臨海副都心エリアで「人と街をつなぐ」未来のモビリティ体験…寺田昌弘連載コラム

1985年に自動二輪免許(中型限定)を取得した後、すぐ府中運転免許試験場に通って限定解除し、大型バイクを楽しんでいました。そんな中、ちょい乗りで旅気分を味わえるのが東京の臨海副都心エリアでした。

通称「お台場」は、江戸時代、防衛のために海上砲台が作られたところから始まりますが、高校時代の同級生にお台場をつくった江川英龍の末裔がいたこともあり、とても親近感を持っていました。当時、付近には船の科学館と有明テニスの森しかなく、特に10号地、13号地、15号地と呼ばれる埋立地は、モトクロスで走れるほどの大きな空き地でした。

  • 1990年頃の首都高湾岸線。潮風公園を背に東向きに見る。現在は左手にフジテレビ本社、右手にダイバーシティ東京プラザがある。

  • 左は第三台場。右はレインボーブリッジの基礎工事。東京タワーが大きく見える。

1993年にレインボーブリッジが開通し、1995年に新橋~有明間のゆりかもめが運行開始され、都心部と臨海副都心エリアがつながり、ホテル日航東京(現:ヒルトン東京お台場)、フジテレビ本社、パレットタウン、アクアシティお台場、日本科学未来館、東京ビッグサイトなど台場・青海・有明と、街が広範囲に広がっていきました。

アミューズメント、コンベンション、そしてビジネスと、多様性のあるこのエリアを次世代モビリティでつなぐ体験会が実施されるということで行ってきました。

次世代モビリティは、移動する手段だけでなく“目的”にもなる

東京都とDigital Innovation City協議会(以下、DIC協議会)主催、4つのモビリティの体験イベント「未来を乗りにおいでよ。次世代モビリティのまち体験」が、今年の1/18~2/6の期間限定で開催されました。私も予約し、一般参加で2つのモビリティを体験しました。
(実施社:WILLER株式会社、BOLDLY株式会社、日本科学未来館、Le DESIGN株式会社、先進モビリティ株式会社)

まずフランスの自動運転バスメーカー、NAVYAの小型シャトルバス「ARMA」に乗って、自由の女神像近くのアクアシティお台場、ヒルトン東京お台場から、実物大ユニコーンガンダムが立つダイバーシティ東京プラザ前を通り、メガウェブのあった東京テレポート駅まで行き、シンボルプロムナード公園内を往復します。

乗車時は、バス事業で知られるWILLERが運営する「mobi」アプリでチケットを表示し、QRコード読取リーダーにタッチします。「mobi」は現在、東京(豊島区)、愛知(千種区)、大阪(北区、福島区)、京都(京丹後市)などで運営している定額乗り放題の相乗り交通で、各地で実証試験が行われているサービスです。

「ARMA」には、私を含めた一般乗車が6名、プラスでセーフティオペレーターと保安員が同乗します。まず、実際の運行ルートに沿ったスキャニングデータから3Dマップを生成します。その情報をベースに高精度GNSSで、数cm単位の正確な位置を推定し、2種類のLiDAR(ライダー:レーザー光を使ったセンサー)で障害物の検知をしながら運行します。最高速度は19km/hですが、園内なので6km/h以内で走りました。EVなのでとても静かで滑らかです。

  • 小型シャトルバス「ARMA」。全長4770mm/全幅2100mm/全高2610mm。定員14名だが今回は8名定員で運行(当日配布のパンフレットより)

のんびり移動しながら、車窓からの景色を楽しみますが、近くにいる歩行者も、「ARMA」の個性的なスタイリングに興味津々。スマホで撮影している方が多く、注目度はとても高いです。歩行者から注目されることはお互いが意識しているので、安全性もより高くなります。移動は目的でなく手段ですが、このモビリティは、乗ることも楽しいエンターテイメント要素が高く、目的地まで向かう手段としてだけでなく、目的にもなります。

  • 運行状況は遠隔地でこのように確認できる。

おばあちゃんと手をつないで移動したい、孫娘の夢をかなえるモビリティ

  • ベンチのような小型自動運転モビリティのPARTNER MOBILITY ONE。後ろに続くのはPanasonicの追従型ロボティクスモビリティ「PiiMo」

そして、もう1台試乗しました。「PARTNER MOBILITY ONE」という、ベンチのような小型自動運転モビリティです。久留米工業大学インテリジェントモビリティ研究所とパーソルクロステクノロジー、Le DESIGN(久留米工業大学発ベンチャー)の3社の共同開発です。

今回はPanasonicの追従型ロボティクスモビリティ「PiiMo」が、カルガモの親子のように「PARTNER MOBILITY ONE」を追従しながら移動します。

現在、電動キックボードやミニカー(マイクロカー)などは一人乗りですが、こうした超小型モビリティのなかには、やはり2~3人乗りのモビリティが必要で、私も大賛成です。開発者の東大輔教授は、元々自動車メーカーでスポーツカーや競技車両の空力デザインなどをされてきたエンジニアで、これだけ低速走行するモビリティを開発しているところがユニークです。

  • 開発者の東大輔教授(左)と私。

東教授は「ある幼いお嬢さんが、“おばあちゃんと一緒に手をつないで移動したい”と言っていました。長い距離を歩くのが辛い方や足の不自由な方などと、家族や友達が寄り添って移動できます。お台場でしたら、もちろんカップルにもぴったりです」と話されていました。

クルマに乗って、高速道路をドライブしながら行楽地へ向かうのも“旅”を感じますが、今回、歩くスピードと同じくらいの速度の次世代モビリティに乗って、数百メートルをゆっくりと景色や会話を楽しみながら移動し、これも“旅“だと実感しました。それはきっと、カラダだけでなくココロも動かしてくれたからです。

  • 追従型ロボティクスモビリティ「PiiMo」が連なって走る。

大きなテーマパーク内では、来場客が歩いている場所をクラシカルなクルマで乗客を乗せて走っていますよね。ここ臨海副都心エリアの公園内でも、こうした自動運転の電動モビリティが走ることで、人の回遊性がもっと良くなり、街がつながり、健常者も障がいを持つ方も分け隔てなく楽しめる、そんなスマートな街になっていくのが今から楽しみです。

人と街をモビリティがつなぐ。ゆっくりとした移動には、江戸時代まで「駕籠(かご)」があり、なかでも時代劇で観るような将軍やお姫様が乗り込む、扉があって装飾がきれいで高級なものは、「乗物(のりもの)」と呼ばれていました。それからデジタルの力で400年の時をつなぎ、新たな「乗物」として江戸に現れ、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」的感覚で、モビリティの未来を楽しめたひとときでした。

(写真/ Digital Innovation City協議会・寺田昌弘、文/寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。