ダカールラリー 取材同行の旅No.5

メカニックの1日(前編)

競技車はみな、主催者が毎日指定する時刻にビバークをスタートしていく。しかしアシスタントカーは、特に決まっていない。自分たちで次のビバークへ到着する時刻を割り出し、自分たちで出発時刻を決める。重要なことは、次のビバークに何時に部品や工具を載せたカミオンを到着させるか?メカニックを何時に到着させるか?競技車がビバークへ到着する予定時刻から決定する。また競技車のリエゾン(移動区間)とアシスタントカーが走るルートが同じ場合、サービスすることも可能なので、どこで停まって準備をするかも考える。こうして考えると、メカニックはいつ整備をして、いつ寝ているのか、想像しにくい。そこで今回は、メカニックが南米大陸に到着してからと、ダカールラリー期間中の動きについて紹介しよう。

 

トヨタ関連チームはアルゼンチントヨタがサポート

まずどこから競技車やアシスタントカーが来るかによって、今年のスタート国であるアルゼンチンでの作業内容が大きく異なる。主催者が用意するフランス・ルアーブルの港から出航する船に載せる場合、その港内で予備車検が行われる。またフランス国内の工場で競技車を製作していたり、数台が同じ工場で製作している場合、FIAの検査官が出張して予備車検をしてくれることもある。この場合、アルゼンチンで行われる車検は、とても簡単なものになり、そのぶん触れるところが少なくなる。しかしそれ以外の国から独自に船積み、陸路で来た競技車は、厳しく検査されるので、車検までしっかり整備する必要がある。チーム ランドクルーザー トヨタオートボデーのランドクルーザー200は、フランスでラリーに向けた補強や装備をしているので、基本的な車検はフランスで行っている。一方、TOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICAの3台のハイラックスは、南アフリカから船でやってくるので、アルゼンチンに到着してからも最終整備に余念がない。またこのチームと協力関係があり4台のハイラックスで挑むベルギーのOVER DRIVE TOYOTAも含め、こうしたトヨタ系チームを整備する場所として毎年、アルゼンチントヨタが整備場所を提供してくれる。カミオン部門に日本から参戦するHINO TEAM SUGAWARAの2台の日野レンジャーもここで最終整備を行う。

アルゼンチントヨタで最終仕上げ作業をするTOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICA
フランスですでに予備車検を受けているので、簡単な作業をするチーム ランドクルーザー トヨタオートボデー

日々のメンテナンスが大切

ラリーがスタートしたところからメカニックたちがどのように動くか紹介しよう。今回1日だけ競技車のルートよりアシスタンスルートのほうが長いステージ(ボリビアからアルゼンチンへ行く1,059km!)があったが、こういったときは競技車より先にアシスタントカミオンやほとんどのメカニックが乗ったアシスタントカーは出発。万一に備え1台は出発を見届ける。ほかは基本的に競技車のルートのほうが走行距離が長いので、まずビバークから競技車が出発したのを見届けてから、アシスタンスルートを走る。

朝陽を浴びながら、エンジンをかけ、スタートを待つハイラックス。ハイラックスがスタートしてから片づけをしてアシスタントカーも出発する
アシスタンスカミオンはワインディングではゆっくり移動するので、こうしてダカールラリー関係車のコンボイのようになってしまうことも

競技車もそうだが、アシスタントカーも一般道を走るときは制限速度を順守するよう、トリッピーという装置で管理されている。制限速度はボリビアでは80km/h、アルゼンチンの高速道路は110km/h(一部130km/hもあった)そして市街地や村を通過するときは、50km/hなど。これがトリッピーで管理されており、速度違反をすると記録が残り、同じチームの競技車にペナルティーが加算されるため、絶対に制限速度は守らなければならない。

黄色のがトリッピー。ロードブックのコマ図が画面に出たり、速度やビバークまでの距離などがモニターに表示される。制限速度もここに表示されている

オート部門はだいたい朝7時~8時ぐらいに先頭車が出発するのでチームの競技車が出発してから移動。主催者の計らいで、競技区間(SS)がアシスタンスルートの国道を横切る場所があり、ここでは競技車の走りを観戦することができる。自分たちが手掛けているマシンの調子はもちろん、ライバルの走りが生で観られるのは、メカニックやエンジニアにとってうれしい。

アシスタンスルートと競技区間が交差する地点で待つアシスタンス。ライバルともきわめて仲がいい
こうして交差する地点にチェックポイントがあり、減速して一般道と交差してまたオフロードに向かう。このとき一般道はすべて封鎖される
自分がメンテナンスしているハイラックスの走りやライバルの走りを観ながら比較するメカニックたち

そして競技車より一足先にビバークに到着したら、サービスの場所を確認し(1チームに数台競技車があるチームは事前にビバーク内のサービス位置が指定されている)カミオンを停め、サービステント、マットを準備し、競技車が帰ってくるのを待つ。ビバークに昼ごろ到着すれば食堂でランチが食べられ、夕方もメカニックだけ軽食が利用可能になっている。カミオンの日陰で仮眠したり、のんびりできる時間はある。

ビバークについたらサービスを準備する。そして選手たちが帰ってきたときにわかりやすいよう、目印としてバナーを高々と掲げる
メカニックやプレスが食べられるランチ。この日はローストビーフとパスタ
サンドイッチとフルーツという日もある。ランチは日替わり。ビールももらえるが、たいがい夜のために取っておく

(テキスト/写真:寺田昌弘)

[ガズー編集部]