No Attack No Chance 夢に向かって ~コロナ禍のアメリカで修行中のメカニックからの便り その4~
前回の続きです。本人の執筆でますます現地の様子やメカニックの仕事事情が理解出来ました。続いて、こちらも記録に残しておきたいこと、現地の生活、またコロナ過事情などをお伝えしますね。生活については、具体的に費用について出来る範囲でお願いしました。またアメリカの移動については、彼がどんどんアメリカナイズされていくのがわかります(笑)。移動距離、ちょっとおかしくない?スケールが大きくなっていますね。それではどうぞ。
アメリカ人の意識に近づく?!
約2年になるアメリカ生活での感想ですが、物価の関係もあり日本に居た時よりもお金がかかるという印象です。僕自身は駐在員ではないので家賃やその他もろもろな部分でいろいろとかかってくる費用も変わってきますが。
家賃も今住んでいるインディアナは、大体1ベット 1バスルーム(550~740 sqft)のアパートで1000~1300ドル(日本円で約11万~15万円)前後が平均で、移籍先のチームがあるイリノイはプラス200~300ドルと少し高め。なおかつ税金も州によって違っていて、イリノイの方が少し高い傾向です。
チームは移籍しましたが、生活費用をトータルするとイリノイには引っ越さずインディアナに住んでいた方が費用はかからないので、今のところは毎週月曜に通い、金曜に戻ってくるという生活をしています。僕はインディアナという土地も好きなので。
自宅からショップ(新しいチームの拠点)までは、約200マイル(御殿場から鈴鹿に行くくらい?)で約3時間くらいの道のりです。ウィークデーはチームがホテルを予約しているので、仕事のあとはそこに滞在をしています。
また、昨今価格が高騰しているガソリンですが1ガロン約3ドル前後と2年前に渡米した時と比べると約1.5倍近くの価格に値上がりをしています。(1リットルあたりに換算すると1リットル約130~140円前後です。インディアナとイリノイでの2月初週の価格/為替レートで計算しました)。
パンデミック以降、さまざま面でアメリカ国内で物価自体もかなり渡米当初よりは変わったように感じています。また、良く聞かれるのが移動距離ですが渡米してきて以降、国土が広いこともあり長距離移動が特に遠く感じることが少なくなりました。3~5時間くらいのドライブならその辺に行く感覚に近いです。
昨年のオフシーズンテストなどは、アラバマ州のバーバー・モータースポーツパークまで飛行機ではなくチーム皆で自走で行きましたがそれほど遠いとは感じませんでした。インディアナからバーバー・モータースポーツパークまで約520マイル(約830km前後)、7時間半から8時間のドライブですがハイウェイの道幅が広いこともあり、あまり僕自身は遠く感じませんでした。みんながみんなとは言いませんがあの大きな大陸に居るとそれほど気にならなくなるのかなと思っています。あくまでも個人的な意見です。
年末年始は琢磨さんのマネージャーファミリーにお誘いをいただき約6日間コロラドにクリスマス旅行に行ったり、New Year’s eve/New Year’s Dayはシアトルに住んでいる知り合いのところに日帰りで遊びに行きましたが、遠いとは感じませんでした。
琢磨さんのマネージャーとコロラド州キーストンにて
渡米以降、レース以外で他の土地に行くことがコロナ過でなかったのですが、昨年末はとても充実した冬季休暇を過ごすことができました。アメリカでのファミリーみんな集まっていろんな所に行ったり、ご飯を食べたりものすごく楽しめました。The Americaって感じで(笑)。
また、それ以外のDay Offは趣味の料理をしたり、映画を見たり、ジムに行ったり、家事をしたり、基本的にのんびり過ごしてます。
コロナ禍のアメリカで自分の健康を守る意識が高まる
2020年3月に渡米した次の日から「ロックダウン」で始まったアメリカ生活ですが、現在は渡米した当初と比べ少しずつ本来のアメリカに戻りつつあると感じています。それをものすごく感じたのは、昨年のINDY500です。2020年は無観客でのレースでした。パンデミック前であれば毎年30万人以上がレース日には来場するイベントですが、昨年は観客の数を40%にしぼっての開催でした(実際それ以上に居た気がしますが…)。
当初は100%でという発表がありましたが、アメリカの感染率の状況などを踏まえ最終的には上記の数字での開催となりました。40%のキャパシティとはいえ、地鳴りのような歓声、あの盛り上がり方はどのレースにも変わるものがない特別なイベントなんだとあらためて感じることができました。
ワクチン接種に関しては、当初と比べるとかなり進み多くの所は予約なしのウォークインで接種をできたり、レースを見に来たファンに向けサーキットで接種ができたりと少しでも感染拡大を抑えようとする感じに変わってきています。接種率が高いかと言われると微妙ですが、国として明確な対策を打ち出していると感じることができてます。
昨年僕自身もインディカーリーグが用意してくれたワクチンを接種する事ができました。1回目が4月のインディアナポリス・モーター・スピードウェイでのオープンテスト後、2回目は5月のテキサス・モーター・スピードウェイでのレース後に接種をすることができました。
どちらも疲労がたまっていたこともあり2~3日撃沈でしたがどちらもイベント後がオフ日だったのでゆっくりと休めることができました。頭痛などはすぐなくなりましたが約1週間くらいは筋肉痛のような感覚はありました。
また、昨年の11月にはCVS(アメリカの大手ファーマシー)で3回目(ブースターショット)を受けました。こちらは特に大きな副反応もなく半日くらい少し熱あるかなくらいで寝て起きたら特に次の日は何も問題はがありませんでした。そして、アメリカのCDC(アメリカ疾病予防管理センター)のワクチン接種カードには枠が元から6個あるので、定期的6回打ちなさいってことなのかなぁ?と感じています。
パンデミック以降で一番の驚きは、アメリカの国内線の飛行機はワクチン接種が始まって少したってから、飛行機の搭乗率が100%に近いこと。経済を止めないためにそうしないと国がダメになっていくということを肌で感じました。
マスクに関しては最近では州や地域にもよりますが、してる人の数が場所によって本当に差があります。年末に行ったシアトルとコロラドは多くの人、多くの場所でマスクをしていましたがインディアナはマスクをする人の方が少なくなっている印象です。公共の施設等でもワクチンを接種していないと入れないところが地域によってはあったり、場所によって本当にさまざまです。
自分の身は自分で守るしかないので公共の場ではもちろん、僕もしっかり対策を行い、健康管理もしっかりしています。アメリカの医療費はものすごく高いので…。
日本人としての誇り
そして、今年の目標ですが、今年は昨年果たせなかった優勝、表彰台、INDY500で琢磨さんの3度目の優勝、僕自身のピットワークでのアベレージタイムの向上、プライベートをさらに充実させていければと思っています。
チームを移籍し、新しい環境、新体制で新たなチャレンジの年となりますがNo Attack No Chanceで今年は全力で楽しむことを一番にシーズンを過ごしていきます。頑張るのではなくリラックスして楽しむことができれば結果はついてきてくれると思っているので…。
ナーバスではなくいつもポジティブに、レースを見てくれる皆さんや応援していただいてる多くの方々に夢や感動を届けることができるように。趣味が仕事で仕事が趣味な感覚なので、昨年よりもより良い車づくりを心掛けて、このシリーズに関わらせて頂いてる一日本人として誇りをもって取り組んでいきたいですね。
昨年、チャンピオンを獲得した日本でも走っていたアレックス・パロ―や最後までチャンピオンを争った若干22歳のパトリシオ・オワード等の活躍したドライバー、インディ・ライツからステップアップしてきたルーキー、元F1ドライバー、NASCARレジェンドドライバー、そしてベテランドライバーと他のカテゴリーとはまた違ったハイレベルなレースを今シーズンも楽しんでいただければと思っています
今シーズンは2月末のセントピーターズバーグのストリートコースでのレースで開幕をし9月のラグナセカまで年間17戦で開催されます(ロードコースが7戦、ストリートコースが5戦、オーバルが5戦)。
日本とは約半日以上時差がありますが、ぜひ、機会があれば見てみてください。日本やヨーロッパのレース環境とは違った3つの異なるレーストラックでのレースは、毎回多くのドラマがあり盛り上がること間違いなし。僕のおすすめは特にINDY500とストリートコースです。パンデミックが収まり機会があればぜひ、現地にも来ていただけたらアメリカのモータースポーツを肌で感じて頂けると思います。
最後になりますが、今シーズンも佐藤琢磨選手を始め、デルコインレーシングへの応援、NTT IndyCar Seriesへの応援をよろしくお願いいたします。
今年も夢に向かって楽しみます!
Dale Coyne Racing #51Front end Mechanic
須藤 翔太
ありがとうございました!わたくしの実兄もフィールドは違いますが10年ほどアメリカで頑張っていました。ですので、その夢を追いかける姿を応援したくなるんですよね。今後ものんびり追い続けたいと思います。自分がモータースポーツからいつか離れる日までに海外でレースをぜひ見たいですね。来月からはいつも通り国内モータースポーツを追いかけて行きますのでよろしくお願いします!それではまた!
レポーター(お)ねえさん・大谷幸子
随時、クルマに関する様々なイベント・テーマでレポートしていきます!
[GAZOO編集部]
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