ノスタルジック2デイズへ行って古きを知り未来を考えた・・・寺田昌弘連載コラム

  • 海からぷかりさん橋へ。徒歩3分で会場のパシフィコ横浜へ行けて便利

静岡・熱海市から東京・江東区まで65フィートのモーターヨットでクルージングするときに、ちょうどパシフィコ横浜で「ノスタルジック2デイズ」が開催されていたのを知り、会場すぐそばにある、ぷかりさん橋のバースに係留して、上陸して観に行ってきました。
開場の10時を少し越えたころに会場に行くと、すでに大行列でびっくりしました。2日目だし、北京五輪で女子カーリング決勝もあるから空いているかなと思った20日でしたが、係員に聞くと「昨日は1時間以上でしたが、そのときより列が長いのでもっとかかると思われます」と。初日に行った知人のSNSでも1時間以上並んで入場したという情報が多かったので、新型コロナウイルス感染拡大防止対策から会場内人数を制限していたとはいえ、かなり人気が高いことが伺えます。そこで1時間以上待つのをやめ、中華街で早めのランチを食べてきて、昼過ぎに戻ってきたら、入場列もだいぶ減っていたので並んで約10分で入れました。

郷愁に駆られるクルマが約200台も展示

  • ミウラ

    ミウラは大人気。やはりエンジン回りに注目が集まる

入口入って真っ先に目を奪われたのは「ランボルギーニ・ミウラ」。私が生まれた頃に誕生し、小学生の頃に「対決!スーパーカークイズ」のテレビ番組を観て、ランボルギーニを知って、スーパーカー消しゴムで遊んだ世代には、しびれるクルマの1台です。スーパーカー消しゴムといえば、現在ランボルギーニ公認でミウラP400SVをはじめカウンタックLP400S、カウンタック25thアニバーサリー、ウラッコP250Sそしてレアなイオタまで販売されているのにもびっくりです。

  • ミウラ

    きれいにレストアされたミウラ。2021年AudiTeamHitotsuyamaのRQ、谷美奈さんが花を添える

静かに眠っていたクルマに命を吹き込む

  • 土に還りそうな状態から引き出しレストアすることも

四半世紀以上経つクルマの多くは、屋内保存していない限り錆びるのは当然。まして不動車であったら空き地に置かれ、草木に覆われてしまうものもあります。それでもその価値を見出し、欲しい人のためにレストアするのは、多くの時間と手間をかけ、なによりそのクルマの経年劣化の特性を知っていなければなりません。出展車ですばらしい仕上がりだなと思った出展社のホームページを観てみると、そのクルマへの思いやレストアへのこだわりがよく伝わってきます。ボディをきれいにするために、屋外保管だったり、年数が経っているクルマの多くはフロントフェンダーインナーやフロアが錆びていたり、塗装を剥離していくと、パテで盛られた部分や元々のボディカラーまでわかり、そのクルマの生い立ちがわかるそうです。そして板金して鉄の地肌まで剥離したら、錆びやすいのですぐサフェーサーで下地を整えます。
アンダーコートを塗布して、ボディを丁寧に塗装して、各部品も消耗品を新品に交換したり機能を回復させて組付けていく。新車の生産ラインより、じっくり時間をかけて組み立てるので、価格も納得です。
また各出展社は、それぞれ車種に思い入れ、こだわりがあることも惹かれました。珍しくスバルSVXがあったので、何気なく観ていたら、近くにいたかたが「SVXは高速でステアリングから手を放してもまっすぐ走るほど直進安定性がよく、年数が経ってもドアとボディがぴたっと閉まり、高速で走ってもスピードを感じさせない安心感が海外メーカーにまったくひけを取らないんです」と熱く語ってくれました。いただいたフライヤーを後でみたら、このSVXを手掛けるK・STAFFの辻代表でした。ご本人がSVXに魅了され、同じ思いを持つかたのために工場には常時30台以上の整備を待つSVXがあるそうです。ほかにも117クーペやベレットなどイスズ中心のショップや日本を代表するロールスロイス、ベントレーの専門店であるWAKUI MUSEUMなど創業者自らのこだわり、クルマへの熱い思いが展示車からひしひしと伝わってきます。

  • コスモスポーツ

    日清紡精機広島ではコスモスポーツのブレーキやクラッチシリンダーの復刻パーツを作った

  • ニュー・シルビア(S10)

    1975年(昭和50年)から1979年にかけ販売された2代目ニュー・シルビア(S10)。写真はLStypeX

  • ニュー・シルビア(S10) とベントレー

    ロールスロイス・ファントムⅡコンチネンタル(1930年)(左)と1928年のル・マン24時間を制覇したベントレー(右)

今年販売される新型フェアレディZを歓迎する

  • 歴代Z

    歴代Zが整然と並び、変遷、進化がわかる

会場を一回りすると、やはり多く感じたのが日産車。GT-Rもありますが、今年は新型フェアレディZの販売があり、イエローの歴代フェアレディZが初代S30から展示されていました。(Z31はイエローがボディカラーになかったためシルバーを展示)スポーツカーとして半世紀以上続くZは、北米市場で日産のプレゼンスを一気に上げた立役者で、初代に敬意を払いながら新型はとても高揚するクルマとして来場者からも歓迎されていました。

  • Zの流麗なスタイリングに惹かれる

クルマを持つ喜び、走る楽しさがここにある

アメリカのクラシックカー登録制度である通称「25年ルール」をはじめ、オーストラリアや中東など世界で日本のネオクラシックカーの人気は高まり、価格も上がっています。ただここの展示されているクルマを観ると、そのコンディションのよさから探す難しさ、レストアにかかる努力から、この価格なのだと納得します。またノスタルジック2デイズに出展することは多くの来場者や同業出展社の方々にそのコンディションを観てもらうわけですから、技術に相当の自信がなければ出展できないと思います。心底欲しいと思っているかたに引き継いで乗ってもらいたいという思いをとても強く感じました。クルマの利便性だけでなく、所有してガレージに停めてあるのを見るだけでうれしくなるクルマ、エンジンをかけたときに聞こえてくる排気音とともに匂う排気ガスや焼けたオイル、メカニカルノイズ、細かな振動が伝わってくるだけでわくわくするクルマ。ドライバーの体だけでなく心を動かすのは、音楽や舞台を体感したり、美術品を観るのと同じような感動があります。ここにあるクルマは、やはり芸術の域に達しているのだとあらためて感じました。

横浜から東京までモーターヨットで戻りながら思ったこと

郷愁駆られるクルマを観て堪能し、やはりクルマはワクワクすると思いながら、モーターヨットに乗って出航して東京へ。ふと観てきたクルマの燃費とかどうだったんだろうと思い、現在のガソリンや軽油の販売価格だったら、結構大変だなんて漠然と思いながら大黒ふ頭のヤードに整然と並ぶ新車を眺めていました。
ニュースではガソリン価格高騰で、トリガー条項の論議も始まりました。ガソリンの税を考えると、本税率の28.7円に暫定税率の25.1円、石油石炭税2.04円、地球温暖化対策税0.76円で56.6円にさらに消費税が加算されます。元々受益者負担の特定財源になっていましたが、一般財源化されたので、なぜ暫定税率をやめないのか疑問です。
そもそも今、乗っているモーターヨットに給油している軽油は免税です。一般公道を走らないからです。クルマなどに給油する燃料の税金が一般財源化されたのに不思議な話ですね。さらにカーボン・プライシングから炭素税なんて話も持ち上がっていますが、すでに石油諸税は年間5兆円にもなり、温室効果ガス排出量の比率(2020年度)は、自動車など運輸部門は17.7%、発電所などのエネルギー転換部門が40,4%、工場など産業部門24.1%。そして1990年比でみると、産業部門は34%も削減し、運輸部門も13%削減しているのに、発電所などエネルギー転換部門は21%も増やしています。クルマに乗っているひとりとして暫定税率は廃止するのが筋だと思いますが、急に1兆円規模で財源がなくなると困るというのであれば、FCEV、特に物流を担うトラックのFCEVの水素インフラやPHEV、BEVの電気のインフラとセットでその電気を作る再生可能エネルギーへの投資に向ければ、それこそ暫定的にいいかなと思います。そんなことを思いながら、マリーナのある東京・夢の島に戻ってきました。上陸したこの場所から見える風景が近い将来、今日観たネオクラシックなクルマもたまに見かけながらもFCEVやPHEV、BEVが当たり前に走っている夢の島国、日本になることを夢見て。

  • 大黒ふ頭のヤードには輸出仕様の日産パトロールや、輸入されたテスラがたくさん並んでいた

(文/写真:寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


[GAZOO編集部]