ヨーロッパで半年ぶりにFIAワールドカップ・クロスカントリーが開催。ポーランドでトヨタ・ハイラックス、MINI、フォード・ラプターが疾走

インディ500やル・マン24時間耐久レース、WRCなどモータースポーツは、昨今のコロナ禍のなか、主催者や参戦チームの熱意と配慮で無観客でも少しずつ開催されるようになってきました。

私が好きなクロスカントリーのカテゴリーでも、海外ではFIAワールドカップで2月に開催されたカタールクロスカントリーラリー(Manateq Qatar Cross Country Rally)、バハ ロシア(Baja Russia - Northern Forest)以降、約半年ぶりにポーランドでバハ ポーランド(Baja Poland)が開催されました。

そこに今年1月のダカールラリーで総合2位のトヨタ・ハイラックスに乗るナサール・アルアティア/マシュー・ボウメル組と3位のMINIに乗るステファン・ペテランセル選手が新しいナビゲーターとして過去モロッコやエジプトのラリーのモト部門で上位入賞を果たし、モト部門、オート部門でダカールラリーに参戦実績のあるエドワード・ブルジェ選手と組んで参戦。

ダカールラリーでプレス仲間だったフォトグラファーのマリアン・チカさんが、現場を撮影していて、連絡を取ったら写真を使わせてくれるということで、彼のかっこいい作品とともにバハ ポーランドを紹介します。

3日間、約400kmと短いが雨と泥のタフなラリー

プロローグは7kmと短いクオリファイで翌日の上位10台のスタート順を決め、ハイラックスに乗るアルアティア/ボウメル組がトップで2位3位をMINI、4位はハイラックス、5位はフォード・ラプター、6位はハイラックスと続き、注目のペテランセル/ブルジェ組は8位。しかしトップと38秒しか差がありません。

レグ1は、軍演習場を走る172.31 kmのSSを、途中サービスをはさみ2回走ります。例年であればフラットダートと深く重い砂の路面が多いのですが、今回は降り続いた雨の影響で景色は一変。泥で滑りやすく水溜まりもいくつもでき、砂ではなく、泥や水との戦いになりました。

スタート時点で3台のハイラックスのフロントウインドウが曇ってしまうトラブルがありフォード・ラプターに乗るマルティン・プロコップ/ビクター・チカ組も水によるエンジントラブルで出遅れます。

SS2でトップを走っていた地元ポーランドのクストフ・ホーオフチャツ/オーカス・クゼヤ組のMINIは、続くSS3でデイリタイヤするなど波乱の展開です。さらに優勝候補のアルアティア/ボウメル組のハイラックスも残念ながらエンジントラブルでリタイヤ。

そのなか大きなトラブルなくトップに躍り出たのは、モト、オート部門合わせダカールラリーで13勝をしているペテランセル選手と初コンビを組むブルジェ選手が乗るMINI。

レグ2は約18kmと約10kmの短いSSをそれぞれ2回走ります。ここはポーランド人でハイラックスに乗るヤコブ・ポリゴンスキ/ティモ・ゴシャルク組と、同じくポーランド人のホーオフチャツ/クゼヤ組のMINIの地元対決となり、ともに2勝ずつ分け合うかたちになりました。

結果は終始ステディに走り切ったペテランセル/ブルジェ組が優勝。2位は今年のダカールラリーにTOYOTA GAZOO Racingからハイラックスで参戦したベルナルド・テンブリンケ/トム・コルスル組、3位はMINIに乗るミハル・マルツィンスキ/ユリタ・マルツィンスキ組の夫婦が入賞しました。

ダカールラリーで3勝し、トヨタにダカール初優勝をもたらしたナサール・アルアティア選手(右)とマシュー・ボウメル選手(左)。マシューはこうして撮影し、彼のSNSにアップしてくれるのでみていて楽しい。
ダカールラリーで3勝し、トヨタにダカール初優勝をもたらしたナサール・アルアティア選手(右)とマシュー・ボウメル選手(左)。マシューはこうして撮影し、彼のSNSにアップしてくれるのでみていて楽しい。
ナサール・アルアティア選手、「ナッサー」のニックネームで愛されるドライバーの果敢な走り。
ナサール・アルアティア選手、「ナッサー」のニックネームで愛されるドライバーの果敢な走り。
Red BullとTOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICAのカラーリングが施されたトヨタ・ハイラックス。
Red BullとTOYOTA GAZOO Racing SOUTH AFRICAのカラーリングが施されたトヨタ・ハイラックス。
今年のダカールラリーにTOYOTA GAZOO Racingから参戦し、このバハ ポーランドで2位入賞したベルナルド/トム組のトヨタ・ハイラックス。
今年のダカールラリーにTOYOTA GAZOO Racingから参戦し、このバハ ポーランドで2位入賞したベルナルド/トム組のトヨタ・ハイラックス。
ダカールラリーでステージウィンしたこともあるベルナルド選手は、特に高速ステージが得意なドライバー。
ダカールラリーでステージウィンしたこともあるベルナルド選手は、特に高速ステージが得意なドライバー。
トヨタ・ハイラックスはベルギーの overdrive がサポートを担当。
トヨタ・ハイラックスはベルギーの overdrive がサポートを担当。
ナッサーのダカールラリー初優勝時(2011年)のナビゲーターで、12回の参戦実績を持つティモ・ゴシャルク選手。物静かでいつも冷静なティモ選手はポーランド人ドライバーのヤコブ・ポリゴンスキ選手と組み、今回からトヨタ・ハイラックスに乗る。
ナッサーのダカールラリー初優勝時(2011年)のナビゲーターで、12回の参戦実績を持つティモ・ゴシャルク選手。物静かでいつも冷静なティモ選手はポーランド人ドライバーのヤコブ・ポリゴンスキ選手と組み、今回からトヨタ・ハイラックスに乗る。
ヤコブ・ポリゴンスキ選手は、前回のダカールラリーまでMINIで参戦していたが、今回はトヨタ・ハイラックスにマシンをスイッチ。次回のダカールラリーに向けテストしているようだ。
ヤコブ・ポリゴンスキ選手は、前回のダカールラリーまでMINIで参戦していたが、今回はトヨタ・ハイラックスにマシンをスイッチ。次回のダカールラリーに向けテストしているようだ。
ダカールラリーのモト、オート部門通算13勝のレジェンド、ステファン・ペテランセル選手。新たなナビゲーターを迎え、次回のダカールラリーに向けコンビネーションを確認。
ダカールラリーのモト、オート部門通算13勝のレジェンド、ステファン・ペテランセル選手。新たなナビゲーターを迎え、次回のダカールラリーに向けコンビネーションを確認。
雨上がりの心地よい空気の中を走るMINI。
雨上がりの心地よい空気の中を走るMINI。
ダカールラリーにはMINIの2輪駆動のバギーで参戦しているが、今回は4WDのMINIで参戦。
ダカールラリーにはMINIの2輪駆動のバギーで参戦しているが、今回は4WDのMINIで参戦。
神々しい風景のなかを走るMINI。ダカールレジェンドに似合う。
神々しい風景のなかを走るMINI。ダカールレジェンドに似合う。
MINIをサポートするチームはドイツのX-raid。泥だらけのマシンを限られた時間で整備する。
MINIをサポートするチームはドイツのX-raid。泥だらけのマシンを限られた時間で整備する。
鬱蒼と生い茂る木立のなかを走るMINI。
鬱蒼と生い茂る木立のなかを走るMINI。
SS2でトップを獲った地元ポーランドのクストフ・ホーオフチャツ/オーカス・クゼヤ組
SS2でトップを獲った地元ポーランドのクストフ・ホーオフチャツ/オーカス・クゼヤ組
水と泥を蹴飛ばして疾走するMINI。
水と泥を蹴飛ばして疾走するMINI。
曇天の水墨画のような風景の中を走る。
曇天の水墨画のような風景の中を走る。
フォード・ラプターで参戦するチェコのマルティン・プロコップ選手。
フォード・ラプターで参戦するチェコのマルティン・プロコップ選手。
軍の演習場を走る。手前に戦車が。
軍の演習場を走る。手前に戦車が。
後ろが見えなくなるほど泥水を掻き上げ走るフォード・ラプター。
後ろが見えなくなるほど泥水を掻き上げ走るフォード・ラプター。
細かくサスペンションのセッティングも詰めていく。
細かくサスペンションのセッティングも詰めていく。
泥を吹き飛ばして走るフォード・ラプター。この後、フォトグラファーのマリアンさんはカメラごと泥だらけに。
泥を吹き飛ばして走るフォード・ラプター。この後、フォトグラファーのマリアンさんはカメラごと泥だらけに。

例年は10月に開催されるラリー・モロッコがダカールラリーの前哨戦になるのですが、今回は中止となったため、残るは11月5日~7日に開催予定のバハ・ポルトガル500もしくは11月20日~26日開催予定のアブダビデザートチャレンジが実戦での最終チェックとなります。

ダカールラリーを主催するフランスのASOは、同じく主催するツール・ド・フランスの自転車競技を今月開催し、約200名の選手からひとりも新型コロナウイルスの感染者を出さずに3週間のイベントを成功させました。

9月14日現在、ダカールラリーが開催されるサウジアラビアの渡航制限完全解除は、例外を除き2021年1月1日からですが、国際公式スポーツ大会の参加者はこの例外に該当するため、選手、スタッフの入国はすでに認められています。

2021年1月開催予定の世界一過酷なラリーであるダカールラリーに向け、トップチームは数少ない実戦の機会を活かして選手もマシンも着々と準備しています。

写真:Marian Chytka・MCH Photo/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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