【折原弘之の目】様変わりするテストの意味。現代のテスト走行は“クルマ”より“チームの成長”が重要
2月23日、富士スピードウェイで、スーパー耐久の公式テストが行われた。昨今のスーパー耐久は、ゆるいレースのイメージとは程遠く、全てのチームが優勝を狙っている。それだけにテストに参加するチームも多く、どのチームも真剣にレースに取り組んでいる。ところが昨今ではテストの意味も内容も、大きく変化しているようだ。そんなテストの現状を、シェイドレーシング(SHADE RACING)の平中克幸選手に聞いてみた。
まず、今回のテストについて聞いてみると、
「シェイドレーシングに関わるようになってからは、マシンのセットアップより、チームの練習に重きを置いています。SUPER GTでもチームスポーツである以上、誰かが欠けると成り立たない部分もあります。特にスーパー耐久では24時間耐久もありますから、1人がミスをすると取り返しのつかないことも起きてしまいます。それは実際にも経験していますので、最近ではチームを強くする方向ですね」
とのこと。実際に最近のレースでは、改造の範囲やセットアップの幅もどんどん狭くなっている。改良点はあるにしろ同じマシンで複数年走ると、セットアップの方向などマシン作りに関してはある程度見えている。特にGT4マシンはハード面でやれることは少なく、おおよそ見えていると言うのが現状らしい。
そうなってくると重要なのは、チーム内での意思疎通やネガ出しになってくるのだろう。
「エンジニアにしてもメカニックにしても、スキルは十分にあるんです。だからチーム全員が、同じ方向を見ていることが大切なんです。マシンに関しては(GT4スープラ)スプリングのバリエーションまで決められているので、車高をちょっと触るなど、最後の味付け程度しか変えられません。ですからマシンのセットアップが、テストのメインになることはありません。
今回のシェイドレーイングのテストで言えば、“新加入の鶴田哲平選手をなるべく多く乗せて、箱車に慣れさせる”と言うのがメインテーマです。彼に関しては、昨年のオーディションで走っているので、ある程度の速さがあるのはわかっています。ただレースで勝った負けたのレベルに達してはいないと思います。これから一年かけて、そのレベルまで持っていくためにもテストは重要です。」
つまりチーム一丸というのは、メカニック、エンジニアだけではなくドライバーの成長も含めての話だ。レースに関わる全てのチーム員が、同じ方向を向くためにテストに参加していると言っても過言ではない。
全員が同じ方向を向くと聞けば、当然のことのように思える。その部分を一歩踏み込むと
「同じ方向というのは、みんなが勝つために戦っているなんていうのは当然ですよね。大事なのは“勝つために、何をして行くのか“です。例えばドライバーがセットの方向をリクエストした時に、エンジニアが理解してくれなければ良い結果は得られない。マシンのセットだけではなく、作戦だってみんなが納得して戦わなければ結果は出ません。
単純な整備作業にしても、メカニックがドライバーのことを考えて作業しないとミスは出やすいです。ドライバーにしても、横柄な態度でいたら周りは動いてくれません。そういった相互信頼を高め、考え方をすり合わせて行くためにもテストは重要なんです」
と語ってくれた。
テストについての考え方が、変わってきたことは理解できた。それも平中選手がヨーロッパでのレース経験や、GTでのチャンピオン争い等、多くの経験を積んできたから言える台詞のようだ。
「若かった頃は、速ければいいんでしょ。みたいな感じで走っていた時代もありましたが、若い頃はそんな感じでいても良いのだと思います。若いうちからチームのことは、考えられないだろうし。逆にそんなこと考えていたら、速く走る事もできないだろうし。僕もシェイドレーシングに関わるようになって、チーム作りのことを考えるようになったので。まあ、親父になってきたと言うことですよ」
と、彼自身も冗談混じりに話してくれた。
今の平中選手は、若いチームを引っ張る役目。それだけに、テストに対する考え方も変わってきているのかもしれない。平中選手の話を聞いていると、ディーラーチームのオーナーが、「人間育成のためにレースに出ています」と言ったことにも合点がいく。
お金持ちの道楽や、街の走り屋が参加するのがレース、という時代に比べると、参加する側も大きく変わってきている。これからのレースやテストは、勝った負けた以外のことが存在意義になってくるのかもしれない。
#885 シェイドレーシング GR SUPRA GT4
#884 シェイドレーシング GR86
(文、写真:折原弘之 編集:GAZOO編集部)
折原弘之 プロカメラマン
自転車、バイク、クルマなどレース、ほかにもスポーツに関わるものを対象に撮影活動を行っている。MotoGP、 F1の撮影で活躍し、国内の主なレースも活動の場としており、スーパー耐久も撮影の場として活動している。また、レース記事だけでなく、自ら企画取材して記事を執筆するなどライティングも行っている。
作品は、こちらのウェブで公開中
https://www.hiroyukiorihara.com/
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