ダカールクラシックで走るパリダカの歴代のマシン -市販車編 -寺田昌弘連載コラム

1978年12月26日、フランス・パリのトロカデロ広場から出発したパリ・ダカールラリー(以降パリダカ)は、モータースポーツというより人と乗り物でアフリカ大陸を冒険するアドベンチャー。車両規定もゆるく、食事は自分たちで調達しなければなりません。そんな冒険行をほぼ市販車の状態で走破しました。プライベーターの頼れる相棒として選ばれたクルマの変遷を、今回のダカールクラシックに参加するクルマとともに紹介します。

冒険者たちが最初に選んだのは、レンジローバー、ランドクルーザーそしてメルセデスGクラス

  • MIQUEL ANGEL BOET/ALEIX CABARROQUES GUILLEM組のレンジローバー

    MIQUEL ANGEL BOET/ALEIX CABARROQUES GUILLEM組のレンジローバー (photo:Ricardo.Leizer/FOTOP)

第1回大会には101台がエントリーし、まだプジョーやシトロエンなど2WDが数台参戦していましたが、多くが4WDでランドクルーザーが25台、レンジローバーが13台(ランドローバー・ディフェンダーが3台)、フィアット・カンパニョーラが7台、ラダ・ニーバ5台と多くを占めていました。やはりランクルとローバーへの信頼性の高さは、このころすでに確立していて、アフリカ大陸を初めて走る者にとって最も信頼される相棒でした。1981年の第3回大会からメルセデスGクラスの参戦が増えてきました。この頃になると2WD車では走破が困難な砂丘ステージが増え、プライベーターはオリジナルのバギーか市販車の4WDを選ぶようになってきました。

日本車が活躍。日産パトロールそして三菱パジェロが新たなプライベーターの相棒に

  • JURAJ ULRICH/LUBOS SCHWARZBACHER組の三菱パジェロ

    JURAJ ULRICH/LUBOS SCHWARZBACHER組の三菱パジェロ(photo;A.S.O/V.Cabral/FOTOP)

創成期のパリダカには、ランドクルーザーだけでなく、ダイハツ・タフトやスズキ・ジムニー、スバル・レオーネなど日本の4WD車も参戦していました。特にプライベーターの信頼を得たのは、日産、三菱です。1983年の第5回大会では、新たにフランス日産の協力を得ながら日産パトロール(日本名:サファリ)が14台参戦。そして三菱パジェロが1982年5月に日本で発売し、ほぼノーマル状態のまま参戦して市販車無改造部門ワンツーフィニッシュ、総合でも11位、14位と鮮烈デビュー。1985年の第7回大会では、三菱ワークスが2台のプロトタイプで参戦するだけでなく、それ以外に37台のパジェロが参戦し、ワークスパジェロが総合優勝をワンツーフィニッシュで飾り、市販車無改造部門でもパジェロが優勝。パジェロはパリダカとともに世界に知れ渡り、パリダカも三菱によってより広く知られるようになりました。モータースポーツをしっかりマーケティングに活用した、代表的な例です。

ダカールクラシックで参戦台数が一番多かったのは、やはりランドクルーザー

  • 優勝したSERGE MOGNO/FLORENT DRULHON組のトヨタ・ランドクルーザー80

    優勝したSERGE MOGNO/FLORENT DRULHON組のトヨタ・ランドクルーザー80 photo:A.S.O/R.Leizer/FOTOP

今大会の4輪エントリー台数は130台でしたが、おもなメーカー別に見てみると三菱18台、
メルセデス12台、ランドローバー12台、日産12台、ラダ4台、プジョー3台、ポルシェ3台、スズキ3台ですが、トヨタは実に41台と圧倒的に多く、ランドクルーザーの型式も40系、60系、70系、80系、90系、100系と多岐に渡ります。
40系はパリダカ当初より参戦し、フランスホンダのサポートカーとして40系が採用され「HONDA」ロゴが大きく描かれていたのが印象的でした。60系は日本人で初めてパリダカに参戦した横田紀一郎さん率いるTeamACPが、スターレット(KP61)とともに初めて走らせました。ここからランドクルーザーのワゴンを相棒にするチームが増えました。今回のダカールクラシックで参戦台数が22台と一番多かったのが80系。現200系で市販車部門に参戦するチームランドクルーザー・トヨタオートボデーの前身で、ランドクルーザーを組み立てていたアラコが、社員をコ・ドライバーに参戦し始めたのが80系からです。新型ランドクルーザー(300系)の開発にあたり、オフロードの走破性でベンチマークとしたのがこの80系と開発責任者が言うように、80系の悪路走破性は歴代のランドクルーザーのなかでもかなり高い。今大会で優勝したのがやはり80系です。
70系は多くのプライベーターのパリダカへの夢を現実にしてくれたモデルで、私のそのひとりです。信頼性、耐久性は随一でとにかく壊れにくい。パリダカの主催者が乗るオフィシャルカーにも選ばれ、現在のダカールラリーでも撮影車やドクターカーに使用されています。またアフリカ大陸が舞台だったときには、現地にも70系が多く走っていて、部品も手に入りやすいところも魅力のひとつでした。
90系はフロントサスペンションが独立懸架になったことで高速化するパリダカにマッチし、トヨタフランスがチューニングしたマシンで参戦した時期もありました。その後120系、150系とプラドは進化しましたが、2012年、2013年は150系が市販車部門で優勝しています。100系はダカールクラシックでは新車?に近いピリオドC:1997年~1999年に参戦できます。1998年に発売され、1999年にパリダカに初参戦で市販車部門ワンツーフィニッシュと輝かしいデビューを果たしました。
参戦台数からもわかるように、70系、80系が悪路走破性、耐久性で特に信頼され、また当時のロールバーを組んだ競技車や中古車も欧州でまだあるようなので、今後もダカールクラシックで最も完走しやすいクルマとしてさらに人気が出ると思います。私も1997年に参戦したときの70系に乗っていますので、またロールバーを組んでパリダカ気分を味わってみたいです。

(文:寺田昌弘 メインphoto:Viniclus.Cabral/FOTOP)

過去6回ドライバーとしてダカールラリーに参戦した寺田昌弘さんが、国内外のイベント・レースを臨場感たっぷりにレポートします。


[GAZOO編集部]