世界を前に、日本勢、地元の鈴鹿で大苦戦 ~鈴鹿10時間耐久レース現場レポート~
先日初開催された鈴鹿10時間耐久レースをあらためて振り返ります。今回、日本勢にとっては地元鈴鹿でのレースという事で期待も高まりましたが、いざレースが始まって見ると、GT3マシンを熟知する世界のレベルを見せつけられるレースとなりました。
今般、SUPER GTで活躍するドライバーが多数参戦していましたが「海外勢はマシンとタイヤをよく知っている」という声が多く聞こえて来ました。予選での攻め方にしても、決勝でのバトルをみても、海外勢のアグレッシブさに押されっぱなしという印象でした。
決勝は、最高で気温35度、路面温度は52度という酷暑。昨年まで開催されていた鈴鹿1000kmでもあまり例がなかったほどの暑さに見舞われました。GT300クラスで活躍するマザーシャシー勢が、今回のレースでは2号車 Cars TokaiDream28(ロータス・エヴォーラMC)と、18号車 TEAM UPGARAGE(トヨタ・86 MC)の2台がエントリーしましたが苦戦していましたね。
SUPER GTでは「鈴鹿=マザーシャシー勢」が絶対に有利と言われていますが、この鈴鹿10時間では、やはりタイヤが違うので…。(編集部注:SUPER GTでは各車契約するタイヤメーカーを使用、鈴鹿10時間ではピレリのワンメイク)
この短いレースウィークで攻略するのは、慣れた鈴鹿と言えどなかなか大変だったと思います。もちろんSUPER GT勢は、みな同じ条件ですけどね。
18号車で参戦した中山友貴選手は「タイヤが硬いので、パフォーマンスを発動させ切れていないです。もともとSUPER GTでは(マザーシャシー勢)は、コーナリングスピードが速いから脱出スピードも速くでき、そこで(GT3と)とんとんで戦えているクルマなのですが、今回のようにみんな同じタイヤでコーナリング速度が同じになってしまうと、パワーで負けてしまいます。僕自身、レースではほとんどオーバーテイクできませんでした。」
「6時間を経過以降、トラブルが出始め、最後は燃料系のトラブルで常にガス欠症状が出る状態でした。でも、ここまで来たので、“完走”を目標にしようとチームと決め、最後はチェッカーを受ける為コースインしました」
(グランドスタンドに向かったら、ちょうどクルマが出るところ。写真は、出て行ったところですが…)
レース後半は、満身創痍の状態で走っていた18号車。マシントラブルによりピットインした後、ゴール10分前にピットレーンにマシンが姿を現すと、グランドスタンドのファンは、黄色のペンライトで歓迎していました。
同じくマザーシャシー勢の2号車ロータス・エヴォーラMCは、決勝レース前のウォームアップ走行でマシンをクラッシュさせてしまい、マシンの修復からレースがスタートしました。チームは、当然諦めずに作業を続け、30周以上周回遅れとなった開始1時間のところでコースイン。しかし、レース中盤も幾度となくマシンをガレージに戻すシーンが見られ、残念ながら完走を果たす事はできませんでした。
今季からSUPER GT GT300クラスにも参戦しているホンダNSX GT3。3台がエントリーしましたが、こちらも苦戦です…。最高位は10号車 Honda Team MOTULの18位でした。SUPER GT第5戦富士500マイルレースでの大クラッシュで今回の参戦が懸念された34号車 Modulo Drago CORSEは、どうにか新しい車両が間に合い、レースに出走。21位で完走を果たしました。
道上龍選手は「とにかくクルマがないとレースに出られないという状況でしたが、様々な方の協力で今回の参戦が間に合い、本当に感謝しています。チームも時間がない中、トラブルが出ないようにしっかりとメンテナンスしてくれました。NSX GT3とピレリタイヤが合っていないところもあって苦しいレースでした。結果は悔しいですが、クルマを壊さず10時間を走り切れたという部分は良かったです」とコメントをくれました。
34号車のチョン監督夫妻は、個人的に友人でもあります。バタバタな日々を過ごし鈴鹿にやって来たはず。写真を小さくそっと載せてエールとします。グリッドで会えて良かったです。残りのSUPER GTのシーズンも34号車の戦線離脱がなくうれしく思っていますよ。引き続き健闘を祈ります!
さて、昨年スパ24時間に参戦した事でブランパンGTシリーズの経験がある00号車の Mercedes-AMG Team GOOD SMILEの谷口信輝/片岡龍也/小林可夢偉組。昨年と同じメンバーで参戦です。今思えば昨年は、今回の34号車のような状態でスパ24時間ではマシンを大破してしまい、本戦で苦労しておりましたよね。ふとパソコンにくぎ付けになっていた事を思い出しました。
今回は予選21番手からミスなく順位を上げていき、開始7時間30分を過ぎたところで5番手に浮上。最後のナイトセッションでは、ペースの良いベントレーのファクトリーマシンに迫られる場面もありましたが、片岡龍也選手が意地を見せポジションをキープ。レース後のインタビューで、鼻血を出していたとコメントしていましたが、それだけ集中していたのか?日本勢最上位となる5位を獲得。そしてアジア圏から参戦したチームの上位に送られるアジア賞では、1位を獲得しました。
小林可夢偉選手は「まずは5位を獲得できた事が良かったですし、チームをはじめ谷口信輝選手も片岡龍也選手も、ものすごく頑張ってくれました。全体的にすごくタフなレースでしたが、5位という結果は僕たちが今できる最高の結果ではないかなと思います」とコメント。現状のパフォーマンスについてくる最高のリザルトと言う事で、来年はもっと前進!ぜひ、優勝!賞金3000万円を目指して欲しいですね。
総額1億円の今大会。賞がそれぞれありましたが、レースに関して言えば1時間ごとに発表されるリザルトも、トップにいれば100万円というものでした。生々しいかもしれませんが、これぞプロスポーツ、賞金あってこそですね。
最後におまけを。イベント広場の「泡トラ」にワクワク。夏のコンサート会場ならわかるのですが、サーキットで盛り上がるの?と思ったら、DJの方がさすがでした。恥ずかしがるお客様を導くのがうまい!あっという間に良い雰囲気に。わたしは、好きな曲がバンバン流れるので、そこから離れられなくなり困りました。鈴鹿サーキットさんは、イベントを打つのが非常にお上手だと、またもや思って帰還しました。
終わってみて思う事は、今後のイベントの継続と日本勢のさらなる活躍ですね。目の前で、欧州勢が喜ぶ姿に拍手しながら、リベンジは必ずしてもらおうと思いました!それと耐久レースの雰囲気がわたしは好きです。ゆっくり見られるのでね。またそんな好きなレースが増えたかと思うと、うれしいですね!では、また!
(写真:折原弘之 / テキスト:吉田知弘・大谷幸子)
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[ガズー編集部]
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