメリカンドッ君マスコットも

――そもそも、「アメリカンドッ君」はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか。

木川さん:今のような「アメリカンドッ君」の形になったのは、2006年です。しかし、元々のアメリカンドッグにはけっこうな歴史がありまして、まず前身となったアメリカンドッグのことから、お話ししますね。

2022年10月に惜しまれつつ閉店した東名高速・駒門PA(上り)の店舗で、弊社は1972年からアメリカンドッグを販売していました。私は1982年入社ですが、そのときにはもう販売していたんです。

  • 駒門PA

駒門PAのお店では、水道から富士山の伏流水が出ており、そのおいしさを生かすためにずっと手作りにこだわって作られていました。ですが、なかなか当初は大変で、1日数本しか売れなかったこともあったそうです。それが、「手作りがめずらしい」とマスコミに取り上げられて、一気に売れるようになりました。

それからしばらくして、売れ行きが伸び悩んできたとき、「このまま忘れられるのはさみしいな」と、アメリカンドッグをキャラクターにしようと考えました。それが2006年のことです。

「アメリカンドッ君」と名前を付けたのは私で、顔の焼印のアイデアは部下の女子社員が考えました。みんなで楽しみながら「アメリカンドッ君」を育てていったんですね。ちなみに、高速道路キャラクターではめずらしく曲も出しているんですが、そちらも私の友人にお願いしたものです。Webサイトではマンガも連載しているので、こちらもぜひ読んでいただけたら。

  • HPで連載しているアメリカンドッ君のマンガ(サイトより引用)

――木川さんが「アメリカンドッ君」の生みの親だったんですね! いろいろメディア展開されているのも驚きました。

木川さん:そうなんです。おかげさまでキャラクター化してからの売れ行きは上々で、2009年には年間15万2900本を販売した記録があります。そこからいろいろなメディアにも取り上げていただいて、中でも2009年にテレビの大食い選手権で採用されたことをよく覚えています。参加者のアンジェラ佐藤さんが21本食べてくださいまして、手作りなので作るのが追いつかなかった記憶があります(笑)。

  • 2009年の「大食い選手権」でアメリカンドッ君が食べられている様子

――驚異の新人としてデビューされたときでしたね。「アメリカンドッ君」としてキャラクター化してからさらに人気になったということですね。

木川さん:おかげさまで現在も愛されるキャラクターになっています。以前は催事に出るなど、SAPAの枠を越えて活動していました。また、駒門PA(上り)の手作りアメリカンドッグが話題になったので、それまで冷凍のものを販売していた鮎沢PAなども、2000年代後半から手作りに切り替えました。

「アメリカンドッ君」のおいしさの秘訣は?

  • クリスマスイベントの「アメリカンドッ君」

――以前私も「アメリカンドッ君」をいただいたのですが、普通のアメリカンドッグと違ってふわふわでジューシーで独特のおいしさでした。おいしさの秘訣はなんでしょうか。

木川さん:やはり手作りで素材にもこだわっているからでしょう。粉も店舗で練って寝かせたものを使用していますし、甘めの配合にしているのでソーセージとよく合います。そのソーセージも大ぶりのものを使用し、食べごたえを意識したものです。また、ケーシング(ソーセージの膜)があると揚げたてで食べるとき火傷しやすいので、わざわざ取り除いた特別なものを使っているんです。

――そんな細かい配慮があったのですね。

木川さん:やはり揚げたてが一番おいしいですからね。もし「アメリカンドッ君」を提供されているSAPAに立ち寄った際は、6分〜10分ほどお待ちいただきますが、ぜひ揚げたてを食べていただきたいです。

――ちなみに味のバリエーションはあるのでしょうか。

木川さん:いえ、今はプレーンの「アメリカンドッ君」のみです。昔はストロベリー味だとか、カレー味だとか、顔も変えていろんなバリエーションを出していましたね。やはりプレーンが一番人気だったので、今はひとつに絞っています。ちなみに、2019年には東名高速道路開通50周年記念として、「アメリカンドッ君」の50周年記念限定バージョンを発売しましたよ。

  • 限定発売された「大人の激辛ドッ君」。目がハートになっている

  • 東名高速道路開通50周年記念の、「アメリカンドッ君」限定バージョン。(現在は販売していない)

これからの「アメリカンドッ君」

――今の形の「アメリカンドッ君」が生まれて17年以上が経っていますが、今までお客さんの反応でうれしかったことはありますか?

木川さん:「アメリカンドッ君」をケチャップとマスタードでデコレーションして、SNSに上げてくださっているのを見るとうれしくなりますね。以前にフォトコンテストを開催したこともあるんですが、ちょっとシュールなデコレーションのものもあって(笑)。皆さんが「アメリカンドッ君」をかわいがっているのを見るのが、よろこびです。あと、「アメリカンドッ君」発祥の地でもある駒門PAの店舗が閉店するときは、印象深かったですね。

――どんなことがあったのでしょう?

木川さん:駒門PA(上り)の店舗が閉店するとき、夜19時半になったら店じまいするので、最後に店の外に出て挨拶でもしようかと思っていたんです。誰もいなかったら恥ずかしいなと思いながら外に出たら「アメリカンドッ君」ファンの方がたくさん集まってくれていて、それが一番思い出深いです。「アメリカンドッ君」がいてくれてよかったな、と思います。

  • 駒門PA店舗閉店時のあいさつの様子

  • 閉店後にスタッフで記念撮影

近年では、2012年に新東名高速道路が開通してから交通量が減って、あまり売れ行きがよくなかったのですが、あと2週間で閉店というときに急に売り上げが伸びて、まるで全盛期を思わせるほどすごかったですね。まだまだ「アメリカンドッ君」は皆さまとともにある、と実感しました。

――ありがとうございます。最後に、これから「アメリカンドッ君」を食べてみようという読者に一言お願いします。

木川さん:高速道路グルメは非常にたくさんの種類が出ていますが、アメリカンドッグやソフトクリームといったスナックは定番中の定番です。提供SAPAは限られているのですが、もし立ち寄ることがありましたらぜひ揚げたての「アメリカンドッ君」を召し上がっていただきたいと思います。「アメリカンドッ君」が、ドライブの楽しみのひとつになれば幸いです。

もし立ち寄ったら要チェック!

今回は東京ハイウェイに、高速道路の名物グルメ「アメリカンドッ君」についてお伺いしました。シュールでアンニュイな表情の「アメリカンドッ君」の裏には、長い歴史と、ドライバーによろこんでもらおうという木川さんやスタッフのみなさんの愛情を感じました。

鮎沢PA(上り・下り)、大磯PA(上り)、小田原PA(下り)、平和島PA(上り)、川口ハイウェイオアシス(上り)などを訪れることがあれば要チェック。味も見た目も大満足の逸品ですよ!

<関連リンク>
アメリカンドッ君 Webサイト

<取材協力>
東京ハイウェイ

(取材・文:神田匠/写真:神田匠、東京ハイウェイ/編集:木谷宗義type-e+ノオト)

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