クラシカルな「ランクル・ナナマル」を都市部で登録して乗る方法
90年代に盛り上がったRVブーム。三菱はパジェロやチャレンジャー、トヨタはランドクルーザーやハイラックスサーフ、日産はサファリやテラノ、イスズはビッグホーンやmuなど各メーカーが本格4WDをラインナップし、アウトドアブームと相まって盛り上がっていました。特に人気だったのは、低速トルクの太さや軽油の安さからディーゼルエンジン搭載車でした。
しかしその後NOx(窒素酸化物)による酸性雨の問題が取りざたされ、産業界全体でNOx低減の動きが生まれ、さらに発がん性のおそれや健康への悪影響が懸念されたPM(粒子状物質)を減らそうと自動車NOx法の改正が行われ、自動車NOx・PM法(自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減等に関する特別措置法)が2002年10月に施行されました。また首都圏を中心に通行を規制する条例も施行されました。
当時のディーゼルエンジンは、ガソリンエンジンと比較し、NOx、PMともに多く、これら法律や条例の前に、乗り換えを余儀なくされました。ただ当時の4WDは、路面からの衝撃をうまくいなすラダーフレームに強靭なリヤリジットアクスルの組み合わせでとても耐久性が高く、20年近く経った今も海外はもちろん、国内でも地方で活躍しています。
またスタイリングもマッシブでありながら、どこか可愛げがあり、今も人気が高いです。そんな当時の4WDを今でも首都圏で登録できる方法があります。マフラーにDPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)などを装着し、PMやNOxを低減し、排ガス試験に合格すれば、再び登録ができます。
- ナナマルはオフロードが似合う
ずっと愛車に乗り続けるためにDPFを装着
私は2台のランドクルーザーを所有しています。1台は現行のプラドのディーゼルターボ。いわゆるクリーンディーゼルで、燃焼温度を上げてPMを減らし、尿素SCRシステムでNOxを除去するタイプです。もう1台は1996年に購入し、翌年にパリ・ダカール・ラリーに参戦したランドクルーザー70(通称:ナナマル)です。今回、このナナマルにDPFを装着し、東京都内にて登録します。
DPFは、メーカーによってDPRやDPDなど名称が異なるが機能は同じで、同時にNOxも軽減させるタイプもあります。排気ガスをクリーンにするため、一時的にPM、NOxを貯めるので円筒形である程度の大きさが必要となります。ただ安易に取り付けて、下部に突起してしまうとオフロードでの走破性が低下してしまうので、数多くの実績があるショップにお願いしました。
DPFを装着したら日本車両検査協会(VIA)にてシャシーダイナモメータでディーゼル自動車13モード排出ガス試験を受けます。CO(一酸化炭素)・HC(炭化水素)・NOx(窒素酸化物)・CO₂(二酸化炭素)やPM(黒煙)の数値を試験し、私のナナマル(KB-HZJ73)の場合、車両総重量が2.5トンを超えるのでNOx:4.5g/kWm以下PM:0.09g/kWm以下であれば合格となります。
試験結果は、NOx:4.023/kWm(基準値の88%)、PM:0.009kWm(基準値の10%)で見事合格しました。乗った感じは、出力、トルクは変わらず、少し野太いエキゾーストノートで迫力が増した感じがします。私のプラドは約1.5万km走行毎にアドブルーを補充しますが、このDPFは、基本メンテナンスフリー。エンジンオイルはDH-2(JASO規格)を使用します。
費用は軽自動車約1台分。でも愛車への思い入れはプライスレス
DPFを装着し、エンジン内部の清浄や燃料系の調整をしたり、日本車両検査協会へ持ち込み検査をしたりと、かなり作業日数はかかります。今回のナナマルの場合、費用は120~140万円かかります(型式、AT・MTにより差があります)。軽自動車であれば新車が1台購入できる費用ですが、思い入れのあるランクルを相棒として長く乗り続けたいと思う気持ちはプライスレス。
この時代のランクル60、70、80、100が好きで、どうしてもディーゼルが乗りたい人には、この方法を使えば首都圏でも登録ができます。今まで中古車屋で眺めて、いいなと思っていたクラシカルランクルを一生の相棒にできます。初めてサハラ砂漠を一緒に走った相棒と、これからまた新たな思い出が作れると思うとわくわくします。みなさんもいかがですか?
- 武骨なスタイリングが都心でも似合う
- 今回DPF装着から登録までお世話になった千葉・船橋にあるマッドハウス
(テキスト:寺田昌弘/写真:中村武・寺田昌弘/取材協力:マッドハウス)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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