このクルマでこの景色を見ていたのかな… 脇阪寿一引退セレモニー ~LEXUSチャンピオン奪還までの道 vol.6~
SUPER GT第1戦が開催された岡山国際サーキット(岡山県美作市)にて、決勝日4月10日(日)、脇阪寿一氏のSUPER GT GT500クラス引退セレモニーが行われました。
これまで支えて来られた方々、ご両親、ご家族も駆けつける中で、GTアソシエーション主催により行われた引退セレモニー。用意されたクルマは、「エッソウルトラフロースープラ」でした。
セレモニーの前に、パドックに展示してありましたが、やっぱりこのクルマは大人気。当時のJGTC(全日本GT選手権)を代表するクルマでした。
このクルマで、脇阪寿一氏がラストランをする前から、脇阪夫人や当時のマネージャーの号泣する姿にもらい泣き。開幕戦は、ただただ慌ただしく時間が過ぎて行くのですが、偉大なドライバーの勇退の姿を目に焼き付けることができたのは、非常に幸せでした。サプライズで、ドライバー有志がセレモニーに乱入するシーンがあり感激しました。そんな心温まるセレモニーを終えた直後の心境を、脇阪氏に伺って参りましたのでどうぞ。
セレモニーの様子は、SUPER GT公式サイトのレポートをどうぞ。
―――――まず、無事に終わりましたが、率直な感想をお聞かせください
脇阪:こんなにしてもらって申し訳ないと思いました。開幕戦だと言うのに…。ありがとうございます。
―――――エッソウルトラフロースープラ、久しぶりに運転されましたが
脇阪:リハーサルの際、ウルっと来ました。奥のヘアピンに行ったところ、そこで何だろう?ウルっと来たんです。ちゃんと走るの、クルマが。このクルマで、この景色を見ていたのかなって…。僕には、走れる状態で保存してもらっているクルマが、3台あります(シリーズチャンピオン獲得車)。これは、その中の一台で一番古いクルマですが、人気がありほっといてもファンがついて来てくれるクルマでした。そこから、自分の中でファンを意識するようにしてくれたクルマがコレなんです。このセレモニーに際し、何も言わずにこのクルマを出してくれるところとか、余計に涙が出ますね…。
―――――ドライバーのみなさんが駆けつけるというサプライズ、泣けました
脇阪:うれしかったね。仲間はね…、ただの仲間ではないですから。これまで凌ぎを削って来た仲間たちだし、ひとつ間違えると殺し合いになってもおかしくない仲間だと言うのに、あのような事をしてくれて…。やっぱりスポーツなんだろうね。スポーツじゃなかったら、こうはならない。ただの殺し合いなら、こんな事にはならないよね。中には、レースを戦って来た中で、いい意味で僕の顔を見たくないと思っていたライバルたちもいたかもしれない。でも、こうして来てくれるということ…。そして彼らの表情を見ているとね…。
―――――セレモニーは節目ではありますが、もう走らないの?というような一抹の寂しさもあるのですが
脇阪:そうですね。でも、GTA坂東代表の優しい言葉、GT500の舞台からの引退と言ってくれていました。あれは、彼の優しさなのか何なのかね。リハーサル風景も、ずっと坂東代表がVIPルームから見ていてくれて、うれしかったですね。
―――――今、監督としてサーキットに来ている訳ですが、やっぱり走りたいと思いませんか?
脇阪:今は、思わない。それだけここまで苦しかったから。正直な話をすると、本当にここ5年くらいいつも逃げ出したかったです。でも、逃げ出したところで飯を食っていく方法がわからなかった。ファンの方々がいるから、喜んでもらえるという気持ちで奮起し走り続けて来ました。
フリー走行ひとつ取ると、昔は遅刻して来るくらいの感覚でも乗れていて結果を出すことが出来ていたと思うのですが、そんな人間がフリー走行ひとつにピリピリして来る余裕の無さで、ここ何年か過ごして来ました。それだけ、GT500クラスの刺激は凄い訳です。それに代わる刺激は、きっともう無いと思う…。今年参戦するSUPER耐久や、GAZOO Racing 86/BRZのレース、そしてこれから先GT300クラスに出る可能性があったとしても、その刺激は、大きく違うと思います。
―――――未だに、信じられないのですが
脇阪:ね…。
―――――星野一義さんや関谷正憲さんなどの様に、「引退」と宣言できるドライバーは、なかなか居ない訳ですが
脇阪:本当に素晴らしい先輩方ですが、なかなか計算では出来ないことですよね、引退と言うのは。同様に表現してくださるのはありがたいですが、僕は環境に恵まれこのようなことをして頂いただけです。
―――――ご子息に、晴れ姿を見せることが出来ましたね!
脇阪:それは、もちろんうれしかったですね。彼らがあんな大勢の前に出て来て話すのは、学芸会以上のことです。そして、何よりうれしかったのは、ファンのみなさんに、ありがとうございましたと言ってくれたことです。僕がこれまでして来たことを見ていてくれたのかなと思うと、ものすごくうれしかったです。泣けました…。
引退セレモニーでは何度か男泣き。涙をぬぐうシーンには、昔“尖っていた脇阪寿一”の姿は微塵もありませんでした、当たり前ですが…。素直に胸を打たれましたね。オフシーズンのテストの時など、現場で見ていて走りたい!と思わないのかな…とずっと考えていたんですよね。
素直な気持ちを吐露してくださり、アスリートとして極限の精神状態で戦って来たことを改めて認識、私はいったい何年現場にいるの?そんな事も理解していなかったの?と反省しました。現在戦っているドライバーのみなさんにも、改めて尊敬の念を頂きました。
これからは、脇阪寿一第二章!ますますあらゆる方面へ活動を展開していくと思いますので、期待していますね。まずは、レクサスチーム ルマンワコーズの監督として、引き続きよろしくお願いいたします!
(写真、テキスト:森山俊一、大谷幸子)
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