RC Fの咆哮が久万高原に轟く。全日本ラリー第4戦

全日本ラリー選手権第2戦から鮮烈デビューしたLEXUS RC F。ロングボディに5リッターV8エンジンと、今までのラリーカーの常識を超える車格での参戦は、観客はもちろんほかの選手たちも驚いています。デビュー戦でクラス2位入賞、うちSS12本中3本でクラストップ、続く第3戦は私は行けず、ラリー経験豊富な選手にコドライバーをしていただき、クラス3位と連続入賞。ビギナーズラックではないことを証明し、全日本ラリー選手権第4戦となる「Sammy久万高原ラリー」に参戦するため、愛媛にやってきました。

Sammy久万高原ラリー参戦者集合写真
Sammy久万高原ラリー参戦者集合写真
サポートしていただいているCUSCOは私たちを入れて4台。女子率高い
サポートしていただいているCUSCOは私たちを入れて4台。女子率高い

サービスパークは標高1,000m。高原の風薫る心地よいラリー

5月3日は早朝からレキを開始し、夕方から公式車検を受け、エントリーは44台。トップカテゴリーのJN1には、今年もERC(ヨーロッパラリー選手権)に参戦する新井大輝選手が久しぶりに参戦し、注目度が高まっています。今回のSSはすべてターマック(舗装路)で西谷、大川嶺とともに10km以上のコースを順送、逆走しながらそれぞれ2本ずつ走ります。

どちらも山を登って降りるといった高低差のあるコースで、大川嶺は標高1,500mを越えるところまで駆け上がります。まずは西谷Ⅰ(13.57km)。レキでしっかりペースノートを書いていましたが、久しぶりにRC Fの助手席に乗ったので、SSスタートとともに、あまりの加速で出だしからロストしてしまう大失態。なんとかリカバリーしてペースノートを読み上げていくも、ヘアピンなど早めにブレーキングをしなければならない箇所でコールが遅れてしまいます。加えて下りでのブレーキの負荷が予測より高く、むやみに突っ込んでいけないので、ここは抑え気味に走りました。

続いて大川嶺Ⅰ(13.88km)。スタート地点の標高約860mから細かいコーナーと10m~100mの様々なストレートをつなぎながら駆け上ります。標高1,400mを越えたあたりから、視界が一気に広がり、大パノラマのゆるやかな稜線を走ります。レキ中は景色を楽しんでいましたが、SSではそんな余裕はありません。

タイムをみるとトップと1.5秒差。やはり登りでは530Nmのトルクでマシンを前に押し出してくれ、少しでも直線が取れれば477psのパワーを発揮した加速でタイムを詰められます。しかし下りでは1.8トンの車重が特にブレーキに負担をかけ、ドライバーに繊細なブレーキマネージメントを要求してきます。

久万高原町役場をスタート
久万高原町役場をスタート
180度ターンが待ち受けるギャラリーコーナーへ
180度ターンが待ち受けるギャラリーコーナーへ
  • 圧倒的なトルクでぐいぐい坂を登る
    圧倒的なトルクでぐいぐい坂を登る
  • アップダウンが続くSSを駆ける
    アップダウンが続くSSを駆ける
  • RC Fのコーナリング性能は極めて高い
    RC Fのコーナリング性能は極めて高い
  • カメラマンがいるところではついついアクセルを開けて攻める
    カメラマンがいるところではついついアクセルを開けて攻める

一度給油ポイントへ向かい、サービスに戻ってブレーキパッドを変更し、再び同じSSに挑みます。ブレーキのフィーリングがよくなり、タイムも6,7秒短縮できたのですが、クラストップのTOYOTA GAZOO RacingのVitz GRMNはさらにタイム短縮に成功。
天空を駆けるラリーでVitz GRMNはさらに雲の上の存在になりました。

LEG1を終え、トップとは1分3秒差でだいぶ開きましたが、3位とは12秒差の2位。
なんとか2位をキープすべく、ペースノートを見返しながら翌日の準備をします。

サービスに戻り、熊崎メカニックに各部をチェックしてもらう
サービスに戻り、熊崎メカニックに各部をチェックしてもらう
  • ブレーキの負荷が高く、ブレーキパッドを交換
    ブレーキの負荷が高く、ブレーキパッドを交換
  • スタート前にタイヤとホイールに黄色いチェックを受けるが、これだけずれるすごいパワーだ
    スタート前にタイヤとホイールに黄色いチェックを受けるが、これだけずれるすごいパワーだ

一矢報いたい。その一心でSammy賞をゲット

LEG2は、前日のLEG1を逆走するSS。同じルートでありながら進行方向が変わるだけで、その様相はずいぶん変わります。標高1,000mから1,500mまで登り、800mまで下る今大会最長のSS5大川嶺リバースⅠ(14.03km)。出だしからドライバーとのコンビネーションもうまくいき、気分も乗ってきたのですが、やはり下りではまだ恐怖心が拭えず、気づかぬうちに大声でコールしていたようで急に喉が渇き、声が出にくくなってしまいました。

ただタイムをみると2.3秒差のクラストップでゴールできました。3位とは36秒差をつけ、少しマージンが稼げました。続くSS6西谷リバースⅠ(13.50km)もアタックしていきましたが、速度の乗らない不利な低速コースで苦戦し、トップと差は開きましたが、3位とは53秒の大差がつけられたので一安心です。

綺麗な景色の中、SSスタート地点へ移動
綺麗な景色の中、SSスタート地点へ移動
  • 標高1500mの天空のSSを走る
    標高1500mの天空のSSを走る
  • 幾重にもワインディングが続く
    幾重にもワインディングが続く
  • インプレッサなど4WDマシンは滑らせて走るコーナーもあるがFRのRC Fはグリップ重視
    インプレッサなど4WDマシンは滑らせて走るコーナーもあるがFRのRC Fはグリップ重視
  • 鬱蒼とした森の中を駆ける
    鬱蒼とした森の中を駆ける

そしてSS7大川嶺リバースⅡは、先ほどクラストップを獲った同じコース。
さらにここにはSammy賞が懸かけられ、各クラストップは賞金3万円が獲得できます。
ドライバーの石井選手に伝え、RC Fも私たちも相性のいいこのSSでアタックすることを決めました。スタートからふたりの息も合い、一度走っているのでタイヤやブレーキのマネージメントもしやすく、とにかくミスしないように集中し走り切ると、1.3秒差でクラストップ、総合でも9位でゴールできました。最終西谷リバースⅡは後続とのタイム差は2分40秒あったので、ここは抑えて走り、無事完走しました。

今回もクラス2位入賞ができ、2本はクラストップが獲れたことは大きな収穫でした。Sammy賞はサポートしてくれたCUSCOのメカニックに焼き肉でも食べに行っていただこうとプレゼントしましたが、メカニックからは「これを使って工具など装備をもっと充実し、もっといいタイムが出せるようにするね」と。互いを思い、さらに高みに挑む最高のチームです。ゴールしたこの日は5月5日のこどもの日。私たちは童心に帰り、純粋にクルマと向き合い、思いっきりモータースポーツを楽しみました。

無事完走しゴールポディウムの瞬間を待つマシン
無事完走しゴールポディウムの瞬間を待つマシン
  • 今回も無事完走
    今回も無事完走
  • SS7に懸けられていたSammy賞をクラストップタイムでゴールし受賞
    SS7に懸けられていたSammy賞をクラストップタイムでゴールし受賞
(左から)クラス優勝のTOYOTA GAZOO Racingの眞貝/安藤組(トヨタVitz GRMN)、2位の石井/寺田組(レクサスRC F)、3位の山村/マクリン組(シトロエンDS3)
(左から)クラス優勝のTOYOTA GAZOO Racingの眞貝/安藤組(トヨタVitz GRMN)、2位の石井/寺田組(レクサスRC F)、3位の山村/マクリン組(シトロエンDS3)

(テキスト:寺田昌弘/写真:山口貴利・横手心剛・横山真和・石井宏尚・寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


関連リンク

  • クラストップでSammy賞を受賞したSS7の走り(RallyStream)

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